表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋した相手は【死神】と呼ばれる魔術師でした ~僕らの恋は偽物だったと言った癖に今さらやり直そうとかもう遅いです~  作者: 日之影ソラ
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/33

20.楽しみにしています

 私は浮かれていた。

 二人でデートしているという状況に。

 いつもと違う積極的なユートに。

 それが不自然だとも思ったはずなのに、深く考えないようにしていた。

 

「ねぇユート、明日のお弁当は何がいいですか?」

「何でも――」

「何でも良いが一番困るんですよ」

「うっ……って言われてもな」


 好き嫌いはないと以前に言っていた。

 そういうのを考えたこともあまりないのだと。

 彼の正体を知った今なら、その言葉の意味も少しだけわかる。


「ならお肉が良いですか? お魚がいいですか?」

「そうだな~ どっちかというと魚かな」

「わかりました! なら明日のメインはお魚にしますね」

「ああ。楽しみにしてるよ」


 そう言ってユートは微笑む。

 優しい笑顔だけど、どこか別の所を見ているような気もした。

 でも私は気にせず接する。 

 ユートとのデートを純粋に楽しみたかったから。 

 それからしばらくブラブラと商店街を歩いていた。

 すると、気づけば私たちは商店街から外れ、人通りの少ない路地へ入っていた。


「あの……ユート。この先は何もありませんよ?」

「ああ、知ってる」


 そう答えたユートは、まっすぐに路地を進んでいった。

 賑やかな商店街からはどんどん離れている。

 さすがの私も不安になって、ユートに尋ねる。


「どこまで行くんですか?」

「もう少し先だ。大丈夫」


 大丈夫って……一体何を考えているのでしょう。

 私にはわからなくて、もっと不安になる。

 心なしか冷たい視線も感じるし、嫌な雰囲気が漂っている。

 そして唐突にユートは立ち止まった。


「この辺りで良いか」

「ユート?」

「ここなら余計な邪魔も入らない」

「え……」


 ユートは振り返り、私の手を優しく握る。

 

「エミリア」


 え、え、えぇ?

 何ですかこの状況?

 二人きりの路地で、邪魔が入らないって……

 まさか、まさかユート……そのつもりなんですか!?


 頭の中に流れたのは、とても他人には話せないような妄想だった。

 自分の頬が赤くなっているとわかる。

 それくらい身体が熱くて、心臓がドクドクとうるさい。

 隠しきれない動揺が震えとなって現れる。


 人通りの少ない路地で二人きり。

 これは間違いありません。

 ユートもそのつもりで……でも待ってください!

 私たちはまだキスもしていないんですよ?

 それなのに……でもでも、ユートがその気なら私はいつでも受け入れる準備があります!


 という感じで吹っ切れた私に、ユートは小さな声で言う。


「ごめん、必ず守るから」

「へ? 守――」


 次の瞬間、鳴り響く爆発音。

 立ち昇る土煙で周囲の視界が閉ざされる。

 気が付けば私は、ユートの胸に抱き寄せられ、透明な結界の中にいた。


「ようやく出てきたか。もういるのはわかってるんだ。さっさと姿を現したらどうだ?」


 ユートがそう呼びかけると、ポツリポツリと黒い影が姿を見せる。

 気配なんて感じなかった。

 いつの間にか私たちは、黒ずくめの八人に囲まれていた。


「ユ、ユート」

「暗殺者だ」

「え?」

「俺を殺しに来たか、あるいは君を攫いに来たんだろう」

「そ、そんな……」

「見られているのは気付いてた。でもこうでもしなきゃ、出てきてくれそうになかったんだよ」


 そうか。

 私をデートに誘ったのも、離れるなと言ったのも、狙われているのに気付いていたから。

 学園を出てからずっと、私を守るために……


「やはり気付いていたか」


 暗殺者の一人が話しかけてきた。

 ユートが答える。


「当たり前だ。俺を誰だと思っている?」

「死神だろう? もちろん知っているさ」

「それを知って挑んでくるとは……命知らずだな」

「そうでもない。我々はプロだからね? 勝算がないのに挑んだりしないさ!」


 暗殺者たちが武器を取る。

 私にもわかるくらいハッキリとした殺意を向けて。


「ユート……」

「大丈夫」


 怯える私を、ユートは優しく抱き寄せる。


「もう終わってる」

「何をっ……馬鹿な」


 ユートの言葉通り、戦いならすでに終わっていた。

 暗殺者たちは全員、彼の魔術によって拘束され、身動きがとれなくなっていたんだ。

 白く光る縄が、暗殺者たちを締め上げている。


「いつの間に……」

「最初からだよ。気付いていなかったんだな」


 倒れていく暗殺者たちを見下ろしながら、ユートは言う。


「覚えておくと良い。勝算なんて言葉を使った時点で、そんなものは消えるんだよ」


 パチンと指を鳴らす。

 すると暗殺者たちは静かになった。

 何をしたのかわからないけど、意識を刈り取ったらしい。


「終わったの?」

「ああ」


 ホッとひと段落する私に、ユートは頭を下げる。


「え、ユート?」

「すまなかった。君を囮にするような真似をして」

「い、良いですよ。だって私を守るためだったんでしょう?」

「それはそうだけど……」

「なら私は満足です!」

「エミリア……」

「あっ! でもデートが嘘だったのは嫌なので、今度はちゃんとデートしてくださいね?」


 次こそは誰にも邪魔されないデートを。

 まずはそこが、私にとって重要なこと。


「ふっ……ああ、また誘うよ」

「はい! 楽しみにしていますね」

【面白い】、【続きが読みたい】という方は、ぜひぜひ評価☆☆☆☆☆⇒★★★★★をしてくれると嬉しいです。

アルファポリス版もよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