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終結

 延々と演説をしていた彼女の、突発的な行動に皆が一瞬動けなかった。

けれども彼女の伸ばした手が私に届く寸前、金色と黒色が動いた。

『たかが人間のおまえなんぞに後れを取る訳ないだろう』

『僕のエリーザに何してくれようとしちゃってるわけ?』

私に伸ばされた腕をルーチェが、ドレスのスカートをオスクリタが器用に口に咥えて投げ飛ばす。


周りにいた野次馬たちは綺麗に避け、偽聖女は勢いのまま2回ほど転がって止まった。

さすがに痛かったのだろう。

「いったーい!!」

叫んでいた。


そこへ、お父様と騎士の方が数名、会場に入ってきた。 

「ビビアナ・ソリダーノ。聖女を騙った詐欺罪、及び我が娘、エリーザ・オリヴィエーロ殺人教唆の罪で連行する」

お父様が片手をあげると、騎士たちが一斉に動き偽聖女を囲む。


「もう!なんなのよ!どうしてこう本命とは上手くいかないのよ!ラファエロといい、高見沢さんといい……いっつもいっつも。だからエリーザなんて嫌いだったのよ。綺麗なだけで特になんの努力もしないで全てを手に入れて。ホント、白川さんにそっくり。大っ嫌い!」


叫び続ける偽聖女を騎士たちが連れて行こうとすると、お父様が彼女の前に立つ。

「貴様の言っていることはよくわからないが、一つだけ大きく間違っていることがある。エリーザが綺麗なのは仕方がない。しかし、何の努力もしていないというのは大嘘だ。エリーザは、見えない所で誰よりも努力をしているんだ。何もしないで文句だけ言っている貴様と一緒にするな」


突然、イケオジであるお父様に、魔物すら怖気づくような声色で威圧的に言われた事に驚いたのか、顔をうっすら赤くしたままポカンと口を開け黙ってしまった。そのまま彼女は騎士たちに連行されていった。


「大丈夫だったかい?エリーザ」

優しく私を抱きしめながら心配してくれたお父様。

「はい、大丈夫です。皆が守ってくれたので」

「そうか、良かった」

「お父様ありがとう。さっきの言葉、とっても嬉しかった」


私がそう言うと、抱きしめていた力を少し強めたお父様。

「お礼なんていいんだよ。私は本当の事を言っただけだからね」

そして私の額にキスをして

「さあ、舞踏会はまだ始まったばかりだ。思いっきり楽しんでおいで」

私にそう言ってから、会場中に響き渡るような大きな声で言った。


「さあ、子ども達、舞踏会はまだ終わってはいない。これからが本番だ。思い切り楽しむといい」

その声を合図に、再び音楽が奏でられる。野次馬達もいつしかバラバラになってそれぞれ再び踊り出した。気が付けば、ラフィ殿下やお兄様、バイアルド殿下にジュスト様も。皆、たくさんの令嬢方に囲まれていた。そして私の周りにもたくさんの令嬢方?とその後ろには男性方がいた。


「あ、あの。オリヴィエーロ侯爵様。是非、一曲踊っていただけませんか?」

勇気ある令嬢がなんと、お父様を誘った。すると、他の令嬢方も騒ぎ出す。

「可愛らしいレディ達。一緒に踊りたいのは山々なんだが、まだ仕事が残っていてね。このまますぐに城へ戻らなければならない。レディ達は今シーズンがデビュタントかな?是非ともその時にでも踊って頂けると嬉しい」


笑顔でそう返したお父様を見て、皆の顔がリンゴのように染まった。

「はい!絶対に約束ですよ」

「ああ、勿論。レディ達が私を忘れない限り。では楽しんで。失礼」


私の額に再びキスをすることは忘れずに、颯爽と去って行ったお父様。お兄様の原点を見た気がした。この若い年代をも落とすイケオジは、お兄様よりも格が上かもしれない。


そんな事を考えていると、後ろの方にいた男性方が近づいてきた。誰か選ばなくちゃと思っていたら、後ろから腰を抱かれる。

「皆、済まないがファーストダンスは譲ってもらうぞ」

そう言うと、私の了承もないままに会場の中央へと連れて行かれる。


「皆様、随分と待っていらっしゃったのに」

気の毒に思って言えば、上から不貞腐れた声が降ってきた。

「俺はそれよりずっと待っていたのだが?」

「ふふ、そうでした。申し訳ありません」


音楽に合わせ、軽やかにステップを踏めば、殿下に贈られたドレスのレースが花のように舞う。レースの所々に隠すように縫い付けられていたビジューが、光に当たってキラキラと煌いていた。

「リーザ、綺麗だ。髪が、瞳が光に当たって宝石のように煌いている。本当に天使のようだ」


素直な賛辞に心がときめく。

「ラフィ殿下も。深紅の瞳がキラキラしています。とっても綺麗」

「リーザに綺麗と言われるのは嫌じゃないな」

「殿下は綺麗ですよ。初めてお会いした時は動く芸術品だと思いましたもの」

「はは、やはり悪くない」


踊りながら、私の指先に、手のひらにとキスを落とす殿下。

「終わったな。これでやっと一人前の婚約者だとグアルティエロに認めてもらえる」

「ふふ、そうですね。私も嬉しいです」

ちょうど曲が終わった。


「果たして本当に認めてもらえますかねえ」

ラフィ殿下の後ろでお兄様が黒い笑みを浮かべていた。

「うわっ!おまえ、本当に怖いからやめろ」

「何をですか?後ろに密かに立つこと?婚約を認めてもらえるか疑う事?」

「どちらもだ」


「ふふ、まあ冗談は置いておいて。次は私の番ですよ」

私の手を掴んでいた殿下の手を剥がし、腰を抱いて自分の元へと引くお兄様。

「さ、ラフィはあちらで手ぐすね引いて待っているご令嬢方のお相手をしてください」

「なんで俺が!?」


「王族の務めです。既にバイアルド殿下とジュストがもみくちゃにされてますから助けて差し上げてください」


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