CCCLXXXIII 砲兵隊長ニコラス・アップルヤード
この章の登場人物
ルイーズ・レミントン
主人公で、ノリッジの弁護士の娘。男装して従者「ルイス・リディントン」としてヘンリー第二王子や部下をマッサージしていたところ王子領の農民反乱が起きてしまい、マッサージで気持ちよくなり戦闘不能になってしまった王子たちに代わって名目上の指揮官になっている。
ゴードン・ロアノーク
東棟の衛兵。黒髪で口ひげがトレードマーク。「指魔法」以外でもルイーズの能力を高く買っており、上司であるウィンスロー男爵の意に逆らって農民との交渉役にルイーズを推した。
ヒュー・モードリン
東棟の衛兵。茶髪の長髪。マイペースなルイーズに振り回されて呆れがちだが、ルイーズの「指魔法」には大きな信頼を置き、今回もルイーズの任務参加に積極的だった。
モーリス・セントジョン
アーサー王太子の従者で貴族。緑の目にバージュの髪で、儚げな絶世の美男子。肩の痛みを治癒したルイーズを聖女と崇めている。ルイーズの出陣を阻止しようとしたがマッサージで陥落した。
ニコラス・アップルヤード
砲兵隊長。本編初登場。
言及される人物
ウィンスロー男爵レジナルド・ガイトナー
国王付侍従長で通称「男爵」。ルイーズ好みの彫りの深いイケメン。ヘンリー第二王子派で、王子の女嫌いを治すためルイーズを宮殿に連れてきた人物。当初の任務と全く関係ないルイーズの出陣には、危険だとして強く反対している。
ヘンリー第二王子
大の女嫌いで、美少年好きという噂が絶えない第二王子。ラグビーマン風の体格の良い美男子だが、話が長い教養人でもある。男の従者「ルイス・リディントン」にマッサージされて気持ちよく眠ってしまい、反乱の知らせが来ても目を覚まさなかった。
ヘンリー(ハリー)・ギルドフォード
ヘンリー第二王子の従者で宮殿の会計監査官の息子。通称「くまさん」。ルイーズにテディベアを連想させる大柄の青年。ひょうきんな性格だが腹黒く、今回はマッサージで快眠に旅立つ前に、警備の仕事を全部ルイーズに投げる書類を作ってしまった。兵科は銃と砲。
トマス・ニーヴェット
ヘンリー第二王子の従者。ルイーズと同郷で宮殿に来る前からの知り合い。ルイーズには協力的だが、今回の反乱では用事で宮殿を出払っていて部隊に参加していない。兵科は剣と槍。
トマス・スタンリー卿
ダービー伯爵の孫で中部地方の知事。優秀で強い軍人だがイケメンとは言えない。ルイーズとは長い付き合い。夫人と没交渉だったが、ルイーズのマッサージを期に結婚無効の訴えとルイーズへの求婚を始め、魔女裁判となってしまった。
サー・ニコラス・レミントン
ルイーズの父で、ノリッジの法廷弁護士。ノーフォーク地方の大半の名家で法律顧問を務めていて、庶民院議員の経験もある。貴族ではないが妻オードリーは名門の出身。
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顔を覆ったモーリス君を抱えるヒューさんと、南棟の南側にある広場みたいなところに向かっている途中で、甲冑姿のままこっちに小走りでやってくるゴードンさんと出会った。
「ルイーズ様、大砲隊と護衛の鉄砲隊、衛兵は出陣の準備ができています。隊長への挨拶と、簡単な演説をお願いします。モードリンが抱えているのはセントジョン閣下ですか、顔が見えませんが?」
ゴードンさんはすごく落ち着いた低音で淡々と指示を並べた。一応私は名目上の指揮官ってことになっているから、やっぱり挨拶はしないといけないみたい。
「モーリス君は今ちょっと・・・老若男女に道を踏み外させる危険な顔をしているから。それより挨拶はともかく、演説までするなんて聞いてなかったけど、分かったわ。砲兵隊長はどんな人なの?」
