表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋した相手は【死神】と呼ばれる魔術師でした ~僕らの恋は偽物だったと言った癖に今さらやり直そうとかもう遅いです~  作者: 日之影ソラ
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/33

23.この気持ちに嘘はない

 暗殺者に襲われた日の夜。

 ユートのお陰で助かった私は、安心してベッドで眠る。


「……眠れない」


 というわけにもいかず、目はパッチリと冴えて眠れなかった。

 任せてほしいとユートは言った。

 私は彼のことを心から信じている。

 それでも気になって仕方がない。

 私の知らない所で何が起こっているのか。

 ユートが一人で傷ついたり、無理をしていないか心配になる。

 国家魔術師の彼に心配なんて何様とか言われそうだけど、私にとってユートは一番大切な人だから。

 

 結局、この日はほとんど眠れないまま一夜を過ごした。

 翌日の朝、少し早めに学園へ足を運ぶ。

 朝からユートに会えるかもしれないという期待は、すんなりとスルーされてしまった。

 それ以上に驚いたのは……


「聞いたか? ブロア様が罪人として捕まったって」

「あれって本当の話だったの?」

「ああ。何でも国外から暗殺者を引き入れてたんだと。他にも色々やばいこと裏でやってたんだって」

「そうなんだ……え? ならあの話も本当なの? 少し前に一緒にいた女に騙されてたって」

「だと思う」


 校門の近くから校舎の中まで、ブロア様の話題でもちきりだった。

 

 凄いなぁ……

 ユート、本当に一人で解決しちゃったんだね。


「噂じゃ例の死神が捕まえたって話だぜ?」

「そうなの? 死神ってブロア様と闘技場で戦ってた三組の人でしょ」

「そうそう。ブロア様も命知らずだよな~ 死神に戦いを挑むなんて」

「本当よね。殺されてもおかしくないのに」


 ついでにユートの噂もさらに広まっている。

 罪人相手には決して容赦はしない。

 慈悲はなく、改心する暇など与えずこの世から消し去る。

 それが死神だと知られているから、みんなも不思議がっているようだ。

 本当にユートが動いたのなら、ブロア様が生きているはずがないと。


「エミリア!」


 教室に入ると、真っ先にシスティーが私に元へ駆け寄ってきた。

 まだ始業まで、レオン君も一緒にいる。


「おはよう、システィー」

「おはようじゃないわ! 大丈夫だったの?」

「え?」

「昨日のことよ! あの馬鹿が暗殺者を送った先ってエミリアのところでしょ?」


 あの馬鹿ってもしかしてブロア様のことかな?

 確かにその通りだけど、システィーがハッキリ言うなんて珍しい。

 よほど慌てているのがわかる。


「うん」

「やっぱり……」

「でも大丈夫だったわ。ユートが一緒にいてくれたから」

「バスティアーノ君が?」


 私はこくりと頷き続けて言う。


「ユートは暗殺者がいるって気付いてたの。だから一緒にいようって言ってくれて、お陰で助かったわ」

「そう……じゃあブロア様のあれも彼が?」

「たぶんそうだと思うわ。私は直接見ていないから知らないけど」


 と言いつつ、ユート以外に考えられないから間違いないと思っている。

 

「とにかく無事でよかったわ」

「うん。心配かけてごめんなさい」

「いいのよ無事なら。バスティアーノ君にも感謝しなきゃね」

「うん。ねぇレオン君」

「ん? 何だ?」

「ユートってもう教室にいるのかな?」


 レオン君はユートと同じ三組だ。


「いないぞ。あいつ来るのはいっつも最後だからな」

「そうなんだ」


 意外だわ。

 ユートのことだから、てっきり誰よりも早く登校して、一人教室で本でも読んでそうなのに。

 それならお昼休みしかなさそうね。


「ちゃんと来てくれるかな」


 何となく不安だった。

 昨日のこともあって、ユートが今まで通りに学校へ来てくれるのか。

 私はユートと交わした言葉の思い出しながら、午前の授業を終える。

 そしてお昼休みになると、一目散にあの場所へ駆けた。

 一分でも、一秒でも早く彼の顔を見たいから。


「ユート!」


 木陰の下、彼はいつも通りそこにいた。


「エミリア」

「はい!」


 良かった。

 ちゃんと今日もいてくれた。

 私はそれだけのことで嬉しくて笑顔になる。


 その後はお昼を食べながら、昨日のことを教えてもらった。


「あの後はブロア様の屋敷に? あそこ凄く警備が厳重なのに」

「俺には関係ないからな」


 格好良いわ。


「その前に色々寄って、あいつを脅せる情報を集めたよ。そしたら出るわ出るわ……表では良い顔して、裏ではかなりやばい所まで手を出してたよ」

「そ、そうだったんですね……」


 そんな人としばらく一緒にいたと思うと、素直にぞっとする。


「ともかくこれで一件落着だ。もう狙われる心配もないだろう」

「はい。ありがとうございます、ユート」

「礼を言われることじゃない」


 ユートは相変わらず謙虚だ。

 こういう部分もブロア様とは大違い。


「……ブロア様はこれからどうなるんです?」

「ああ。罪の数も多いし、それなりに重いからな。貴族の生まれだし死刑にはならないだろうけど、一生牢から出ることもないだろう。あいつにはそっちの方がキツイかもしれないな」

「そうですね……でも、死刑にならないだけマシだとは思います」


 私がそう言うと、ユートは一瞬だけ目を伏せる。

 そして私にこう尋ねてくる。


「エミリア。もし俺が……あいつを殺していたら……君はどう思ったんだ?」

「えっ?」


 ユートは真剣な表情で私を見つめている。

 唐突で重い質問に、私はすぐ答えられなかった。

 でも、ユートの辛そうな表情を見て、答えは決まった。


「どうというのは、私がユートを嫌いになるかという意味ですか?」

「……ああ」

「それはありえません!」


 キッパリと答えた私を見て、ユートは目を丸くする。


「どうして驚いてるんですか? 私がユートを嫌いになるわけないじゃないですか」

「いや……でも俺は」

「前にも言いましたよ。死神だろうと関係ありません、私はユートが大好きで、この気持ちは本物なんです。だから絶対消えたりしない」


 この先何があろうとも、彼が何者になろうとも、私の想いは変わらない。

 何度問いかけられても、私は同じ返答を返すだろう。


「大好きです」


 この気持ちに嘘はない。


【面白い】、【続きが読みたい】という方は、ぜひぜひ評価☆☆☆☆☆⇒★★★★★をしてくれると嬉しいです。

アルファポリス版もよろしくお願いします!

あっちでも伸びてくれないかな~

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 真っ直ぐな想い。 良いですねぇ…☆
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