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愛しています

「緊張してる?」

お兄様が優しく私の手を握った。

「少し。でも不安はないの。だって、お兄様もラフィ殿下もジュスト様も……それにこの子達も。皆がいてくれるから大丈夫」

前は一人だったけれど、今回は一人じゃない。


「そっか……そうだね。私はもう何があってもリーザの味方だからね。これからもずっと」

「お兄様、私だってずっとお兄様の味方です。でも……ふふ、そろそろお義姉様と呼べる方を見つけて欲しいです」


「ははっ、それは難しい問題だね。リーザを一番に考えていることを許してくれる人じゃないといけないからね」

少し茶化すように言ったお兄様に笑ってしまった。

「ふふふ、もう、お兄様ったら」


二人で笑っているうちに学園に到着した。


「よし、今日を楽しく終わらせるために」

「そうね、今回こそはダンスを踊りたいわ」

『美味しいもの』

『お菓子』


「頑張ろう!」

「おー」

「ニャー」

「ニャニャー」


王族専用の応接間に到着すると、ラフィ殿下がもう待っていた。

「……」

「お待たせしてしまいましたか?」

「……」

「ラフィ殿下?」

「……」

「殿下?」

私を見て固まったままの殿下。


「これは使い物にならないかな?もう私のエスコートで行ってしまおうか」

お兄様が私を連れて出て行こうとしたところで、やっと殿下が覚醒した。


「ハア、ハア、ハア……死ぬかと思った」

「大丈夫ですか?具合でも?」


「違う、リーザが綺麗過ぎて、息が出来なくなった。俺の色に染まったリーザが、女神に見えた」

「あ、ありがとうございます」

首元から胸元まで赤いレース。胸元から裾に向かっては、深い色になっていく赤のグラデーション。後ろの部分は何層か重ねた黒のレースが縫い付けられて、正にラフィ殿下の色そのものだった。


「本当に綺麗だ」

私をマジマジと見つめる殿下の姿に息を飲む。


今度は私が呼吸困難に陥る番だった。正面に立ったラフィ殿下は光沢のある黒いフロックコートに金色の刺繍が施され、黒い髪にとてもよく似合っていた。タイとチーフはやはり紫色で襟元には、私の胸と耳に光るピジョンブラッドのアクセサリーと同じ石のピンが飾られていた。


スラッとした殿下に、黒が眩しいほど似合っている。王子というよりも、魔王という感じがしてゾクッとした。どうやら私は魔王の方が好みらしい。


「殿下も、その、素敵です」

「リーザ!」

私の言葉に思わずといった感じで抱きしめようとしたラフィ殿下の動きが目の前で止まった。


「まだ、早いです」

冷たい風が吹きすさぶような笑顔のお兄様が、殿下の首根っこを捕まえていた。

「おまっ、俺は猫じゃない」

「嫌ですねえ、そんなことわかってますよ。暴走しそうなラフィを止めただけです。リーザといちゃつきたかったら問題を解決した後です」


「はああ、わかったよ」

「では、私は一足先に行きます。殿下とリーザはこのまま待機です。多分、ジュストはもう中にいるでしょう。全員が揃っていたら合図を出します」

「ああ」

「はい」


私たちの返事を聞いて、お兄様は会場へと向かった。


「いよいよだな」

「はい」

「緊張しているか?」

「いえ、馬車に乗ってすぐの頃は少し緊張していましたが、今は大丈夫です。私は一人ではないと実感したので」


「そうだな。今回リーザは一人じゃない。皆がいる」

「はい、だから大丈夫です」

「うん、いい顔だ」

優しく頷いてくれる殿下。


すると、ルーチェがお兄様の念話をキャッチした。

『全員揃っているってさ』

「そうか、わかった。行こう」

「はい」


ルーチェとオスクリタが先導する。私はラフィ殿下にエスコートされながら、会場の扉の傍までやって来た。扉は大きく開け放たれている。

「リーザ」

「はい」

真面目な声色で私の名前を呼ぶラフィ殿下。少しかがんで私の耳元に顔を寄せた。


「愛している」

「!!」

びっくりし過ぎて固まってしまった。

「はは、今どうしても言いたくなった」

少し意地悪な顔になったラフィ殿下。


「殿下……」

ボソボソと私が言うと、聞こえなかったらしく、少し耳を私に近づけた。

「ん?よく聞こえなかったぞ」


「殿下」

「ん?」

「私も、愛しています」

「!!」

今度は殿下が固まった。


「私も、どうしても今言いたくなりました」

「はっ、やられた」

そう言った殿下は、私のこめかみにキスを落とした。そして一歩、会場へと足を踏み入れた。

「行こう!」

「はい」


いざ、学園舞踏会へ。


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