CCCLXXIII 前座ウィリアム・コンプトン
俺はオットマンにうつ伏せに寝っ転がると、準備をしているリディントンを見上げてにらみつけた。
こいつは口だけは達者だから、また俺を混乱させにくるにちがいない。
「いいかリヴァートン、絶対に俺に話しかけるな!」
「え、でも痛いかもしれませんよ?」
リディントンはきょとんとした顔で俺に脅しをかけてきた。こいつ、中身はあくどいのに表情が無害な感じで、みんなをだましてくる。
王子さまもこの見かけだけかわいい奴におだまされになれれて、すっかり気持ちよくなられてしまわれて・・・
だが、今度は俺が身を張って王子さまをお守りするんだ!
「俺は王子さまの一番のしもべだ。すこしくらい痛くたってがまんできる。」
大丈夫。前回こいつにおかしくされたときも、痛くはなかった気がする。
「そうですか・・・では黙っていますね。」
これでいいんだ。リディントンは舌だけはまわるやつだから、武器をひとつ無効にしたんだ。
あとは俺がきもちいいのに耐えて、王子さまが誘惑からお目をお覚ましになるように、ご警告してさしあげなきゃ。
「コンプトン、準備は良いのか。」
王子さまがお優しいお言葉をおかけになってくださった。
「はい王子さま!準備万端です!」
俺は元気よく返事した。
「大丈夫か。」
「大丈夫です、王子さま!俺、初めてじゃないですから、ご心配なさらないでください。」
王子さまを安心させると、俺は気持ちよさにどうやって耐えるかを考えた。
どうしよう、準備しとけばよかった。さっきの無礼な領民の顔でも思い出して・・・
グサッと肩を何かが貫いた。
「いだいいいいいいいいっ!!!!」
痛い!!
すっごい痛い!!
なにか刺さった!
「さ、刺さってるっ!!いたいいっ!」
俺は思わず叫んだ。
刃物か?それとも針?肩つらぬいちゃった?どうなるんだ俺の体!?
「どうした、コンプトン!?」
王子さまがご心配されている。でも痛い!
ご安心させたいけど、とにかく痛い!
リディントンは肩から俺を殺すつもりなのか?王子さまのオットマンで俺を血まみれにする気なのか?
「お、王子さまっ、からだになに、ぐあっ・・・刺さってっ・・・グサッてなって・・・からだ、さ、裂けちゃ・・・血が出てっ・・・」
「大丈夫かコンプトン、いつもと違わないようだが・・・血も出ていない・・・」
嘘だ、そんなはずない。俺、絶対何かで刺された!リディントンは絶対に手に何か隠してる。
それでも、王子さまの目が気になったのか、リディントンは刃物をしまったみたいだった。今は指で強く押されている感じになる。
まだ刺されたところが痛いけど、さっきよりましになった。傷口はどうなってるんだ?消毒しなきゃいけないのに。
「大丈夫かコンプトン、やめておくか。」
王子さまは心配なさっていらっしゃった。ご主人様を心配させちゃだめだ。
「だ、大丈夫です、王子さま・・・この程度の痛み、俺、王子さまのためならがまんできます!」
俺は王子さまに、頼りになるところを見せられたと思う。まだ肩がじんじん痛いけど。
リディントンは少し体勢を変えたみたいで、今度は肩をつかむような感じでうごかしてきた。
ゴリッ
ゴリッ?
待て、ゴリってなにかけずれたりつぶれたりする音はなかったか?
ゴリッ
あれ、なんか体が削られてるっ!?
さっき刺されたときより痛くないけど、このままじゃ俺の体、こなごなになっちゃう!!
