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CCCXXXII 南の魔女ルーテシア・ラフォンテーヌ


サー・エドワードは駆け足で部屋に入るや、だらしない格好で倒れている三人を見て絶句した。


「フィッツウォルター男爵、いかがされまし・・・これはっ!?・・・一体何が・・・」


うろたえる姿を目にして、さきほどの私もこれほど取り乱し、呆然としていたのだろうか、などと考えてしまう。


「サー・エドワード、三人とも無事ですが、先程南の連中にいかがわしいことをされたようです。ルーテシア・ラフォンテーヌの推薦状を見せてください。それと付添の侍女二人の詳細を。偽物かもしれません。」


「いかがわしい!?・・・いえ、キャサリン王太子妃殿下とプエブラ博士のサインは確実に本物ですし、付添の侍女はマリア・デ・サリナスとドナ・エルヴィラで間違いありません。しかし、なんということだ・・・殿下・・・」


サー・エドワードは信じられないものを見るような様子で、いつになくご満悦なご様子でお眠りになるアーサー様を見つめた。


しかし、推薦が偽物でないとすると謎が増える。


寝取った男を言いなりにする魔女ルイーズ・レミントンの能力を考えると、キャサリン妃や侍女たちを手玉にとることはできないはずだった。しかし、彼女たちが戦略的にヘンリー王子と手を組み魔女に報酬を与えて送り込んだとして、夫のアーサー様にスキャンダルがあればキャサリン妃にはデメリットしかない。そもそも譲位を狙うヘンリー王子と、この国での立場がアーサー様に依存するキャサリン妃は利害が一致しない。


「サー・エドワード、ルーテシア・ラフォンテーヌは、明るい栗色の髪の、16歳前後の少女でしたか?」


「いえ、銀髪でメガネを掛けた、年齢不詳の女性です。以前会ったときと印象は違いましたが、話しぶりは16歳には見えませんでした。」



別人か?



満足そうにまどろんでしまっているアンソニーをもう一度確認する。この症状は昨日のヘンリー・ギルドフォードと同一とみて間違いない。



まさか、同じ魔法を使う魔女が複数いるというのか。そういえばフィッツジェラルドが今朝、ルクレツィア・ランゴバルドという魔女候補の話をしていたが。


「サー・エドワード、印象が違うというのは?」


「フィッツウォルター男爵・・・不謹慎な内容をお話しても構いませんか。」


サー・エドワードは少し躊躇する様子を見せた。


「今は非常事態です。手がかりになるなら無礼講で構いません。」


「はい・・・初対面のとき彼女は胸のあまりない印象でした。しかし今日は、胸が少し垂れているように見え、違和感を覚えたのです。先日は被り物をしていたので、銀髪だったとは気づきませんでしたが。」


「見え方の違いは服装によるものでしょう。しかし年配となるといよいよ別人か・・・」


ベスが社交の場に出るときに見え方を気にしているので、私とて彼女たちの涙ぐましい努力を軽んじるつもりはない。


しかし、そうなると年齢的に考えても、やはりルイーズ・レミントンではない別の魔女か・・・


「フィッツウォルター男爵、別人というのは?」


「ええ、アンソニーが先程『魔女様』と寝言を言っていたのですが、これは東の魔女ルイーズ・レミントンのことを指しているのではないかと。現にレミントンにやられた直後のヘンリー・ギルドフォードも同じような症状を見せていたのです。」


「ルイーズ・レミントン・・・いえ、年齢はもちろんですが、私がルーテシア・ラフォンテーヌ本人と会ったとき、先日はキャサリン様ご自身、今日はドナ・エルヴィラが同伴し、息の合った様子でした。地方出身者がなせる芸当ではないでしょう。」


確かにいくら魔法持ちであっても、16歳の少女が外国出身の宮廷医になりきるなど不可能だろう。


「そうですね、たしかに魔女レミントンがヘンリー王子殿下に仕えているとしたら、キャサリン王太子妃はむしろ敵対勢力になるはずです。さらにラフォンテーヌがおかした蛮行を考えても、ヘンリー王子にはデメリットしかない・・・」