「ニコラス・アップルヤードです。もともとは砲術技師の出身ですが、実践経験も豊富です。ただ少し気難しいので、喧嘩を売られても買わないよう、お気をつけください。」
気難しいって情報も気になったけど、私は名字に聞き覚えがあった。
「アップルヤードって、ノーフォークのアップルヤード家よね、多分お父様が法律顧問をやっている家だわ。トマスの二―ヴェット家と違って私自身とは直接の交流がなかったけど、私のことを知っているかもしれない。」
確かアグネスさんという女性の方とノリッジの社交界であったことがあって、アップルヤード家の奥様でいらしたと思う。旦那様とは会ったことはない気がするけど。
「またですか・・・サー・ニコラス・レミントンも手が広いですね・・・ルイーズ様、今のあなたは男の騎士『ルイス・リディントン』でいらっしゃいます。くれぐれも感づかれないようお願いします。バレたらややこしいことになります。」
今度はヒューさんが、モーリス君を丁寧に他の衛兵の方に渡しながら、呆れた声をだした。
私の知り合いが宮殿に複数いるのは想定外だったみたいだけど、なんだか私に呆れられるのって間違っている気がする。
「しょうがないじゃない、男爵が私の身元チェックをちゃんとしないからこうなるの。だいたい私の裁判、スタンリー卿をマッサージしたことが発端だったのよ?ちょっと考えれば軍に知り合いがいそうなくらいわかるはずよね。」
「落ち着いてくださいルイーズ様、ほら、大砲が整列していますよ。」
ゴードンさんがなだめるように私の背中を押して、みんなで門みたいなアーチをくぐると、中庭みたいなところに大砲がズラッと並んでいた。
木の台に載せられた鈍い銀色の大砲が、すごく威圧感があって、一台あたり10人くらいの人が大砲の周りをあくせく歩き回っていた。
よく見ると形とか太さは不揃いみたいで、強くて大きそうなやつが手前に並んでいるみたい。一番手前の馬くらい大きいやつは、傾いてきた日差しで光沢を放っているけど、奥の方の大砲は材質が違うのか、鈍い水色っぽい色だった。
1、2、3、4・・・・・・
「9個?他の大砲は?」
「ルイーズ様、農民反乱の鎮圧に大砲9門が出動するというのは、過去にない規模ですよ。軽砲も4門あります。」
「えっ、9個だけ?」
ゴードンさんはすごく自信満々だったけど、私は『大砲隊』の規模が思ったより小さかったことにちょっと慌てた。
「ルイーズ様、大砲は熟練の職人が年がかりで作るものです。砲手も訓練が必要ですし、海軍や要塞とも競合します。野戦にそう多く動員できるものではありません。」
「あの、大砲不足は分かったけど、反乱軍って800人いるのよね、9個でいいの?」
大砲がズラッと並んでいるところで、ちょっと怯んじゃった領民の皆さんと交渉するつもりだったのに、ちょっと9台だとビジュアル効果が欠ける気がする。
「十分です。大砲隊280人、マスケット銃隊140人、衛兵ほか歩兵90人、騎兵30騎、工兵と運搬に180人、合わせて720人の大所帯です。」
「・・・ちょっと待って、人数まで相手より少ないの!?」
あれ、思っていたのと違う・・・
なにかを引き受ける前に絶対契約書は読むようにと、あれだけお父様に叩きこまれたのに。まあ今回はくまさんに勝手に委任されちゃったわけだけど・・・
「相手は素人ですよ、こちらは皆甲冑をしたプロです。心配いりません。」
「あの、ゴードンさん、私も素人だから、お忘れなく・・・」
交渉前に優位な感じに立てると思っていたのに、なんだか数の面では相手が怯んでくれる感じではなかった。
「(ルイーズ様、あちらで兜をつけていない方がニコラス・アップルヤードです。)」