「ごっ、ゴリゴリだめっ、んあっ・・・こわれるうっ・・・ゴリゴリしちゃやだあっ!!」
王子さまの前だけど、もうがまんできなかった。
「コンプトン、体がつらいのか?」
王子さまはご心配されている。リディントンはまた手を弱めた。
たぶん俺の肩はまだ肩の形をしていると思う。たすかった・・・
「はあっ、はあっ、だ、だいじょうぶ・・・これくらい、なんとか、なんとかなります・・・俺、がんじょうですからっ・・・」
俺が叫ぶ、王子さまが心配する、リディントンが俺をいじめるのをやめる、このくりかえしになっていた。
王子さまに俺のお世話をしていただいちゃ、俺、王子さまの子分失格になっちゃうかも。
でも、このままじゃ痛みで俺だめになっちゃうから、しょうがない。今だって弱まったリディントンの指が・・・
あ、きもちいい・・・
リディントンはいつのまにかゆっくり俺の肩をなで回していて、なんだかふんわり気持ちいい。ささられてるだけなのに、なんでだろ。
さすっ
さすっ
「・・・ほあっ・・・こすれて・・・きもひぃ・・・」
「善くなってきたのか、コンプトン?」
俺が思わずきもちいいといってしまったから、王子さまが目をキラキラさせてお聞きになってきた。
だめだ、王子さまがこれに気持ちよくなられてしまわれたら、またリディントンの思うままになるに決まってる。これ、きもちよくてぼおっとしちゃうし・・・
でも、俺が嫌だって言って、リディントンがさっきの痛いやつに戻しちゃったら・・・
さすっ
さすっ
「・・・王子さまぁ・・・きもちいですけど・・・ふあっ・・・これ、バカになりましゅう・・・んふゃっ・・・脳みそとけちゃうよお・・・」
「コンプトン・・・」
俺はがんばって、王子さまにリディントンの危険をアピールした。きもちいいけど王子さまにはちゃんとお役目をはたした。
でも俺、たぶん理性たもってる。前のときよりいけてる。からだ、あったかくなってる。
さすっ
さすっ
「・・・んぅ・・・きもひぃ・・・」
これ、俺だけきもちよくなって、王子さまもまもれて、いいことばっかりだ。
えへへ、リディントンも王子さまをねらってて、俺をきもちよくするつもりはなかっただろうから、王子さまのみがわりになって、ちゃんとこいつのたくらみも負かしてやったんだ。
さすっ
さすっ
なんかからだがふわふわしてねむたくなってきた。でもおれがねちゃったら王子さまがねらわれて・・・
あれ、手がとまった。
肩から首にうごいて・・・
「んいっ!!??」
つかまれた?!?クビ!?しめられてる!?
ぐいっ ぐいっ ぐいっ ぐいっ
「あっ、あっ、なにこれっ、あっ、あっ」
クビを押されるのが、さっきのさすさすよりずっとはやくなった。
ぐいっ ぐいっ ぐいっ ぐいっ
「あっ、やっ、あっ、待っ、あっ、はげしっ、あっ、」
「コンプトン、痛いか?」
痛い、わけじゃないけど、
かゆい、わけじゃないけど、
くすぐったい、わけじゃないけど、
よくわかんないけど、なんだかつよい刺激があって、からだにビリビリが走って、じっとしてられなくなる。
ぐいっ ぐいっ ぐいっ ぐいっ
「あっ、あっ、あっ、からだっ、ビリビリっ、あっ、もうっ、あっ、わけっ、あっ、わかんな、あっ、あっ、」
いたくはないけど、からだ、おしこまれて、くびのとこしか、かんがえられなくなってる。
あれ、とりはだたってる?さむくないのに?なんで?
ぐいっ ぐいっ ぐいっ ぐいっ
「あっ、あっ、ぞくぞくっ、あっ、とまんなっ、あっ、あっ、からだ、へんになって、あっ、たしゅけてえ、あっ、あっ、」
「コンプトン!大丈夫か!?」
もうだいじょうぶじゃないよお。まともにかんがえられないよお。
ぐいっ ぐいっ ぐいっ ぐいっ
「あっ、あっ、王子っ、さまっ、あっ、あっ、あたまっ、チカチカ、あっ、あっ、おれっ、もっ、ぐいぐいっ、だめえっ、あっ、」
手がちょっとゆっくりになって、ぐっとおされて、あ、そこだめ・・・
ぐいいっ
「っあ、おう、じ、さまあっ、おれ・・・もう・・・」
「コンプトン・・・」
ぐいいいいっ
「んふぁ・・・あっ、あふうんっ・・・・・・・・・・・・」
これされちゃ、だめ、おうじ・・・さまあ・・・




