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恋した相手は【死神】と呼ばれる魔術師でした ~僕らの恋は偽物だったと言った癖に今さらやり直そうとかもう遅いです~  作者: 日之影ソラ
第二章

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5.ユートの師匠

「ありがとう、ユート」

「ん、急にどうしたの?」

「ほら、昨日の……お父様とお母様のこと」


 二人と話した日の翌日。

 昼休みの時間に、私たちはいつもの場所でお昼を過ごしていた。

 

「ああ。別にお礼を言われるようなことはしてないよ」

「そんなことないです。ユートのお陰で、あの後少し……話せました」


 ほんの少し、交わしたのは二言だけ。

 婚約おめでとうと改めて言われて、私がありがとうと答えた。

 たったそれだけのことで、気持ちが軽くなった気がする。

 ちゃんと言葉を交わしたのは久しぶりだった。

 ユートがきっかけを作ってくれなかったら、一生あのままだったと思う。


「それは良かった。でも大変なのはこれからだ。エミリアも、あの二人も……俺に出来ることはここまでだよ」

「十分です。ユートは優しいですね」

「そうでもないよ。君の両親が根っからの悪人だったら、あの場で手を出していたかもしれないから」

「えっ……」


 そうだったの?


「でも、二人の様子を見てわかった。俺は立場上、いろんな貴族の嫌な部分を見てきた。エミリアがされたことも酷いけど、もっとひどいことを平然とする奴らを……反吐が出る程見せられた」

「ユート……」

「自分の地位が一番大事で、それ以下の者は家畜同然。そんな風に思う奴らを、俺は人間だと思わない。エミリアの両親には、ちゃんと罪悪感があった。家を守りたいという気持ちと、そのためなら何でもやろうという意思も。ただ、その選択が正しいかどうかをずっと悩み続けいる。悩み、苦しんで選ぶことは、人間にしか出来ないことだよ」


 ユートは、死神と呼ばれている。

 国家魔術師として、国に仇名す者や悪事を働く者たちの命を刈り取ってきた。

 彼以上に、人の汚い部分や表には出さない裏の顔を知っている人は、他にいないかもしれない。

 そんな彼が言うと、言葉の重みが違う。

 

「まぁでも、言葉で言うのは簡単だから。それは昨日も言ったよね? だからちゃんと行動で証明してもらおう。その先のことは、エミリアに任せるよ」

「はい」


 許す、許さないという話も含めて、私が見定めるんだ。

 そしたらいつか普通の親子に戻れる日も、来るかもしれない。


「そうでした!」

「え、何?」

「ユートにだけ私の両親に挨拶をさせるのは良くありませんよね? だから今度は私の番です! 今ユートのご両親は王都には住んでいらっしゃらないんですか?」

「あー……」


 ユートは自分の髪の毛をわしゃわしゃと触る。

 言いずらそうにして、一呼吸おいてから答える。


「そういえば言ってなかったけ? 俺に両親はいないんだ」

「え……」


 両親が……いない?


「物心つく頃にいなくて、俺は捨てられてたらしい。だから、両親の顔も名前も知らない。生きているのか、死んでいるかもわからないな」

「ご、ごめんなさい」


 聞いてはいけないことだった。

 自分の無神経さに腹が立って、今すぐ自分の頬をパチンと叩きたい気持ちになる。


「別に気にしてないから。それに両親は知らないけど、俺のことを拾ってくれた人はいたんだよ。いわゆる育ての親なんだけど、今は師匠かな」

「師匠?」

「うん。俺を育てて、魔術を教えてくれた人だよ。名前はフレア・ローゼン」

「フレア・ローゼン……どこかで聞いたような……」


 すぐには思い出せなくて、私はうーんと悩む。


「耳にしたことはあると思うよ。師匠も国家魔術師の一人だから」

「あっ!」


 ユートがそう言って、思い出した。

 フレア・ローゼン。

 【紅蓮】と呼ばれている国家魔術師。

 燃えるような赤い髪が特徴的な女性だという。

 私も一度だけ、小さい頃に見たことがある。

 赤い髪を靡かせ、堂々とした立ち振る舞い。

 人を引き付ける特別な雰囲気を持つ人だと、子供ながらに思った。

 

「あのフレア様が……ユートの師匠で、育ての親だったんですね」

「うん。今はどこにいるか知らないけどね。師匠はすぐ放浪するから、国としても手を焼いているだろうな~」


 語りながらユートは空を見上げる。


「もう一年以上会ってないな」

「そうなんですか?」

「うん」


 師匠のことを考えて、懐かしんでいるのかもしれない。

 すると――


「ん?」


 空から赤い羽が舞い落ちる。


「羽ですか?」

「これは……」


 ユートが再び空を見上げる。

 そこへ羽の持ち主が、ばさりと翼を広げてやってくる。


「赤い鳥?」

「フェニックス……師匠の使い魔だ」


 燃えがかる翼をもつ鳥。

 不死の鳥、フェニックス。

 伝説上にしか存在しないと思っていた生き物が、私の目の前に降り立つ。


「どうしてここに……」

「ユート、足首に何か巻いてあります」 

「本当だ」


 フェニックスの足首には茶色い紙が折りたたまれて、結ばれていた。

 それを開いて、中を見る。

 紙に書かれていたのは、たったの一文だけ……


 迷ったから迎えに来い。


「「え?」」

新作投稿しました!

タイトルは――


『パーティーを追放された付与術師、宮廷に雇われる ~お前の付与なんて必要ない? 言った傍から苦戦しているようですが、今さら戻るつもりはありません。付与してほしいなら国へ正式に手続きをしてくださいね?~』


ページ下部にリンク(12/8正午以降)がありますので、ぜひぜひ読んでみてください!


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― 新着の感想 ―
[一言] こちらもアフロも途中で更新がなくなり、続きが読みたくてずーっと待ってます。 完結までお願い致します。
[一言] え…? 迷ったから、迎えにこい…? え?ww
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