「ラフォンテーヌがした蛮行とおっしゃいますと?アーサー様に一体何が?」


サー・エドワードは心配そうにアーサー様のご様子を窺った。


「はい、許しがたいことに、アーサー様がお子様をお作りになれるかどうか、予告なしに試したようなのです。アーサー様は許すようにとおっしゃっていますが、これはこの国に対する侮辱にほかなりません。」


「信じがたい!!そんな不敬な・・・なんということだ!!厳重に抗議せねば・・・それで・・・結果は・・・」


憤怒のおさまらない様子だったサー・エドワードだったが、結果に興味が隠せないようでもあった。


「結果として幸いアーサー様はお元気になるとの診断だったようですが・・・肝心なのは結果ではなく手続きです!全く許しがたい!信じがたい暴挙です」


「それはすばら・・・いえ、もちろん、ごもっともです。実に許しがたい!!二度とあってはならぬことです!」


「その通りです!」


我々は南の暴挙に対し断固一致して抗議することで一致した。


「しかしフィッツウォルター男爵、もし南の女医が不埒なことをしでかしてアーサー様を誑かしたとして、それが魔女につながったのはなぜですか?ウィロビー閣下の寝言とお顔だけを頼りにするのはいかがかと・・・」


「いえ、アンソニーはまだ起きませんが、意識のあったグリフィス・ライスによれば、女医はグリフィスを踏みつけながらキャサリン様への忠誠を誓わせてきたとのこと。さらに女性経験が抱負と自称するグリフィスが、簡単に正気を失い、屈服して忠誠を誓っています。これは単なる誘惑とは思えず、相手を言いなりにする魔女の力といえるでしょう。」


グリフィスとの気色の悪いやりとりを再現したくはないが。『家畜』云々は不要な混乱を呼びそうなので省略する。


「なるほど・・・しかし、魔女本人に服従させればシンプルだったはずです。やはりヘンリー王子に仕える魔女とは別の、南出身の年配の魔女と考えるのが自然でしょう。まったく、内戦後魔女の噂さえなかったというのに、いきなり二人現れるとは・・・」


「ご指摘ごもっともです。しかし別の魔女となると、考慮する変数があまりにも増えてしまう・・・南の魔女ルーテシア・ラフォンテーヌの能力は、東の魔女ルイーズレミントンと同種のものでしょうか。」


にこやかに緩んだアーサー様のお顔をもう一度見ると、もはやすべて手遅れなのではないかと思考停止に陥りそうになる。


「そう仮定すると、アーサー様はこのまま南の言いなりに・・・」


「ええ、ルーテシア・ラフォンテーヌはアーサー様たちを操りにきたのかもしれません。しかし南がアーサー様とその側近たちを言いなりにすることのメリットはあるにしても、アーサー様が評判を落としてしまわれたら困るのは南です。今でもアーサー様は南の困るようなことはしていないというのに、一体なぜそんなリスクをとるのか・・・」


お優しいアーサー様は同盟国である南の国に不利益になることはなさらない。またアーサー様が人事不省に陥り南の傀儡となったら、ヘンリー王子派が勢いづくのは目に見えている。むしろ本来、魔女のターゲットはアーサー様の周りにいて南と距離のある私やフィッツジェラルドのはずだが。


「フィッツウォルター男爵、これはあくまで仮説なのですが・・・」


サー・エドワードはやや言いにくそうに小声でつぶやいた。


「教えてください。」


「フィリップ太閤殿下及びフアナ妃が来訪するイベントで、極秘裏に南の国の王位継承が議論されるそうです。」


初耳の情報だった。


「南の王位?フアン皇太子が亡くなった後、イザベラ女王の後継者は長女のフアナ様に決まっていると聞いていますが。フィリップ大公との間にカール公子もお生まれになっているのに、なにか問題があるのですか。」


