表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/98

第42話


***



 領地へ戻る途中、ダニエルはふと思い立って馬車の行く先を変えさせた。

 向かうのは、クレメラ子爵の住む家。

 パメラには近づくなと言われたが、王都で出会ったパメラの様子がどうにもおかしいように思えて、ダニエルの胸は不安でざわめいていた。


 パメラは若い令嬢らしく着飾り華やかなパーティーを楽しんでいた。それだけなら、おかしいとはいえない。パメラはこの家にいる時より幸せそうだった。


 なのに、ダニエルには不吉な予感がしてたまらないのだ。

 何かがパメラを変えてしまったような、パメラの中に別人がいるような、そんな気がするのだ。


 馬鹿げた想像だと自分を笑いながらも、それでもダニエルはクレメラ子爵家を訪ねずにはいられなかった。


 扉を叩くが、中から反応は帰ってこない。人の気配もない。誰もいないようだ。

 いないのなら仕方がないと諦めかけたが、何故かダニエルはその場から立ち去り難かった。

 パメラは売られそうになって逃げ出したと言っていた。しかし、パメラが王都で華やかに暮らしていてい、あの義母と義姉が黙っているはずがない。


 ダニエルは思い切って扉に手をかけた。

 すると、扉は軋んだ音を立てて開いた。

 室内は暗い。だが、テーブルが倒れ、テーブルクロスがぐしゃぐしゃになって床に落ちているのが見える。

 ダニエルは息を飲んで室内に足を踏み入れた。

 何があったのだろう。ただならぬ雰囲気に背筋を震わせたその時、足下で何か音がした。

 床の軋んだ音とは違う。何か重いものを引きずったような音が、足の下から聞こえてきた。


(……地下?)


 ダニエルが恐る恐る地下に向かうと、扉には閂がかけられていた。

 少しの間逡巡したが、ダニエルは閂に手をかけた。

 扉を開くと、むわっと嫌な臭いが漏れ出てくる。思わず顔をしかめたダニエルは、真っ暗な地下室で何かが蠢いているのに気づいた。


「……っ、子爵!?」


 床に倒れて力なく動いている男を見て、ダニエルは驚愕した。


「子爵っ」


 駆け寄って様子を見ると、子爵は苦しそうに呻いていた。


「一体何が……」


 閂がかかっていたことを思うと、彼はここに閉じ込められていたに違いない。


(誰の仕業だ? あの義母と義姉か?)


 だとしたら、パメラの身も危ないのではないか。ダニエルは青ざめた。

 とにかく子爵から何があったかを聞かねばならないと、ダニエルは人を呼ぶために地下室から駆け出した。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