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もふもふの血が出た

作者: しーさん

5時。まだすこし暗い空を見る。扇風機をつけて、ぬいぐるみを抱いて、ぼうっとする。今日は定期テストの日だ。いやだなあ、数学。…「あっ」あたしは、まだ終わっていない提出物、数学のプリントのことを思い出した。ああ、やらなきゃ。数学の伊藤先生はねちっこく怒ってくるから。鬱々とした気持ちに冒されつつ、ブタのぬいぐるみを放り投げて、ベッドから降りた。「うっ!?」瞬間、何かにぶつかったような衝撃。あたしが立っているところには何もない。「気のせいかな」ずきずき痛む左腕。あたしの声と、ぶおおん、扇風機の生きる音。


二次関数、理解できない。「終わったなあ。お母さんごめん」

あたしは付属していた答えを見まくり、コピーと丸付けを同時に行っていた。『答えを見てやるんじゃ、自分の力にはなりません』これだからあたしは伊藤先生が嫌いなのだ。でも、きっとみんなは賢いから、こんなの一週間前には片付けたんだろう。もうその時点であたしが”終わった”ことは決定していたんだ。もう、貯金全部はたいて海がきれいなところに逃げたい。それで死ぬ。どうせ、あたしは自称うつ病の、数学0点JKだ。「終わってるなあ。お父さんごめん」


「で、できたあ…」

意味不明な問56に嘘の丸をつけて、あたしは項垂れた。(大体こんなのやったってわからない奴にはわからないんだよ)8枚もあるプリントの束をまとめながら思う。引き出しからホッチキスを取り出す。プリントの表紙に、『ホッチキスで止められていないものは受け付けません』なんて、でかでかと書いてある。うざい。あたしはホッチキスを見た。コンパクトでかわいいんだけど、買ったばかりなので使い方はよく分からない。小さく身体を折っているそれを開いて、じっくり見てみる。「あ、なるほどね」右端のスイッチをスライドすれば切り替わるわけだ。

「いっった!!!!」ミスった。人差し指に針が刺さった。思わず血が出てないか確認する。


すると、あたしの指からはもふもふの血があふれていた。

正確には、血の色をした綿らしきものが、傷ついたはずのあたしの身体から、痛みを伴って這い出てきたのだ。二次関数よりも意味がわからない。「もーいや!」馬鹿のあたしは理解できなくて、ベッドに倒れこむ。ブタのぬいぐるみを抱いて、ふわふわの毛並みを撫でた。ふいに手に何か触れる。

見ると、ブタのひづめからはさらさらの血があふれていた。



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