「それがフアナ様は情緒不安定なところがおありで、また低地諸国と南の国を行き来することに難色を見せられております。そのため聡明な次女のキャサリン様を望む勢力がおりますが、おっしゃるように配偶者であるアーサー様の健康問題と後継者問題が影を落としています。」


「なるほど、アーサー様を操って、二人の間にお子様が誕生すれば良いと・・・」


そう考えると、アーサー様の能力をテストし、魔法でその気にもさせるラフォンテーヌの行動は非常に理にかなっている。


「それだけではありません。アーサー王太子殿下が魔女のいいなりになってしまえば、キャサリン様が実質的に連合王国の君主になるかもしれません。」


「確かに。だとすればキャサリン妃がアーサー様に近づくことは全力で妨げなければ・・・」


魔女にやられてしまったアーサー様が温泉で『裸の付き合い』に没頭するうちに、キャサリン妃一派によるこの国の乗っ取りが進行しかねない。


「殿下がこのようなご様子であれば、お子様が生まれても教育の主導権はキャサリン様一行が主導権を握るでしょう。」


サー・エドワードはいまだに悦に入っているアーサー様のご様子に頭を抱えた。


「面倒な事態になりました。本当に。とにかく我々は魔女をアーサー様に近づけず、キャサリン妃からもアーサー様にアプローチできないようにする必要があります。」


「しかしフィッツウォルター男爵、レミントンと違いラフォンテーヌはキャサリン様の侍医として強固な立場を持っています。完全な排除は難しいでしょう。」


東棟に潜伏しているレミントンと違い、宮殿で大手を振って歩けるラフォンテーヌは厄介になる。


「サー・エドワード、私はこの後、キャサリン妃のところに抗議に参ります。その際魔女の様子も確認し、対策を練る材料にしましょう。アーサー様はエルサムへの避難中、ご気分がすぐれないとして南の人間には誰もお会いにならないようにしましょう。」


「わかりました。そのように計らいましょう。」


どちらの魔女に対しても、ひとまずアーサー様へアクセスできる人間を絞れば多少の安全は確保できる。


「東の魔女にも注意が必要ですが、当面の敵は南の魔女ルーテシア・ラフォンテーヌ。気合を入れていきましょう。」


私は決意を新たに、キャサリン妃のもとに抗議に向かった。




作者注) 長かったロバート・ラドクリフ視点がここで一旦途切れます。お付き合いいただきありがとうございました。


アーサー王太子の従者四人(出向中のモーリスを除く)について、詳細な人物紹介を書いたので貼っておきます。



ロバート・ラドクリフ


アーサー王太子の侍従筆頭。バッキンガム公爵の義弟で、最近フィッツウォルター男爵に復位した。中庭の行進では他の侍従に指示を出すなど、リーダー的存在になっている。家紋は白地に棘のある黒いタスキ(ベンド)。


没落貴族出身で、苦労して貴族に戻ったため高貴な人間としてのプライドが高い。財政的に騎兵になれなかったため剣の道を極め、宮廷では最強の剣士になった。貧乏生活が長かったためか、馬車や衣服はボロボロのものを大事に使っている。義兄バッキンガム公爵に将来性を見込まれての結婚ではあったが、妻エリザベス・スタッフォードを溺愛している。情に厚く、ラドクリフ家にアンソニーやモーリスを招待したがるが、ロバートの質素な食生活を知っている二人は遠慮がちである。


ルイーズがウィンスロー男爵と甲乙つけがたいと表すほどのイケメン。男爵同様に鼻筋が通った高い鼻と彫りが深い顔立ちだが、ロバートは炎のように明るいオレンジブラウンの髪で、真っ青の瞳の大きな目を持っている。クリアで高すぎない声。姿勢が良く所作も美しいが、背は高くなく体格はそこまで恵まれていない。継ぎ接ぎだらけの服を着ていることからファッションには関心がないと見られる。


性格は責任感が強く、冷静で分析的。幼少期にすべてを失った経験からか、友人や家族をとても大事にする。一方で自負心の強さからか他人に対して上から目線になることも多く、時折ジェラルドや女官達、近衛兵の反感を買ってしまっている。計算高く、マインド・ゲームを仕掛けることも多い。


