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9.校門で待ち伏せ

 教室から出て行くエミリア。

 その嬉しそうな後姿を、システィーとレオンは手を振って見送る。


「何か久しぶりに見たな。あんな楽しそうなエミリアは」

「そうね。相手には驚かされたけどっ!」

「うっ……」


 システィーの不意打ちパンチがレオンの脇腹にヒットした。


「何すんだ!」

「元はと言えばあんたが地味とか言うからでしょ」

「お前も思ってたじゃねーかよ」

「それはそれよ」

「酷ぇ……まぁでも、とりあえず元気になったみたいで良かったな」

「ええ」


 いなくなったエミリアの机を優しく見つめるシスティー。

 友人として一番心配していたのは彼女だろう。

 戸惑いもあるが、ホッとしている部分が大きい。


「つーかじゃあ、あの噂はがせだったのか」

「噂って?」

「ん? お前知らないのか?」


 システィーはこくりと頷く。

 

「エミリアとブロアが再婚約したんじゃねーかって噂だよ。とっくに届いてると思ったんだけどな」

「何それ初耳よ!」

「みたいだな。つっても違ったみたいだし」

「それが本当なら本人が話すでしょ」

「だよな」


 二人はう~んと考えだす。


「その噂ってどこから出たの?」

「出所はオレも知らねぇよ。ただな~、たっしかに最近ブロアの奴、一人でいることが多いんだよ」

「そういえば……新しい相手の女の子も見かけないわね」

「だろ? そもそもあの子この学校の生徒なのか? オレ見たことないんだけど」

「新入生じゃないかしら?」

「そうなのかな~ おっかしいな、新入生も女子はバッチリチェックしたはずなんだが……あっ」

「ちょっと、その話詳しく聞かせなさい」


 新しい火種が爆発する音が、エミリアのいない教室に響き渡る。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 教室を出た私は、るんるん気分で外へ向かって歩く。


 明日のおかずは何にしようかな~


 と、頭の中はお弁当のことでいっぱいだ。

 また美味しいと言ってもらえるように、今日よりもっと張り切って頑張ろうと思っている。

 そのために今から買い物へ向かう。


「やっぱり男の子ならお肉よね。あとは健康のためにお野菜も一通り揃えなきゃ」


 考えていることが口に出るのも久しぶりだ。

 貴族の令嬢らしく振舞うため、様々な教育を受けて、変にみられないよう気を遣ってきた。

 それは私にとって窮屈でしかなくて、今はそれが薄まっていて気が楽だ。

 これも全部――


「ユート」


 彼のお陰だ。


「ユート!」

「ん? ああ、君か」


 校舎を出た所で偶然、彼の後姿を発見した私は、急いで近くまで駆け寄った。

 彼のことを考えていたところに本人が現れるなんて最高だわ。


「ユートも今から帰りですか?」

「ああ、見ての通りな」


 ユートはカバンを私に見せる。

 ここで私は気付く。

 同じく下校するタイミングでバッタリ遭遇。

 これはまたしてもチャンスなのでは?


「ユート! もしよければ、一緒に帰りませんか?」


 ユートと一緒に下校したい!


「いや……君の家は貴族街にあるだろ? 俺とは真逆じゃないのか?」

「そうですけど、今日はお買い物をしようと思っていたので、ちょうど商店街のほうへ行く予定だったんです」

  

 平民と貴族では、居住区が反対の場所にある。

 貴族街と呼ばれるエリアに私の家の屋敷はあって、王都の中心部に近い。

 反対に平民たちが暮らす通称平民街は、王都の外側にあって、そこへ行くには商店街を抜ける必要がある。

 つまり、今日だけは方向が同じのはず!


「ダメでしょうか?」

「……まぁ方向が一緒なら好きにすれば良いよ」

「ありがとうございます!」


 お願いすれば嫌とは言えない彼の優しさを利用して、ちょっと卑怯だったかもしれない。

 だけどこんなチャンスを逃せるわけがないもの。

 お昼休み以外でユートと過ごせる貴重な時間、大切にしなきゃ。


「では行きましょうか」

「そうだな」


 しばらく歩きながら学園の門を目指す。

 この学園は広くて、校舎を出て敷地の外へ行くまでにも時間がかかる。

 歩くのはちょっぴり嫌だけど、今はユートが一緒だから楽しい。


「買い物って言ってたけど、一人で行くつもりだったのか?」

「そうですよ?」

「貴族の令嬢が一人で?」

「貴族と言っても私の家はそこまで大きくありませんから。元婚約者の、ロストロール家との関係があってこそですわ」


 それを失った今の私に、令嬢としての価値は薄い。

 枯れてしまった花なんて、わざわざ盗みに来る馬鹿はいないでしょう。


「へぇー、ん?」

「ユート?」


 話しながら歩いている途中、彼はピタリと足を止めた。


「その元婚約者って」

「はい?」

 

 ユートは右腕をあげ、先をさしながら言う。


「あの門で待ってる奴じゃないのか?」

「えっ?」


 彼が指さす方向に目を向けると、そこにはイライラしながら誰かを待つ、元婚約者のブロア様が立っていた。

 ブロア様が私に気付く。


「おぉエミリア! ようやく来たか!」


 私を見つけた途端、急にニコッと笑って呼びかけてきた。

 そうして私に近づき、満面の笑みを浮かべて言う。


「君を待っていたんだよ。話したいことがあってね」


さぁそろそろざまぁの時間が近いですよ。

ブクマ、評価はモチベーション維持につながります。

少しでも面白い、面白くなりそうと思ったら、現時点でも良いので評価を頂けると嬉しいです。


☆☆☆☆☆⇒★★★★★


よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] …さて。 どんなセリフが飛び出すやら… 次回も楽しみです。
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