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ストーカー?

コンコン。

死にそうだったことも忘れ、ラフィ殿下と顔を見合わせる。

「お兄様でしょうか?」

「アイツはノックしない」

それは失礼なのでは?と一瞬思ったが、じゃあ誰?という疑問の方が大きい。


「どうしますか?」

「このままほっておこう。どうせ中の音は外には聞こえないからな」

『聖女もどきだよ』

『ああ、あの女の気配だ』

二匹が嫌そうな顔で教えてくれた。


「一体どういう事だ?ここは王族と関係者しか知らない場所なのだが」

「もしかしたらバイアルド殿下に教えて頂いたのでは?」

「そうだとしても、今は授業中だぞ」

そういえばそうでした。


コンコン。

再び扉がノックされる。今度は声が聞こえた。

「ラファエロ様、いらっしゃいませんか?」

コンコン。

再度ノック。

「おかしいなあ、この時間帯ってここにいる確率が高いはずなんだけど、教室の方かしら?」

ぶつぶつ言いながら去って行った。


「……なんであのチカチカ頭は俺の行動パターンを知ってるんだ?」

私も、ルーチェもオスクリタも首を傾げる。

「しかもあの女、人の事敬称もなしに呼んでなかったか?」

「そういえば」

確かにラファエロ様と呼んでいた。


「本当に聖女じゃないんだよな」

『そうだよ』

「じゃあ、光魔法で予知みたいな力があるのか?」

『そんな魔法、光にも闇にもない』

「じゃあなんだ?」

『ストーカー』

『怖っ』


神獣たちとのやり取りが面白い。ダメよ。今は笑う時ではないわ。

「ぷっ、はははは。こんな時に笑わせるな」

ずるい、私は我慢したのに。


「まあ、いい。ストーカーだろうがなんだろうが、いざとなったら受けて立つ。それよりリーザの方が心配だ」

『僕たちがいるもん』

『俺たちの方がラファエロより強い』

二匹がピシッと座る。


「ははは、そうだったな。頼もしい限りだ」

ラフィ殿下は楽しそうに、ワシャワシャと二匹の頭を撫でたのだった。


今日の授業はもう終わってしまったので、荷物を取りに教室へ戻ってから馬車乗り場へ。勿論ラフィ殿下がそこまで送ってくれた。

「明日の休日、またチェーザレと戻るからな」

「はい、お待ちしてます」

『お土産忘れないでね』

『ケーキが食いたい』

「わかった、ケーキだな」


馬車に乗り込むと、ラフィ殿下が扉を閉めてくれる。

「じゃあな」

窓枠に置いていた手をそっと掴まれ、指先にキスをされた。


「出してくれ」

ラフィ殿下の声で馬車は静かに動き出した。ラフィ殿下は、馬車が門から出て行くまで見送ってくれていた。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


名残惜しいが仕方ない。リーザの馬車が見えなくなるまで見送ってから学園の方へと戻ろうとした。


「どうした?バイアルド」

私が向いた先にバイアルドが待っていた。斜め後ろには宰相の息子のジュストもいる。


「もしかして今までずっと、エリーザ嬢と一緒だったのですか?」

「そうだ」

「いくら婚約者候補の一人といえど、いや、だからこそ、特定の女性と親密にし過ぎるのはよくないのではないですか?」


ああそうか、こいつも知らないのか。

「婚約者候補はリーザ一人だけだ」

「は?」

「候補として挙げているのはリーザだけだって言っている」


沈黙。処理できないか?


「じゃあ」

お、理解出来たか。

「じゃあ何故、婚約者候補なのですか?彼女に何か不都合な事でもあるのですか?」


「いや、リーザに不都合などない。強いて言うなら可愛すぎるくらいだな」

ちょっと茶化して言ってみる。

「ふざけないで真面目に答えてください」

本当にこいつは面白みのない奴だよ。


「はあ、俺がまだグアルティエロに認められてないからだ」

「グアルティエロ……オリヴィエーロ侯爵にですか?」

「そうだ。俺がリーザを守るのに問題ない男になるまでは候補のままなんだよ」

本当の理由は前のようにならずに済めばって事なんだろうけどな。


「でも彼女は使役獣もいるし、本人も魔法が凄いし、兄上の力なんて必要としていないのでは?」

「そんなことは百も承知。それでも自分の手で守りたいって思うのが男なんだ」

「……そうですか」

バイアルドにはまだわからないようだな。


「ところで話は変わりますが」

「なんだ?」

「聖女、ビビアナが兄上に会いたいと言っているんですが」

先程の事を思い出す。もしかして、自分だけじゃ俺を捕まえられないと思って弟を使おうとしてんのか?


「断る。これでも俺は忙しいんだ。聖女だか何だかはバイアルドが相手をすればいい」

「ですが!」

「俺は聖女には全く興味はない。それよりもバイアルドの方が気になっているんだろう?」

指摘してやれば、頬をうっすら染める弟。人の趣味はどうこう言えないからな。


「よし、話は終わりだな。俺はまだやることがあるから。またな」

バイアルドの頭をワシャッと撫でてその場を去る。通り過ぎる直前、ジュストが小声で俺に囁いた。


「聖女は偽りです」


振り返ることはせず、ジュストの肩を軽く叩く。これで彼には了承の意だとわかってもらえるだろう。どうやらジュストはわかっているようだ。もしかすると俺たちと一緒で記憶があるのかもしれない。だとしたら、今後もアイツは大丈夫だろう。ダメなのは弟のみか。なんとかしなきゃな。


仕事があったが、またあの女が来そうな予感がする。今日はもう部屋に帰ろう。俺は学園を逸れて、寮の方へと向かった。


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