ラドクリフ家はもともと伯爵の家格だったが、内戦で白軍について敗れ、さらに先代がサフォーク公爵のクーデタ計画に関わって処刑されたため、ロバートが子供のうちに爵位返上、財産凍結の憂き目にあった。

執事のオズワルド・ホーデンと二人で、アーサー王太子の少年従者として宮殿住み込みで働き始め、アーサー王太子を危険から護るなどの功績が認められて順調に昇進した。ただしアーサー王太子周辺でトラブルが起きなかったことが最大の功績だったため、今回の火事では厳しい立場に立たされている。


アーサー王太子に忠誠を誓っているが、部下任せにされることに慣れていたためアーサー王太子に『要請』をする場面も目立った。アンソニーを弟分として可愛がっているほか、モーリスとも仲が良い。グリフィスはそれなりに信用しているようだが、『やりすぎ』ないか心配するシーンもある。一方、裕福な家の出身ながら境遇を嘆いているジェラルドを軽蔑しており、彼がアンソニーに『手を出した』ことで関係はさらに悪化した。


近衛連隊のサー・クリストファーやサー・エドワード、東棟のブランドンやギルドフォードとも知り合いで、サリー伯爵やシュールズベリー伯爵とも交流があるなど顔が広い。ただし父親の処刑にサインしたダドリー議長とは、同じ王太子派ながらしこりが残っている。古典語は独学のため得意でなく、身勝手なキャサリン王太子妃の侍女たちとは折り合いが悪い。


バッキンガム公爵から『魔女ルイーズ・レミントン』について『寝取った男を虜にする』という情報を得て、ヘンリー王子がアーサー王太子に譲位させるための駒として警戒している。ルイス・リディントンについては実力を認めながらも、一度の功績で棋士になったこと、初な侯爵令嬢に手をだしたことで不信感を抱いている。


もともとヘンリー王子に好印象を持っていなかったが、彼がモーリスに『手を出した』として逆上し、今は不適合なヘンリー王子を廃嫡するため水面下で動いている。



ジェラルド・フィッツジェラルド


アーサー王太子の侍従。島の豪族で総督代理であるキルデーン伯爵の長男で、宮殿では人質としてアーサー王太子と一緒に育てられた。アンソニーと同室で、行動をともにすることが多い。家紋は白地に赤のX。


アーサー王太子に心酔し、彼のためなら文字通り火の中に飛び込むことも辞さない勇気をもっている。良くも悪くも行動が速い。島の有力者一族としての誇りがある一方、田舎者として差別されてきたことからコンプレックスが強い。本土の流行に敏感で、言葉遣いも普段は訛りがでないよう気をつけているなど、他人の目を気にするところがある。ルイザ宛の花束や中庭のライトアップなどでは意外な美的センスの高さを見せた。島の勇者として知られた母方の祖父を見習い武術にも熱心で、盾と剣を使った守備的な戦闘スタイルが得意だが、太刀筋はやや雑なためラドクリフと比べると腕は一段落ちる。


恋多き男で、島に幼馴染の婚約者エリザベス・ド・ラ・ズーシュがいるものの宮廷で侯爵令嬢エリザベス・グレイを口説き、さらにルイザ・リヴィングストンに一目惚れしてしまった。ただしド・ラ・ズーシュ家の縁戚であるモーリスの妨害に遭い、いまだ女性経験はない。島の基準ではかなり遅れており、このことを親に笑われないか気にしている。


ルイーズはジェラルドと二度遭遇しているが、一度は全身黒装束、二度目は火事の後の暗闇だったため、容姿に関するコメントは一切ない。ただし、ルイーズは触った感じではイケメンっぽいとコメントしている。

性格は見栄っ張りで熱くなりやすいが、根は優しく純粋。ランゴバルドを斬ろうとして躊躇するなど、優しさが足を引っ張るときもある。ワクワクすることが好きな少年らしさを持っており、ときどき自分に酔っているが、名族フィッツジェラルド家にふさわしい生き方をしようと日々精進している。