私が逡巡しているのを気にせずに、ゴードンさんが大砲のそばで図面を片手に話している人を指さした。体の大きい甲冑を着た人と話しているけど本人はヘルメットを取っている。
30代半ばくらいだけど、エンジニアというよりは騎士っぽい精悍な感じの人だった。ちょっと髪の毛はさみしいけど、いかにも強そうな感じで凛々しい顔立ちをしている。
ただ図面に目を落とすときに首が前に出ていて、ちょっと猫背な印象もあった。
「はじめまして、アップルヤードさん。」
「アップルヤード、こちらは本日の指揮を取る、サー・ルイス・バーソロミュー・リディントン様だ。」
私が友好的に挨拶しようとしたのに、ゴードンさんはなんだかいかつい紹介をした。そういえば公式設定にはミドルネームがあったのよね。
「(ゴードンさん、私まだ騎士に叙任されていないから、『サー』使えないと思うけど?)」
「(内定していますから大丈夫です。砲術技師に舐められてはいけませんから。)」
ときどき身分に細かいゴードンさんは、今回は緩かった。
アップルヤードさんは関心がなさそうに私に一瞥したあと、憮然とした様子で図面に線を戻した。
「まあ、邪魔にならないようにお願いしますがね。ギルドフォードの坊っちゃんなら重火器が分かっていたが、王子殿下の旬のお気に入りの貴族様となると、守る方に気が行って我々も砲術に集中できませんがね。せいぜい怪我をして殿下を悲しませないよう、お願いしますからね。」
アップルヤードさんはぼそぼそとけっこう失礼なことを言った。もっと爽やかかと思ったけど、しゃべると印象が変わる人みたい。考えたら王子のお気に入りの従者が経験もないのに急に上司になったわけだから、気に入らないのは自然な気がするけど。
「アップルヤード!わきまえないか!」
ヒューさんが怒鳴ったのを、私は手で制止してアップルヤードさんに近づいた。
周りを見回すと衛兵やマスケットの兵隊がアップルヤードさんに敵対的な目を向けて、ざわざわと野次を入れていた。
「サー・ルイスの火事での活躍をしらないのか、卑怯者!」
「前線に立つ勇気を知らない人間が騎士を悪く言えるのか!」
「緑の英雄リディントン様を貶めるな!」
「カニ歩きの勇者になんと失礼なことを!」
よくわからない称号が聞こえてきたけど、火事の現場にいた兵隊さんたちには私の評判が良かったみたい。でも野次を受ける側の大砲部隊は無表情で見返していた。
「(えっ、ゴードンさん、みんなこんなに仲悪いの?)」
「(見えない相手を遠くから攻撃する砲術は、他の一対一の剣や騎馬の部隊からは不気味がられて信用されていないのです。砲兵の報酬は大きいものの、昇進しても騎士でなく技師扱いで社会的地位はそこまで高くありません。)」
私はゴードンさんと小声で言葉を交わすと、野次を無視してまた図面に目を落としているアップルヤードさんに声をかけた。
「アップルヤードさん、私は配属されたばかりで、おっしゃるとおり重火器のことはわかりません。基本的に細かい作業に口は出さないので、私は交渉のみを担当しますが、交渉中には絶対に撃たないようにお願いします。」
「(ルイーズ様、見くびられますから、ご謙遜は程々に!)」
ゴードンさんが兜越しに耳打ちしてきたけど、私は実際素人だから、あんまり介入しないほうがよさそうだった。
アップルヤードさんは顔を上げて私を不思議そうに見ていた。やっぱり肩が凝ってそう。
「サー・ルイスは王子殿下のお気に入りにしては、衛兵に信者が多いようですがね。こちらも久々の実戦でいきりたっている者も多い。呼びかけはしますが、保証はできませんがね。なんともきらびやかな、貴族的な甲冑をしていらっしゃいますからね、職人気質の我々砲兵には、やたら気取って見えますからね。」
ちょっと待って、指揮官の言うことを聞いてくれないってこと!?
