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神獣と家族

 そこからはもう撮られるわ、撮られるわ。お母様の魔力の全てを使うのではというくらい撮られた。

へとへとになった私たちを見て、満足したらしいお母様は

「お疲れ様。いいのがたくさん撮れたわ。ありがとう、神獣様方」

と、何でもない事のように言った。


「えっ?知ってたの?お母様」

「それはそうよ。私の魔力を舐めないで頂戴」


そんなお母様を見てルーチェが笑う。

『君って母上似なんだね。テンションの上がり方がそっくり』

オスクリタも賛同する。

『だな。あっちの方が凄いけど』

「えっと、ごめんね」

『いいよ。楽しいし』

『だな』


「エリーザ。もしかして神獣様方と会話してる?」

「え?うん」

「キャーキャー、うちの子凄いわ!」

二匹共々ガバリと抱きしめられる。二匹が苦しそうだ。


「いい?エリーザ。この事はこの家の者以外には他言無用よ。絶対に誰にも言ってはダメよ」

一転して真剣に言うお母様。

「わかったわ。約束する」

「ふふ、いい子ね。よし、皆に箝口令を敷かなくちゃ」

そう言ったかと思うと、あっという間にいなくなった。


 話を聞いて、次に大騒ぎしたのはおじい様だった。

「ちょっと頼みがあるんだがな。元の姿を見せてくれ」

二匹に伝えると、なんの躊躇もなく元の大きさの美しい豹になる。


「これは!?」

おじい様は二匹の豹を見て息を止める。

「なんて素晴らしいんだ!おい、誰か。アレをすぐに持ってきてくれ。アレだアレ。なんだったか。とにかくアレだ!」


察した使用人が映写機を持ってくると、またもや撮りまくり状態になってしまった。

『おい、このじいさんとお前の母上が親子なのか?そっくりだぞ』

「ううん違うわ。おじい様はお父様のお父様だもの」

『じゃあなんでこんなに似てるんだろうねえ』

結局、お母様よりも格段に魔力が低いおじい様は、限界がきて力尽きた。


流石の二匹もずっとモデルをやってぐったりだ。

『すごい濃厚な一日だったねえ』

『正確に言えば、半日もないんだけどな』

「本当にごめんね。お腹空いたんじゃない?何か食べたいものある?」

頑張った二匹にご褒美とばかりにいいものを作ってあげようとリクエストを聞く。


『エリーザの魔力』

二匹が揃って答えた。

「私の?それだけでいいの?」

『それだけじゃなくて、それがいい』

小さくなったオスクリタが私の膝に登ってくる。


『神獣の主食は魔力なんだ。普段は大気にある魔力や、森とか湖とか自然からもらったりしてるんだよ』

こちらも小さくなったルーチェが膝の上でちょこんと座る。考えてみれば納得だ。

「私の魔力で良ければ、たくさんどうぞ」


『いただきまーす』

そう二匹が言った途端に、グンと魔力が減ったのを感じた。それでも耐えられない程ではない。時間にして数分。


『ああ、美味かった。ご馳走様』

二匹は満足そうに伸びをした。そしてそのまま丸くなって眠ってしまった。私の膝の上で、可愛らしく眠る二匹を優しく撫でた。


 その少し後、お兄様とお父様が帰ってきた。私の膝で眠っている二匹を見て二人とも驚いていた。

「エリーザ。この子達触ってもいいか?」

お兄様はソワソワしている。

「大丈夫よ。この子達が起きたらお兄様を紹介したいわ。私の大好きなお兄様よって」

「ありがとう。僕もエリーザが大好きだよ」

二人でニマニマしてしまう。


一方のお父様は、思案気な表情をしていた。

「エリーザ。この子達はどうしてエリーザと友達になってくれたんだい?」

お父様が隣にそっと座りながら聞いてくる。

「どうして?」

「そうだ。何か理由を言っていなかったかな?例えばエリーザを守る為とか、逆に国に何かあった時に助けて欲しいとか」


一瞬、お父様は過去を知っているのかと思った。それくらい今の質問は的確だった。

「私を守ってくれるって言っていたわ」

これから来る未来とは曖昧過ぎて言えないが。


「そうか。それならば安心だ。神獣が守ってくれるなんて心強い限りだ。大事にしてあげるのだよ」

お父様はそう言うと、私のこめかみにキスを落とした。そして、おもむろに立ち上がりこの屋敷全体に聞こえるように大きな声で言った。


「皆、聞いてくれ。我が家に来た神獣はエリーザを守ってくれる大事な方達だ。くれぐれも大切に扱ってほしい。そしてこの事は他言無用だ。もし、第三者に知られてしまったら、エリーザが危なくなる。その最たるものが王族だ。国王は勿論、側妃にも絶対に知られないように、どうか皆で協力してくれ」

聞いていた皆が大きく頷いた。


元々、この家で働くものは絆が固い。魔の森の守護者として、常に命を懸けて国を守るオリヴィエーロ家に仕える事は、王家に仕えるよりも格が高いと評判だからだ。そして、私が神獣を連れてきたことによってこの先、ますますこの絆が固く結ばれる事を実感したのだった。


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