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CCLXXXVI 証言者ジョン・ゲイジ


警告1 この章にはやや性的に示唆的な表現が含まれます。苦手な方はご留意ください。なおこの小説は「小説家になろう」のガイドラインを守っています。


警告2 チャールズ・ブランドン視点です。



薬で濡らされた布が、私の背の鞭の跡に当てられた。


「くっ・・・沁みる・・・」


「チャールズ様、お気を強くお持ちになって。でも苦痛に耐えるお顔から、色気が溢れ出ていますわ。」


さっきからアニーは『ほっ』とときどきため息を漏らしながら、私の傷跡を拭いてくれていた。物置のような暗く狭い部屋も、体温の高いアニーのせいか少し暖かい。


「すまないアニー、すぐにでも『お礼』をしたいところだが、今はハル王子に警告にいかねば。」


「あらあら、急いで『お礼』をされても興ざめですわ。今度ゆっくりといたしましょう。それで、警告とおっしゃるのは?」


アニーの銀の髪が肩にかかり、こそばゆく感じる。見てみれば、暗い中でも潤った唇が私を誘っている。北の国の連中がこれほど暗躍していなければ、そこにゲイジがいるのも構わずに一戦交えたかもしれないが。


「アニーには危害を及ぼさない話だ。危なくなったら直接伝える。だが北の国の連中には気をつけてほしい。」


アニーはあまり口が堅い方ではない。王子がリディントンに辱められ、私まで狙われている話はするべきではないだろう。


いずれにせよ、やつらが東の国に嫁ぐメアリー王女の周辺になにかしてくることはないはずだった。


「わかりました。ではわたくしは北棟に戻りますわ。」


「窮地を助けてもらい、恩に着る。礼はまた今度。」


アニーの頬にキスを落とすと返してきたので、私達はしばらくお互いを貪った。


「・・・ん・・・ぷはっ・・・チャールズ様・・・んむっ・・・」


「・・・ふう、今夜はここまでにしておこう、アニー。ゲイジ、ハル王子のところに向かうぞ。」


「・・・その格好で?・・・」


薬を塗るため裸になっていたが、私が身にまとっていたのは鞭によって引き裂かれたレース生地一枚だった。どう見ても異常だ。


いや、異常事態なのだが。


「ゲイジの服を借りても小さすぎるだろうな。マントを貸してくれ。」


「・・・直接羽織るの?・・・」


ゲイジは無表情だが、付き合いが長いとなんとなく嫌がっているのは分かるようになる。喜んでいるところは一度も見たことがないが。


「それでしたら私のマントをどうぞ。」


まだ息の荒いアニーがマントを渡してくる。


「助かるが、寒くないのか。」


「ふふ、チャールズ様に温めていただきましたから。北棟は遠くありませんわ。」


暗い部屋で、艶めかしい表情を見せられるとまた温めてやりたくなったが、いつまでも延期し続けるわけにはいかないだろう。


「助かる。明後日は安息日だったな。明日の晩は激しくしてもいいだろうな。」


「ふふ、楽しみですわ。それまでご達者で。」


もう一度額にキスを落とすと、私はゲイジを引き連れて、すぐ近くの東棟の門に向かった。


「ところでゲイジ、遠くから誰かに見られているような感覚はなかったか?」


「・・・あった・・・」


やはりか、普段の情事であれば見せつけてやってもいいが、今日の私は傷の手当をされていた。あまり誇れない姿だ。


「北の連中が私を監視しているのかもしれないな。今回は幸いリディントンの毒牙からは逃れたが・・・ゲイジ、変なことを聞くが、今までリディントンに襲われたりしていないか?」


ゲイジは襲われているかどうかの見分けがつかなそうだった。


「・・・いや、まだ・・・」


まだ、だと?


「まだ、ということは、王子に起きたことを知っているのか。」


「・・・うまのりに・・・」


なんということだ。


王子が恥辱にまみれたことを知っているのは、私とリディントン達だけではなかったようだ。


「馬乗りだったのか。いや詳細は知らなかったが。しかし、どうして知った?」


「・・・リディントンが言っていた・・・プリンスに跨って・・・体を突き上げられたって・・・」


馬鹿なのか、リディントンは。王子も乗り気だったとアピールしたかったのかもしれないが、跨った時点で終わりだ。


だがゲイジの描写は私が聞いていた声と合致しないが、王子に花を持たせようとしたのだろうか。わざとだとしたら解せない。


「いずれにしろ、まさかそんな身を滅ぼす自慢をしていたとはな。その場面は想像したくないが、犯罪を誇らしげに自白するとは、とんだ愚か者だ。他になにか言っていなかったか。」


「・・・あとはスタンリー卿がどうとか・・・」


やはりスタンリー卿か。


ウィンスロー男爵、スタンリー卿、リディントンが悪の枢軸となって北の国につながっているようだが、リディントン本人がこうしてベラベラ秘密を漏らしているなら、強大なダービー伯爵家にも立ち向かいやすい。


しかしこれほど証拠を残してしまうとは、巧妙な花園計画など幻で、リディントンはやはり体格のいい男に欲情するだけの変態なのではないだろうか。


いずれにしても、ゲイジが無事なのは希望が持てる。こいつの証言があればリディントンをヘンリー王子付から外せるのではないだろうか。


私は意気揚々と東棟に入った。



参考:

CLXXVIII 容疑者ルイス・リディントン 

CLXXXI 牡馬プリンス


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