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バイアルド殿下

 休み時間。

二匹が毛を逆立て、机の上に乗って何かを警戒する。

「どうしたの?」

二匹に問いかけた時

「おい」

私の座っている正面にバイアルド殿下が立った。

その後ろではミルクティーの瞳がウルウルしている。


「なんでしょう?」

私も立ち上がって目線を合わせる。

「エリーザ・オリヴィエーロ。おまえ、何故、兄上に抱かれて教室に来た?」

「少しアクシデントがありまして。腰を抜かした私を支えてくれたのがラファエロ殿下だったのです。それでそのまま連れてきてくださったのです」

腰を抜かしたのはあなたのお兄様のせいですけれど。


「そうか。それと、母上からおまえに婚約の打診が何回かあったはずだが。何故了承しない?」

「はい?」

「おまえ、魔力が凄まじく高いのだろう。父親のオリヴィエーロ侯爵以上に」

「そうですが……」

「だから俺の婚約者に相応しいと母上が言っていた。なのに何故?」

あれ?この人こんなにマザコンだったかしら?なんだか前の時とイメージが……


「申し訳ございません。バイアルド殿下からそのようなお話があったことは今初めて聞きました」

「なに!?では侯爵が決めていたという事か?」

「おそらく」

父上とあなたのお兄様ですよ。


「ならば今からでも俺の婚約者になれ。おまえほどの見目なら王子妃になるのもいいだろう」

見目って……そうだ、前もお茶会で見た目から気に入られたんだった。

「ありがとうございます。ですが、重ね重ね申し訳ございません。私は今、ある方の婚約者候補となっております」


「ある方とは?」

「それはまだ公にはされておりませんので申し上げられません」

勘が良ければ自分の兄だと想像はつくだろう。後ろの彼は何かを感づいたようだし。


「候補ならばまだ外れる事も可能だろう。俺がとりなしてやる。だから俺の婚約者になれ」

「バイアルド殿下にそう言っていただけるのは大変光栄なのですが、私の一存でどうこうなるものではございませんので」

やんわり断っているというのがわからないようだ。


「そうだな。話をするのはオリヴィエーロ侯爵の方がいいな。わかった。近いうちに彼と話をつけよう。楽しみに待っていろ」

そう言うと、足取り軽く教室を後にした。


「なんだったのかしら?」

『自分の兄だとなんで勘付かない?』

『婚約者の候補を作るのなんて王族くらいだろうにねえ』

二匹も呆れている。



 翌日。

昨日の事はすっかり頭から飛んでいた私は二匹と仲良く登園していた。

「ねえ、あなた達の風呂敷の膨らみ、明らかに昨日より膨らんでない?」

『え?そうかなあ、気のせいじゃない?』

『新作だってたくさんくれた』

『あっ、オスクリタ。料理長に内緒にって言われたのに』

『そうだったか?』

「もう、本当にオリヴィエーロ家はあなた達に甘いわ。ふふ」

思わず笑ってしまった。


「俺と会えなくても寂しそうじゃないなんて。泣くぞ」

またもや後ろから、耳の近くで言われた。

「キャッ」

思わず肩を竦めてしまう。


「変な声のかけ方をしないでください。変態と呼びますよ」

「おまえ、本当に呼ぶだろ。やめろ」


「ラフィ殿下、お兄様」

「おはようリーザ。ルーチェとオスクリタもおはよう」

「ニャアニャア」

お兄様に挨拶されて二匹が嬉しそうに答える。

「おはようございます、お兄様」

私も挨拶をすれば、極上の笑顔が返ってきた。


「だからおまえら兄妹でイチャイチャすんな」

「イチャイチャなんてしてないですよ、何を妄想しているんです?変態王子」

「ああ、ホント嫌。オリヴィエーロ家の男って」

大きく溜息をつく殿下。


「おはようございますラフィ殿下。オリヴィエーロ家の男って、お父様と何か?」

殿下を見上げれば、くいっと腰を抱かれた。

「リーザのせいだぞ……まあ、俺が不甲斐ないのもあるが」

「私?何かしましたでしょうか?」

全く心当たりがない。


「リーザ。昨日、バイアルドから婚約の打診されなかったか?」

昨日、昨日。

「ああ、そういえばされました。でもある方の婚約者候補となっているから無理だって断りましたよ。その後、お父様にかけあってやるとか言っていなくなりましたけれど」


「それだよ」

再び溜息を吐く殿下。

「なんで俺のって言わなかった?」


「え?だって公にされていないようなので」

「してない、確かにしてない。婚約者にしてもらえない俺が悲しいからな。だけど、弟には別に言って良かったんだぞ」

「そうなのですか?」


「そんな事、言われないとわかりませんよ。ねえ、リーザ」

私の頭をなでなでしながら黒い顔になっているお兄様。

「ラフィ、あなたは言葉が圧倒的に足りないのです。気持ちで察しろとか、アホですか?」

「ぐっ」

殿下が殴られていないのに、ボディに食らったように呻いている。


「そうじゃなくても、その高身長に恐ろしいほど整った顔。更に漆黒の髪、深紅の瞳。それだけで威圧感たっぷりなんですから、黙っていたら怖いんです。仕事ではそれで正解だという時もありますが、ちゃんと言葉にしないとリーザに振られますよ」

「がはっ」

膝をついた。これは白タオルでしょうか?


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