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恋した相手は【死神】と呼ばれる魔術師でした ~僕らの恋は偽物だったと言った癖に今さらやり直そうとかもう遅いです~  作者: 日之影ソラ
第一章

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25.本物の恋

 休日の学校は人通りも少ない。

 生徒が自由に使えるよう解放されていて、研究とか訓練で訪れる人がほとんどだ。

 そんな中、私は校舎には近寄らず、木々の中へと入っていく。

 待ち合わせ場所はいつもの木陰。


「さすがに早すぎたわね」


 待ちに待った休日。

 私は今日という日のために生まれてきたと言っても過言ではない。

 とか本気で思えるくらい、今日の私は高揚していた。

 ユートがいなかった三日間は退屈で、身体の半分がなくなったようにスカスカの日々を過ごしていた。

 満たされなかった昨日までの想いを、今日だけで全て発散してしまいたい。

 そんなことを考えながら待っていると――


「もう来てたのか」

「ユート!」


 振り返ると、私服姿のユートがいた。

 いつも見ている制服とは違って、ラフな格好をしている。

 相変わらず黒色が半分以上だけど、とにかく格好良い。


「まだ待ち合わせまで三十分あるぞ?」

「待ちきれなくて来ちゃいました! それにユートだって早いじゃないですか」

「それはまぁ……俺が誘ったわけだし、エミリアを待たせるのも良くないかなと思ったんだよ」


 私のことを気遣って……


「ありがとうございます!」

「お礼は早いだろ」


 呆れた表情を見せるユート。

 そのまま私たちは学校の敷地内を出て、商店街のほうへ歩いていく。


「お仕事はどうでしたか?」

「問題なく終わったよ。これでもう本当に、余計な危険が及ぶこともないだろう」

「それは良かったです!」

「……」


 私がそう答えると、ユートはじーっと私を見つめてきた。

 

「ユート?」

「何でもない。それで、今日はどこへ行くんだ?」

「まずはお昼を一緒に食べましょう! おしゃれで素敵なお店を見つけたんですよ」

「それは楽しみだ」


 今日のために商店街は七周くらいしている。

 念入りにお店を調べて、ユートが喜びそうな場所を探した。

 仕事終わりで疲れていると思うし、今日はユートに楽しんで貰えるように頑張ろうと思う。

 大丈夫、そのために考え抜いたプランよ。


「楽しみましょうね? ユート」

「ああ、エミリアも」

「はい!」


 昼食に選んだお店は、お野菜を使った料理が自慢のレストラン。

 栄養がしっかり考えられていて、味付けも抜群に良い。

 でも野菜だけじゃなくて、お肉やお魚も当然あって、野菜と合わさってとても美味しいと評判だった。

 建物もおしゃれで、白を基調とした壁に、店内も他のお店とは違った世界に入ったかのような気分を味わえる。


「こ、こういう店に入るのは初めてだから緊張するな」

「大丈夫ですよ。堂々としていればいいんです」

「そうか。エミリアは何度か来ているのか?」

「はい」


 下見で二回ほどですけど。


「じゃあ任せるよ。エミリアのおすすめを選んでくれ」

「はい!」


 それから二人で料理を堪能して、お腹いっぱいになったら、次の目的地へ向かう。

 

「雑貨屋?」

「はい! ユートと一緒にショッピングしたいと思って、どのお店にしようか迷ったんです。ここなら色々あるし、ユートも何か欲しいものが見つかるといいなーって」

「ほしい物か」


 私たちは広いお店の中をぐるっと一周した。

 ユートも私も、特にほしい物があったわけじゃないから、結局何も買わなかったけど。

 普段は見かけない物とかも色々あって、見て周るだけでも楽しかった。

 そうして時間は過ぎていく。

 他にも何軒かお店を周り、気が付けば西の空に夕日が沈む。


「そろそろ夕食の時間ですね」

「ああ。でもその前に、一か所だけ行きたいところがあるんだ」

「え、そうなんですか? じゃあそこへ行ってからにしましょう!」


 ユートの行きたいところってどこだろう。

 あまり自己主張しない彼がそんなことを言い出すなんて珍しい。

 私は期待しながら、ユートの隣を歩く。


 あれ?

 こっちは確か学園の……


 なぜか来た道を戻り出すユート。

 そのまま校舎に入り、森のほうへと歩いていく。


「ユート?」

「もうすぐだよ」


 そう言ってたどり着いたのは、私たちがお昼を過ごす木の下。

 ユートが木に触れると、木の葉っぱが光り輝き辺りを照らす。


「綺麗……」

「ごめんな戻ってきて。でもここが一番、相応しいと思ったんだ」

「えっと……何かあるんですか?」

「うん。エミリア、最初に会った時のことを覚えてる?」

「もちろんです」


 私がユートに一目ぼれして、勢い余って告白したこと。

 忘れたくても忘れられることじゃないわ。


「俺もよく覚えてる。あの時は……変な奴がきたと思ったよ」

「うっ……」

「だけど、不思議なものだな。今は俺が、同じセリフを言おうとしているなんて」

「えっ?」


 それってどういう……


 ユートは懐から四角い箱を取り出し、中身をパカっと開ける。

 そこに入っていたのは、綺麗な宝石が輝く指輪だった。


「エミリア、俺と婚約してくれないか?」

「――ぇ」


 不意打ちすぎて、小さな声が漏れるだけ。

 私はそれ以上声も出ず、ただただ驚いてユートを見つめる。

 そんな私にユートは言う。


「俺は君が好きになっていた。君と出会って、一緒に過ごして、君の声を聞いているうちに、君のことばかり考えるようになっていたんだ」

「ユート……」

「死神なんて呼ばれている俺だけど、それでも良ければ俺と一緒にいてほしい」


 ユートは真剣な表情で私を見つめてくる。

 私はまだ、信じられなくて声を震わす。


「本当……に?」

「ああ、この気持ちに嘘はない。君がまだ、俺のことを好きでいてくれるなら、俺も君とこの先の未来を歩いていきたい」


 胸に走る電流が熱く、猛々しく燃える炎のように焦がす。


「はい……はい! もちろんです!」


 私はこの人が好きなのだと、心の底から叫んでいる。

 改めて確信した。

 これから先何があろうとも、この人のことを好きでい続ける。

 きっと間違いなんてない。

 この恋は紛れもなく……本物だから。


さて、これにて本作は完結となります!

十五話から十話加えましたがどうだったでしょう?

余計なものになっていなければ幸いです。

また第二部とかにして続けたい気持ちもあるのですが、一先ず完結させることにしました。

その後に関しては、アルファポリスでの掲載しているので、そちらの反応をみつつ考えます。

もしかすると、アルファポリスで続けるか、あちらを先に更新するかもしれませんが、その時は察してください。

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― 新着の感想 ―
[良い点] なんて可愛い2人なんだー!! 続きも見たい〜
[一言] 新作も読みます。
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