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CLX 追及者トマス・スタンリー卿

「CXLVI 司祭トマス・ウォーズィー」以降、読みづらかった数話を改訂しました。あとほんの少しだけシリアスな展開が続きますが、よろしければ今しばらくお付き合いください。






小綺麗な待合室を、しばらく気まずい沈黙が包んでいた。


スタンリー卿はまだゴードンさんと睨みあっているみたい。私はスタンリー卿の言っていたことを考えようとしたけれど、頭が金縛りにあったみたいに働かなくて、ただ不穏な空気を感じていただけだった。


廊下の方からカッカッと誰かが早歩きで近づく音がした。誰でもいいからこの沈黙を打開してほしい。メイドでも護衛でも誰でもいいから、入ってきてくれないかしら。


ドアがギイと音を立てた。ふっと顔を上げてみる。


黒服の男爵が立っていた。




このタイミングで、さらに状況が悪化させそうなのがきたわね。




急いで来たのか少し髪が乱れている。ぴっちり整ったオールバックよりも似合うかもしれない。いつもの薄笑いが消えていて、彫りの深い顔の、前髪の合間から真剣な目がのぞいていた。


髪も表情も普段の少し人工的な部分がなくなって、少しドキッとするワイルドな魅力がある。肌は相変わらず綺麗なんだけど。


「探したよルイス、そしてスタンリー。無事でいてくれて何よりだよ。」


状況的に平和な挨拶ができる雰囲気でないのは分かっていると思うけど、男爵はいつものペースを崩さなかった。目は笑っていないけど。


「ウィンスロー、恩を仇で返すとはまさにこのことだな。」


怒気を含んだスタンリー卿の声が響く。目付きがまだ怖い。あと肌はやっぱり男爵の方が綺麗ね。


「ダービー伯爵家への恩義、裏切った覚えはないよ。私としてもこれはルイスの、いやルイーズのためにもなると信じているよ。君の家に不利になることも一切ないはずだね。」


裏切りってなんだかわからないけど、私が関わっているのかしら。


なんだか物騒な話題だけれども、二人とも取っ組み合いはしそうになかった。スタンリー卿は不機嫌っぽさを隠そうとしないけど。


「ルイスが誰だか知らないが、ルイーズを気安く呼ばないでもらえるか。そしてルイーズの幸せはわが一族の最たる願いだ。それを踏みにじる輩は何人たりとも許さぬ。」


スタンリー卿は私を覆い隠すように、私と男爵の間に移動した。


お母様のストレンジ女男爵とは交流があったけど、お爺さまのダービー伯爵には数回お会いしただけだから、スタンリー卿の一存で決めてもいいのかしら。スタンリー卿自身は私が結婚するのが幸せだと思っている部分があるから若干迷惑をかけられたけど。


「ねえ、スタンリー卿、気持ちは嬉しいのだけど、そもそも裏切りとか私の幸せってどういうこと?」


スタンリー卿は軽く私を振り返ると、私を安心させるように少し目元を緩ませて、また厳しい表情に戻って男爵を睨んだ。


「ウィンスロー、お前は裁判をノリッジに移動させた上で、前もって野次を指示された群衆を入れてルイーズを辱めた。全ては裁判途中でルイーズがお前の提案を受けざるを得ないように、ひいてはルイーズがノリッジに残りづらいようにするための印象操作だ。違うか?」


スタンリー卿はベテランの弁護士のように罪状を並べ立てた。



今、なんて?






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