「(ゴードンさん、指揮官に逆らうのは軍法違反だって言ってなかった?)」
「(残念ですが砲兵隊は引く手あまたで、砲手不足もあって軍上層部に対しても立場が強いですから、自治の伝統が残っているのです。彼らは昇進を目指していませんし、報酬も十分ですからね。)」
複雑な事情があるみたい。でも困るのよね、なるべく大砲を使わずに終わらせるのが私の役割なのに、勝手に発射されちゃったら。
ここで「私が責任者だ」アピールをしても逆効果な気がしたから、私は下手に出ることにした。
「アップルヤードさん、直前に指揮官が代わったご不満はわかりますし、私が素人であるとなったらなおさらでしょう。でもまず、私は貴族の出身ではありません。ヨーマスの公証人の息子で、この豪華な甲冑は借り物です。それに、実家の水道工事を監督したことがありまして、大砲よりずっと簡単なのは分かっていますが、決して技術畑の方を見下すことはしません。」
私は必死でルイス・リディントンの公式設定を使って弁明したけど、アップルヤードさんは首をかしげた。
「ヨーマスの公証人だったら私の知っていそうなものですがね、リディントン家・・・聞いたことがありませんやね。それにノーフォークで水道工事をしていたのは、クレア家かレミントン家か、両手で数えられるくらいだったはずですがね。」
出身地が近いとこういうことがあるのよね。クレア家はお母様の実家で、両方とも私が工事監督したケースだった。
「細かいことは、今は説明している時間がありません。くまさん、じゃなかった、ヘンリー・ギルドフォードの委任状がここにあります。どうか指示に従ってください。それに、確かに彼が空砲を扱うのを見たこともありますし重火器に詳しいでしょうが、あまり働かなかったでしょう?」
私はヒューさんが委任状を出すのを横目に正統性アピールをしようとしたけど、アップルヤードさんは真面目に受け取ってくれなかった。
「坊っちゃんはお父上のサー・リチャードが兵器総監だったころからの付き合いですからね、細かい指示がなくてもわかりあえるものがありましたからね。それに、坊っちゃんは王子殿下の寝室のお供じゃなく、ちゃんとした外の従者ですからね。」
「ちょっと!私は中の従者ですけど、殿下とはご想像されているような仲ではありません。むしろ殿下の本命は外の従者ですよ。」
「(ルイーズ様!!)」
ヒューさんが小声で怒鳴るという芸当をやってのけたけど、それでも王子の恋人扱いされるのは心外だった。マッサージはある意味で『寝室のお供』といえなくもないけど、明らかにニュアンスが違った。
そういえば確かにくまさんってなんか、怠けているけど憎めない二世社長っぽいのよね。くまさんのお母様もヒグマっぽい恐さがあったし、あの一族には近づきたくない。でも宮殿中に知り合いがいそう。
「今の『ちょっと!』というのですかね、どこかで聞いたことがある気が・・・サー・ルイスはよく通る高い声をしてらっしゃいますがね、ノーフォークで『ちょっと!』という口癖のある、やたらと声が大きい方を一人知っていますがね、性別が・・・」
え、嘘でしょ、私のことを知っているの?私の声は別に大きくないけど・・・
「それは、ほら、私の又従姉妹の、えっと、確かブーリン家だったような、クラーク家だったような・・・」
「(ルイーズ様、諦めましょう。最終手段です。)」
ヒューさんは私に耳打ちすると、衛兵に目配せしてアップルヤードさんを取り囲んだ。
「なんの真似ですかね!衛兵は砲兵を拘束するのは禁じられているはずですがね!」
「アップルヤード、お前はサー・ルイスと話をする必要がある。少しの間こちらに来てもらう。5分以内に帰ってこなければ、他の砲兵が来てもいい。」
ゴードンさんはいつになく威厳のある低音で他の砲兵隊を威圧すると、3人がかりでアップルヤードさんを連行した。
中庭を囲む二階建ての建物の、さびれた一室みたいなところに向かうと、ヒューさんの合図で他の衛兵が出ていって、ゴードンさん、ヒューさん、私、アップルヤードさんの4人だけになった。
「なんのつもりですかね。砲兵隊の権利の侵害だと、後でサリー伯爵に抗議をしますがね。」
もともと兜をしていなかったアップルヤードさんは、肩の甲冑も取り外されていた。
「(ルイーズ様、5分あります。やっちゃってください。)」
