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上手くいかない

 おかしい。チェーザレもジュストも、なかなか恋に落ちない。それどころか私に対しての当たりが他の人に対するよりも強い気がする。S効果でも付属されたのだろうか。私、Mじゃないんだけど……


やっぱり聖女の力が備わっていないせいかなあ。先走って神託を受けたなんて言わなきゃよかったかな。でも、聖女になるのはヒロインの私しかいないはずだし。


それとも1周目に悪役令嬢とチェーザレを殺させたのがまずかった?でもねえ、あれは必要だったのよ。少なくとも私の中では。前世の時だってよくしてたし。流石に殺すのは犯罪だったからやってないけど。


何もしてない子の罪を作り上げて蹴落とす。私の中では日常茶飯事。だってねえ、私が狙っていた男と仲良くしてるんだもん。それって許せないことでしょ。


そういえばあの女ってどうしたんだろう。私の本命の営業の彼に告白されたあの女。よりによって私の目の前で、会社のロビーで大々的に告白劇を繰り広げてくれちゃって。見た目はお綺麗だけど大人しくて、守ってアピールが凄かった嫌な奴。しかも、男女共に好かれていた。私には女の友人なんていなかった。女は基本みんな敵だし。


そうよ、その女に似てるから悪役令嬢が大っ嫌いだったんだ。あの女はなんの努力もしてないくせに、仕事がちょっと出来るからってチヤホヤされて。それでも見て見ぬふりをしていれば気にはならなかった。だって私は受付嬢。会社の華。片やあの女は企画開発。あんな企画開発なんて奥の方の部屋でうっそりとしてるだけでしょ。


なのに、どうして彼はそんな女に告白したのよ。私が誘っても見向きもしなかったのに。


だから私、屋上に呼び出したのよねえ。あんたなんかに彼は釣り合わないって。碌に話したこともない私に呼び出されて驚いてたなあ。それがまた私をイラつかせたんだけど。

話が済んだ頃は、もう結構いい時間になっていて人気がなかった。それで魔が差した。


私は先を行く女を階段から思いっきり突き落としてやったの。屋上へと続く階段って他のフロアと違って段差が急なのよ。どこかの骨でも折っちゃえって突き飛ばしたんだけど……結局どうなったんだっけ?思い出せない。

私はその後どうしたの?忘れちゃった。ま、もう前世の事だしいっか。


とにかく早く聖女の力よ、来い!今度こそ私の王子様とラブラブ生活&贅沢三昧に暮らしたい。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


カフェの件から更に2カ月経った。

聖女はあれから少しの間、大人しくなっていた。本当に少しの間だったけれど。


ほとぼりが冷めた頃を見計らって、再びお兄様に言い寄って来ていたらしい。勿論、ラフィ殿下にも。そしてジュスト様にも。


カフェの事件の少し後、ジュスト様が私に事件の真相を聞いてきた。泣いて出て行った聖女が泣きついてきたが、言っていることが怪しいと。私は全てを話して聞かせた。

「やはり」

そう言ったジュスト様に思い切って聞いた。


「ジュスト様は記憶を持ってらっしゃいますか?」


それからは泣いて謝るジュスト様を宥めるのに大変だったけれど、お兄様も呼んで少しだけ泣いて……これからは皆で頑張ろうという事で収まった。


「どうして私が記憶持ちだと思ったのですか?」

そう聞かれた私は少し驚いてしまった。

「だって、この子達を私のもとに連れて来て下さったときに、今度は絶対に間違えないって私におっしゃいましたよね」


びっくりしたジュスト様は、一生懸命あの時を思い出して、ハタと気付いたようだ。

「言ってましたね」

そう言って頭をかくジュスト様が、少し幼くて可愛いと思ってしまったのは内緒だ。



今日は我がままを言って、魔の森の中にいる。だいぶ前からお兄様は魔の森の定期討伐に出向いていた。そして最近になって、ラフィ殿下まで参戦するようになった。


私はずっと指をくわえて見送っていたのだけど、いよいよ我慢ならず、お母様に泣きついた。もうお母様の代わりに結界を余裕で張れるようになっていたので、お母様は快諾。「任せて」とその日の夜に、お父様を説き伏せたのだ。


そして休日、今、私は森にいる。

「最近は小さい魔物の姿をめっきり見んなあ」

おじい様が物足りなさそうにして奥へ進む。

「そうだな。神獣殿が家で暮らすようになってからか?」

お父様が二匹を見る。


『僕たちは特に何もしてないよ』

『別に魔物食べないしな』

成体サイズで私の両サイドを歩いている二匹が否定をする。

「この子達は何もしてないって」


「それでももしかすると、この子達の神気で小さい魔物は怖がってしまうのかも」

お兄様の予測にお父様も頷く。

「それは確かにあり得るな」


 ほどなくして、大きなトカゲ型の魔物が3体現れた。あっという間に倒す四人。

「こいつの肉は硬くて食えないんだよなあ」

「うわあ、じゃあ処理するしかないか」

四人とも面倒そうだ。


「処理するって?」

「ああ、解体してなるべく小さくして燃やす。使いどころのない魔物だからといって放置すると、他の魔物が寄ってきたり刺激したりしてしまうからな」

ラフィ殿下が教えてくれた。


「跡形もなく消し去れればいいのにね」

この大きなトカゲを小さくするって、どれだけ時間がかかってしまうのだろう。


『じゃあエリーザが浄化すればいいだろう』


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― 新着の感想 ―
[一言] 前世もガチのサイコパスだったのか... さすがにここまでクズだと、痛い目あってほしくなるな。
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