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XXXVIII 提督サー・エドマンド・ニーヴェット

私がニーヴェットの名前を口にしてから、男爵の微笑がみるみるうちに引いていくのがわかった。


「ノリッジから滅多に出ないと聞いて油断していたけど、まさか君の知り合いが王宮にいるとはね・・・」


「知っているも何も、サー・エドマンド・ニーヴェットが海戦で亡くなったとき、遺産の管理をしたのはお父様よ?私もあの家の兄弟姉妹8人とお祖父様のサー・ウィリアムとは顔を合わせているわ。」


バッケナムはノリッジからあまり遠くない。ニーヴェット家は時折ノリッジの社交界に顔を出していたし、お父様がニーヴェット家の屋敷に出向くときは私も喪服を着て書記としてついていった。あの屋敷は大きいけどあまり実用的じゃなくて、軍事要塞みたいなところだった。


男爵が本当に苦々しい苦笑をしている。


「それは弱ったね。本当に弱った。」


「私もあの家が王室と関わりがあるとは思わなかったけど。それで、ヘンリー王子についているのはエドマンド・ジュニア?あの人は海軍にいったと思ったけど?」


「いや、トマス・ニーヴェットだよ。」


「トマス・・・次男ね。」


剣術が得意で、父親の跡を継いで海軍にいくと息巻いていた青年を思い出す。海軍にいくなら銃や砲を習ったほうがいいんじゃない、って言ったら不機嫌になっていたのも覚えている。


「確か最後にあったのは2年前だったかしら。この前のトマスの結婚式にも呼ばれていたけど、私は片付けないといけない用事ができてしまって忙しかったの。」


ちょうど鞭で怪我をしたピーター・ジョーンズ少年の家と示談の交渉をしているところで、ニーヴェット家の結婚式にでる暇はなかった。


なんとなく従者は未婚なイメージだったけど、トマスは早いうちに結婚したから年齢的にはヘンリー王子と大して変わらないと思う。


「しかし困ったことになったね。これではルイスを見破られてしまうし、当然男だと偽るのも難しいだろう。」


男爵は珍しく真面目な表情で項垂れている。私の任務は初日から暗礁に乗り上げたみたい。どう見ても袋小路。


ちょっと灯籠の光が弱いのもあって、特に右斜めから見ると男爵の苦悩に満ちた表情は麗しい。やっぱり彫りの深い顔立ちが織りなす明暗のコントラストがいいと思う。黒服にレトロ調の部屋もいい味を出していて、この建物のどこかにいるはずの宮廷画家を呼んできて絵にしたいくらい。


私は3分ほど男爵の顔を堪能した後、仕事モードに戻ることにした。


「男爵、本当に私をルイス・リディントンで押し通すつもりがあるのなら、お父様が顧問弁護士をしている家くらい事前に調べておいてください。」


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