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恋した相手は【死神】と呼ばれる魔術師でした ~僕らの恋は偽物だったと言った癖に今さらやり直そうとかもう遅いです~  作者: 日之影ソラ
第一章

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2.偽物の恋

「理解してくれたかい? 僕はもう君の婚約者じゃないんだ」

「ま、待ってください! いくらブロア様がそうおっしゃっても、私たちは互いの両親に決められた相手です!」

「それがどうした? 元々対等な関係ではない。私の家のほうが上で、君の家は私の家の恩恵にあずかっていただけだ。私の両親がすでに了承している以上、何の問題もない」

「で、ですがあまりにも急すぎて……」

「ならば時間をかければよかったか? すでに十分、見せつけていたはずだが……」


 ブロア様はニヤっと笑う。

 このとき私はようやく理解した。

 必要以上に見せつけていたのは、すべて私にわからせるためだったのだと。

 あわよくば、私から別れを言い出すことを期待したのかもしれない。


「もういいだろう? そろそろ始業の時間が近づいている。君も教室に戻りたまえ」

「……」


 私は何も言えずに、ただただ立っていた。

 そんな私に呆れたブロア様は、好きにしろと言い残し、私を置いて行ってしまう。

 結局この日は何もする気が起きなくて、私は屋敷に帰った。


 その日の夜は、両親にこっぴどく説教をされた。

 授業を無断で欠席したことに、ではなくて、ブロア様から婚約を破棄されたことだ。

 向こうの両親から、すでに話が来ていたらしい。


「お前が粗相をしたのではないのか!?」

「エミリア、正直に言いなさい」

「なんてことを……これでロストロール家との関係が途切れれば……どう責任をとるつもりか?」

「……申し訳ありません」


 慰めてくれるなんて最初から期待はしていなかった。

 私の両親は厳しい人だと知っているから。

 特に貴族の爵位や権力にこだわりが強くて、それを失うことを何より恐れていた。

 今回の件は、確実にシエル家の汚点に数えられるだろう。

 両親は私の処遇をどうするか夜遅くまで議論していた。

 新しい相手を探すとか、分家の子と入れ替えてしまうかとか。

 それを私がいる前で話すから、余計につらくて悲しくて、私はずっと俯いていた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 翌日も学園を休んで、二日後から登校することに。

 一応、私の処遇は保留ということになっている。

 ことが大きいため、軽々に動けないのだろう。

 そんなことよりも問題なのは、私がいないこの数日で、婚約破棄されたことが学園中に広まっていたことだ。


「ねぇ見て、あれって……」

「ああ、捨てられたんだろ? 気の毒だよな~」

「見た目と性格はいいからな~ 愛人としてなら貰ってやってもいいけど」

「馬鹿なこと言うな! 聞こえたらどうするんだよ」

「別にいいだろ。聞こえたって、今の彼女はロストロール家とは無関係なんだし」


 全部ハッキリと聞こえている。

 文句の一つも言いたくなるけど、私はぐっと堪えた。

 ロストロール家は貴族の中でも名門で、王族の次に大きな権力を持っている。

 だから、その婚約者である私に対しても、周囲は必要以上に気を遣ってくれていた。

 それを申し訳ないと思ったこともあるけど、今となっては不要な心配だったのだろうと思う。


 教室に行く。

 二年生になった私の新しいクラス。

 教室の入り口には、二年二組と書かれている。


「エミリア!」

「システィー……」


 教室に入ると、システィーが私の名前を呼んで駆け寄ってきた。

 システィーは私の一番親しい友人で、ラクリス家の令嬢。


「心配したのよ。今日も来ないのかと思って」

「心配かけて……ごめんね」

「どうしてエミリアが謝るのよ! 悪いのは全部あい――」

「システィー! それ以上言ってはダメよ」


 システィーは出そうになった言葉をのみこむ。

 彼女には以前から、ブロア様のことで相談をしていた。

 経緯は全て知っている。

 私のために本気で怒ってくれる優しい友人だ。

 だからこそ、ブロア様を敵に回すような発言はしてほしくなくて、慌てて止めた。


「ご、ごめんエミリア」

「ううん、ありがとうシスティー」


 私は精一杯の笑顔でお礼を口にした。

 心配をかけないように、もう大丈夫だと見栄を張る。

 いいや、実際は少しずつ落ち着きを取り戻してきていた。

 昨日はずっと一人で部屋にいて、今までの思い出とかを振り返って泣いて、朝になったら楽になっていた。


「ブロア様の言う通りよ……私たちは親が決めた相手で、恋をして結ばれたわけじゃないもの」

「それでも……あんなに頑張ってたじゃない」

「うん。だけどそれは、家のためで……ブロア様のためじゃなかったのよ」


 喜んでほしいという気持ちがなかったわけではない。

 ただ、純粋な好意から生まれた行動ではなかったのだと、今さら気づかされる。

 私はずっと、良い婚約者になろうと頑張っていた。


「それから解放されたと思えば、少し気が楽だわ」

「エミリア……」

「やせ我慢かもしれないけど、私は大丈夫。きっと時間が解決してくれるわ」


 私たちの恋は偽物だった。

 ブロア様は、本物の恋を見つけただけだ。


「……私にも見つかるのかな」


 本物の恋を、今の私は知らない。

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