ヒューさんは少し息が上がっていたのか、ちょっと小声が小声になっていなかった。
「ルイーズ?・・・ルイス・・・リディントン・・・レミントン・・・まさかとは思いますがね、あなたは・・・」
せっかく甲冑で私の顔が見られないのに、もう正体がバレたみたい。こっちが知らないのに一方的に知られているのって困るのよね。
私は手の甲の部分の甲冑を外して、手が自由に動かせるようにした。
「あの、アップルヤードさん、肩、凝っていらっしゃいますね。」
「凝る?・・・いやそれよりも大事なのはですね・・・これはスキャンダルに・・・アッ・・・なっ、なにをっ・・・アッ、アッ・・・アアッ!!」
アップルヤードさんの肩はかなり凝っていた。首の付け根のあたりが特にすごい。
「やっぱり凝っていますね、ほんと。ここ、気持ちいいでしょう?」
「いやっ・・・待っ・・・ンアッ!!・・・アッ・・・ハァァッ・・・」
アップルヤードさんが気持ちよさそうに体を震わせたタイミングで、私は手を止めた。
「アップルヤードさん、私はサー・ルイス・リディントン。ヨーマスの公証人の息子です。いいですね。私の出自については詮索せず、口外しないでください。」
「・・・しかし、それは問題が・・・アッ・・・アッ、アッ・・・わ、分かったっ!!・・・言わないいっ!!・・・アアッ!・・・」
とりあえず言わないでいてくれるみたいだった。後で気が変わっても、私は近いうちに辞任予定だから、なんとかなると思うのだけど。
「それと、砲術については何も干渉しませんから、私が合図するまで絶対に大砲を撃たない。約束してくれますか。」
「・・・もちろん、ただ・・・ンアッ・・・ハァッ・・・やっ、約束するっ!!・・・約束・・・アッ!・・・ンアッ、アッ・・・」
「(ルイーズ様、魔法の使い過ぎは危険です。)」
ゴードンさんの停止で、私はまた手を止めた。これ、全然魔法じゃないけど。
「あとは、ヘンリー王子殿下の密命で、できる限り犠牲のない形で収めたいんです。だから、すくなくとも最初は空砲でお願いできますか。」
「空砲?しかし空砲を打ってしまうと、実弾を込める準備で次の発射が遅れ・・・アッ・・・ンアッ・・・わっ、わかりましたあっ!!・・・空砲打つっ・・・うつうっ!!・・・」
「(ルイーズ様、アップルヤードが完全に堕ちてしまうと役に立たなくなります!)」
ヒューさんの合図で私は手を止めた。
「それでは、さっき言った約束を守って、現場で私の言う事を聞いてもらえたら、この続きをしてあげますから。」
「つ・・・つづき・・・つづき、したい・・・約束・・・守ります・・・」
熱に浮かされたようなアップルヤードさんは私の説得に同意してくれた。
「(さすがルイーズ様、一流の魔女でいらっしゃいます。)」
「(だから魔女じゃないってばゴードンさん!でも、確かに今の流れはちょっと悪い魔女っぽかったかも、反省しないと・・・)」
周りから魔女、魔女って言われていると魔女キャラになってしまいそうだから、ちょっと気にしておこうと思った。
「(ルイーズ様、アップルヤードはルイーズ様好みの渋くて顔の良い男かと思いますが、特に影響はされていないご様子ですね?)」
ヒューさんはイケメン学が分かっていなかった。
「(あのねヒューさん、私は別にこういういぶし銀的なナイスミドルが好きなんじゃなくって、男爵みたいに造形美のあるイケメンが、客観的に見てすばらしいと思うの。男爵も切れ長の目だけど恐さがないから、もっと美しさに意識が行くじゃない?せっかくの機会だし、ちょっと分析のために男爵連れてきて横に並んでもらいましょう。)」
「(ルイーズ様、そんなことをしていたら日が暮れてしまいます!)」
「(もう結構暮れ始めていると思うけど、さっきから急いでいるのかそうじゃないのかはっきりしてよね!)」
素人が相手だってみんな言うけど、一応反乱なのにこんなに悠長なのはなんでなのかしら。
「・・・つ・・・つづき・・・」
「後で、つづきは任務が終わったあとですよ、アップルヤードさん。」
私はアップルヤードさんをなだめながら、演説場所に向かった。
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ルイーズは『声が通る』ため、ノリッジの社交界に一度でも出た人はみんな一方的に知っています。




