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CLXXVII 歩行者ルイーズ・レミントン

私は宮殿までの一本道をとことこと歩いていた。まだ余裕はある。


もう一時間くらい歩いたかな。疲れてはいないけど、ここにきて乗馬したときによくある内股の筋肉痛が始まって、時折足をとんとんと叩きながら歩く。


森は薄暗くて見晴らしが良くないから、日が暮れかけてきたら近づかないようにと言われていたけど、ここは王領地で門番もいるし、街道もまっすぐで見通しがいいから、あんまり不安にはならない。


もちろん、さっきから木々の陰が長くなっているし、ちょっと風も冷たいかなと思うけど、トマスが散々バカにしたこのフランシス君の紺の上下は意外と温かくて、このまま散歩気分で宮殿まで帰れそうだった。


うしろの遠方から馬の音がした。ちらと振り返ると、王室の馬車ではないみたい。遠くで2頭立ての馬車と人を乗せた馬が一頭闊歩している。


こんな辺鄙な場所を従者が一人で歩いていても不自然かもしれないし、何か聞かれても面倒だから、居留守を使おうかしら。通り過ぎるまで近くの木の陰に隠れることにする。


馬車はあんまりスピードがでていなくて、私は思ったより長く待つことになった。よく見ると黒い幌馬車みたい年代物で、キシキシと音を立てながら走っていく。馬に乗った人は私からみて馬車の反対側を並走していたから、顔はよく見えない。


でもあの白い馬、あのサイズ、プリンスみたいに見える。


幌馬車の中は暗くて誰がのっているのかわからないけど、トマスがこの馬車でスタンリー卿と馬を回収したのかしら。でも宮廷の馬車にしてもニーヴェット家の馬車にしてもぼろぼろすぎる。


まさかさらわれた?でもこの道は宮殿に通じているし、仮にトマス以外の人がさきにスタンリー卿を救出したとしても、宮殿で事情を聞かれるはず。身代金みたいな話になったりしないよね。


すこしヒヤヒヤしていると、今度は見たことのある王室の馬車が通った。こちらの方がスピードが速いから、前に追いつきつつあるみたい。中が少し見えて、さっきまで愛し合っていた王子とブランドンは対角線上にいた。コンプトン先輩とトマスが隙間を埋めている。馬車はぎゅうぎゅう詰めで、仮に私が乗せてもらおうとしても入れるスペースがなさそう。王子に膝の上に乗っけられたりしそうでちょっとだけ怖い。


考えてみると、王子のタイプはノリスくんみたいな可憐な男の子ではなくて、ブランドンみたいな熊男だったわけだけど、そうなるとトマスは無事でいられるかしら。少し気になってしまう。


トマスの表情はよく見えなかったけど、そんなに慌てているようには見えなかったし、さっきのボロボロの馬車とプリンスはこの馬車から見える位置を走っているから、スタンリー卿事件は結局そんなに大きな問題にはならないと思う。


さてと、王子一行よりもスタンリー卿よりも宮殿への到着が遅れちゃったけど、私としては確実な選択肢を選んだわけだからあんまり後悔はない。


宮殿まで私は歩をすすめることにした。


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