島出身者への差別や人質としての暮らしで曲がってしまっていたところを、天真爛漫としたアンソニーに救われたと感じており、アンソニーを救うのは自分の使命だと感じている。モーリスとはアンソニーを通じて打ち解けたが、皮肉を言われることには敏感である。人質仲間であるグリフィスとの仲は良好。一方で家格が下にもかかわらす命令してくるロバートのことは良く思っていない。古典語ができず、キャサリン妃周辺と疎遠なこともあり交友関係は比較的狭いが、尊敬するダドリー議長とは綿密に連絡をとり、魔女退治に協力している。


魔女ルクレツィア・ランゴバルドにアンソニーの『魂を奪われた』ことへの復讐のため、彼女を葬り去ろうと決心している。また魔女ルイーズ・レミントンはダドリー議長の司令通り、新大陸に追放しようと考えている。こうした仕事の進捗状況に関わらず、ルイザ・リヴィングストンにはプロポーズをするつもりでいる。一方、怪我の手当をされたとき、なぜか男のルイス・リディントンにドキッとしてしまい、少し慌てている様子。



アンソニー・ウィロビー・ド・ブローク


アーサー王太子の侍従。武の名門ウィロビー一族の出身で、兄や叔父たちが軍や政府の要職を占めている。父は先代元帥の故ラティマー卿。父が亡くなってから宮殿暮らしだが、親戚たちとの交流も続いている。家紋は赤字に金のマルタ十字。


父の晩年にできた末っ子で、年の離れた兄達や従兄弟達に可愛がられた。一方でウィロビー家は分割相続が慣例だったが、平和が続き末っ子のアンソニーには爵位や領地が残っていなかったため、アーサー王太子付の侍従として宮仕えをすることになった。領地獲得のために新大陸へ行くことを本気で考えたが、周りは反対している。健脚で俊敏なため、剣などを使わせてもそこそこの腕前。亡き父を理想としてトレーニングに励んでいる。


ジェラルドと同様アーサー王太子を崇拝しており、王太子周辺から遠ざけられたときは絶望し、復帰したときは大喜びだった。ウィロビー一門の名声に誇りを持ち、兄をはじめかわいがってくれる一族との交流に熱心だが、マージョリー・ヘイドンなど遠い親戚を全員把握しているわけではない。


鮮やかな金髪のくせっ毛で、青い大きな目をしている。小鼻がまるっこいところなど見た目は子犬を彷彿とするが、犬のように面長ではない。ルイーズいわく『中学生みたいな声』をしている。背丈はルイーズとほとんど変わらないが、ルイーズより一歳年下である。体は細めだが意外と鍛えられていて、しなやかないい筋肉をしているらしい。


性格はわがままだが素直。甘えん坊でときに傍若無人だが、あまり偏見がなく付き合いが広い。ルイーズには馬鹿だと思われており、『将来性なし』などと厳しいコメントをされているが、意外とボキャブラリーが豊富で稀に理知的な言動もする。


ルイーズからは軽く見られがちだが、ジェラルドからは親友、ロバートからは弟分として大事にされ、モーリスやグリフィスもアンソニーを大切な仲間と思っている様子がある。アーサー王太子も不在となったアンソニーの行方をとても気にしており、復帰した際は喜んでいる。ダドリー議長など親戚以外からも信用されている様子で、とにかく顔が広い。ただしメアリー王女周辺からは『子供っぽい』と見られている。


名門出身だけあって周りから丁重に扱われ、アーサー王太子の行進見学では『ああ』『うん』などとつぶやくだけで衛兵たちが便宜を図ってくれている。苦労しておらず夢見がちなところがあるが、ルイーズの見立てではちゃんとした教育をうければそこそこまともになる余地があるらしい。なおルイーズの下男であるフランク・アームストロングはもともとアンソニーの下男だったほか、クララ・リンゴットという女中もついていた。ルイーズに陥落した後は、シュールズベリー伯爵家のスタッフが入れ替わって世話をしている。


