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XXIX 従者フランシス・ウッドワード

橋を渡り終わって、馬車は宮殿の塀に沿って進んでいた。松明を持って門を守っている衛兵さんをちらほら見かける。


「なんとなく状況はわかりましたけど、とりあえず二人分働く対価はいただけるんですか?」


お金がほしいわけじゃないけど、契約はしっかりしておかないとね。


「いや、小間使いは名誉職だと思ってほしい。宮廷付司祭トマスの専属小間使いとう設定だから、トマスが働きぶりに文句を言わない限り、一切仕事をしなくても問題ないよ。日中は王子の従者として頑張ってほしい。」


「わかりました。では何時に出勤して何時に部屋に戻ればいいんですか?」


仕事が面倒なわけじゃないけど、契約はしっかりしておかないとね。


「王子は朝が弱いからね、起きる時間もまちまちなところがある。他の従者と相談して分担してほしい。君は外出に付き添わないから、朝晩が主になるだろうし、ルイスの部屋で昼寝してくれても構わない。」


「相談っていうと、他の従者の人たちに話は通してあるんですよね?」


返事が返ってこない。


「男爵?まさか・・・」


「聞いてくれルイス、君の小間使いとしての名前もさっき決まったわけだから、当然君の設定もあやふやだったわけで、彼らに紹介できる状況では・・・」


「ちょっと!!!」


職場の人が事情を知らないなんて、マッサージするのはいよいよ大変。てっきり協力してくれるものと思っていたのに。


「だいたい設定があやふやだったのは男爵の準備不足のせいでしょう!!それくらいノリッジに迎えに来る前に決めておくのが当然でしょう!なんでこんなに仕事できないの!男爵のポンコツ!」


「ルイス、夜だから、声を抑えて!」


馬が鳴く声や犬の遠吠えが聞こえてきた。


「大丈夫だよ、私は国王陛下直属の侍従だが、しばらくの間ヘンリー王子を重点的に担当する許可をいただいている。君が困っていたら私が介入しよう。」


「その、もうちょっとだけ優秀な味方はいないんですか。」


男爵が苦笑しているのがわかる。


「私より優秀かどうかは別として、とても頼りになる味方はいるよ。しかも君のよく知っている人だ。」


「誰なの、って聞いてほしいんでしょうけど、勿体ぶらないで早く教えてください!」


王都にいるはずの兄さんかな。兄さんは頭がいいから従者なんかになってほしく無いけど。アンソニーでさえ務まる役職なんだし。


「面白く無い反応だね、ルイス。まあいいだろう。聞いて驚け、何を隠そう君の味方はこのフランシス・ウッドワード、ヘンリー王子の従者だ。」


男爵は大々的に紹介したけど、フランシス君は何も言わなかった。暗くて表情は見えない。


フランシス君は男爵の小姓だと思っていたけど、王子付の従者だったんだ。人柄がわかるほど交流がなかったけど、思ったよりすごい人なのかもしれない。


「ちょっと待っていてくれないか、ルイス。フランシスは大きな音が苦手なようでね。気を失ってないか確かめておかないと。」


頼りになる味方が登場したみたい。

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