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LVII 仕事人スザンナ・チューリング

戦利品を抱えて、抜け殻みたいなモーリス君を慰めながら部屋に戻る。スザンナが部屋の前に来ていた。


「ルイス様!ルイス様!王子様明日の午前に家に帰ってくるってさ!男爵様が大慌て!」


「知っているわ、そのために朝から頑張って服を確保したのよ。それよりなんなのその格好!」


この世界では女性は日中に肌を露出させる格好はしない。夜会とかディナーのドレスは背中を開けたり肩を出したりするけど。


スザンナは谷間を強調するようなオレンジのドレスを着ていた。首回りが長方形に大きく開いているやつで、これはマナー違反。大体これから家事をしてもらうのになんで豪華なドレスを着ているのかしら。


「あたい今日仕事始でさ、ルイス様だけじゃなくてあたいにも認証式があるし、やっぱり何ごともはじめが肝心でしょ。男爵様がこの服気に入って用意してくれたし。」


男爵は相変わらずろくなことをしないのよね。


「どう思うモーリス君?」


「どうって言われましても、僕に振らないでください、聖女様。」


戸惑ってはいるけど、モーリス君はスザンナの肥大化した胸にあまり気を取られていないみたい。やっぱり部屋に十字架を置くだけのことはあるのね。


「スザンナ、私は明日の朝までにお風呂に入らないといけないわ。下男のフランクを読んできて。」


「ルイス様、まずは男の格好をしないとバレちゃうよ?」


そういえばフランクは私が女だと知らない設定なんだっけ。それ以前にスザンナ経由でバレそうな感じもするからそっちのほうが心配なんだけど。


「わかったわ。ウィッグをかぶれるように髪を結ってちょうだい。」


「わかったわ、ルイス様!」


相変わらずの言葉遣いのスザンナだけど、モーリス君の美辞麗句の後では少しほっとする。


「僕は、その、部屋の前で待っていますね。」


モーリス君はそろそろと退出した。女性の化粧を見ないのはエチケット。でも服はもう貸してもらったけど何を待っているのかしら。


スザンナは意外にも手際がよかった。簡単に団子を作るだけかと思ったけど、三つ編みにした髪を円になるように頭にぐるぐる巻いていく。ウィッグで隠すのはもったいない王女様みたいな髪型。


「上手なのね。」


「こうすればウィッグがデコボコしないでしょ。男爵様とあたいの二人で考えたんだから。」


スザンナはテキパキと手を休めない。当然といえば当然だけど、私が男爵と出会う前に二人には交流があったのね。


すっかり男爵を熟知しているような気になっていたけど、こうしてルイーズ・レミントン捕獲計画を聞かされるとなんだか少し悔しい。


スザンナは固定された三つ編みの部分と後ろ髪を使って、ウィッグをピンで留めた。


「ワオ!本物の美少年よりも美少年ね!」


スザンナが歓声を上げる。


やっぱり?


ショートヘアを試してみようかと何度も思ったけど、世間体的に難しかったのと、自慢のサラサラヘアーを犠牲にするのがもったいなかったのから結局トライしたことがなかった。でもこうしてみると、我ながらなかなかの出来栄えだと思う。


「これはみんなに見せつけなきゃ。さっきの喘ぐ人連れてくるね!」


モーリス君は喘ぐ人と認識されているみたい。私にも責任の一端があるみたいでなんだか申し訳ない。


モーリス君は入ってくるやいなや、大袈裟に膝をついた。


「聖女様、お美しいです。こんなに崇高なものを見るのははじめてです。」


いや、男の従者に偽装しているわけだから決して神聖なものじゃないと思う。髪型を考案した二人とも神聖とはかけ離れた存在だし。


モーリス君は色眼鏡で見ているからあんまり信用できない。


「モーリス君ほどじゃないわ。目の色といい髪質といい、モーリス君のほうが高貴な雰囲気だもの。」


モーリス君と今の私で美少年コンテストをしたら8:2くらいの比率でモーリス君に軍配が上がると思う。


「いえ、聖女様の大きな輝く目、小さく高貴なお口、綺麗な素肌、全てがそのふわりとした髪にぴったりです。」


崇められるのは得意じゃないのだけど。高貴な口ってどんな口なのかしら。


「モーリス君の緑のミステリアスな目、艶やかなベージュの毛並み、そして透き通った白い肌。妖精みたいな美少年なのはモーリス君の方よ。」


「いえ、聖女様、聖女様のまつげといい、眉毛といい・・・」


「二人とも!その辺にしといて!あと、あたいも褒めて!」


スザンナが赤い髪と胸をアピールし始めたので、なんだかよくわからない自慢大会は一旦お開きになった。

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