別名はパブロフ。初めてルイーズにマッサージをされた際に縛られたため、縛られるとマッサージをしてもらえると思いこんでいる模様。アーサー王太子やモーリスと違い、人前で脱ぐことに抵抗がない様子。ルイーズに捕まる前は童貞であることを気にしていたらしい。


ダドリー議長の命令で魔女ルイーズ・レミントン逮捕に出動したが、肩のトリガーポイントを押されて敗北。その後正座で痺れて絶望したあと、痺れを軽減するルイーズのマッサージに陥落してしまった。マッサージをされると独特の喘ぎ声をあげ顔も崩れがちで、ウィンスロー男爵いわく『哺乳類かどうかさえ怪しい』状態になる。


魔女に便宜を図ることで魔法をかけてもらう、という契約にサインし、契約通りルイーズの役に立とうと奔走している。ルイーズにはとてもなついている。ルイーズの本名と『ルイザ・リヴィングストン』『ルイス・リディントン』の偽名を知っているが、細かいことは特に気にしていない様子。


グリフィス・ライス


アーサー王太子の侍従。西の半島を治める豪族の長男で、『半島の征服者』を自称している。宮殿では人質としてアーサー王太子と一緒に育てられたが、同じような境遇のフィッツジェラルドと比べて態度が大きい。家紋は白地に黒の楔、三羽の紫のカラス。


アーサー王太子と最も距離が近く、侍従のなかで唯一人『アーサー』と呼び捨てにするほか、カジュアルな話しぶりが特徴的。王太子以外と話すときはさらに言葉遣いが荒くなるが、誰も咎める様子がない。また王族にしか許されないはずの紫のマントを羽織るなど、傍若無人に振る舞っている。優れた斧の使い手で、火事では活躍したが自分の手柄は一切アピールしていない。ロバート達と違いとくに出世は望んでおらず、自由に生きている様子。


アーサー王太子以外には一切敬意を払う様子がなく、キャサリン王太子妃やその侍女たちを軽蔑している。キャサリン妃のことを裏切り者呼ばわりしているが詳細は不明。またヘンリー王子も馬鹿にしている。


見た目はワイルドで、ルイーズいわく『顔に傷跡があったほうがむしろしっくりくる顔』。濃いダークブロンドの短めの髪はソフトモヒカンのようになっており、割と放っておいたような無精髭がある。グレーの目は眼光が鋭くギラギラして見える。眉がV字に近い配置となっていて、とにかく人相が悪く常に怒っているように見える。声は低い。


体格は大柄で、ヘンリー王子やブランドンほどではないものの存在感がある。高価そうで立派な服を着ているがなんとなく野暮ったい。風呂嫌いであり、ルイーズは体を引き寄せられた際に『最後にお風呂入ったのいつ!?』と叫んでいる。


性格は情熱家で直情的。アーサー王太子の将来を思い男泣きするなど、喜怒哀楽の振れ幅が大きい様子である。怒りっぽく喧嘩っ早いが、ルイーズの詭弁の細かい点に矛盾を見つけるなど、決して頭が悪いわけではない。医者や風呂など未知のものに対する警戒心や猜疑心は強く、医者だというだけでルーテシア・ラフォンテーヌを遠ざけようと嫌がらせをした。態度はいつも尊大である。


アーサー王太子から絶大な信頼を受けているほか、他の従者たちとの仲も悪くない様子。ただしロバートからは強さを認められているが、斧を振り回してやりすぎないか心配されている。もっとも、引きこもるアーサーの近くにいるからか、西棟から出ることは稀である。他の従者と比べて政府関係者との交流は限られている模様。


気に食わないルイーズに手を出そうとしたところ、返り討ちにあってあっけなく敗北した。足踏みマッサージを受けて何かの扉が開いてしまったようで、踏みつけられるためなら家畜になることもいとわないと言っている。ただし飼い主の意思を尊重するつもりはなく、家畜にしては態度が大きい。アーサー王太子の従者のなかで唯一、魔女騒動と一切関わりがない。


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