7章30話(ハーレム編_クリスマスパーティ) 久しぶりの
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「ほら、アリア。このポスターはどうだった? イケてただろう? いい顔しているしな」
「ちょっとやめてよ和人君。恥ずかしいわ…」
「そうか? お前の魅力が一番出ている写真を選んで作ったんだが…」
「そう言ってくれると嬉しいけれど…。この写真、私と和人君だけの秘密って前約束したわ!」
「あはは。冗談だよ。これは没案。誰がこんな役得な写真、他のやつらに見せるかよ」
「もうっ! …うふふ」
俺とアリアは確実に距離を詰めていった。
二人の作業が増えるにつれて、こうなることは予想ができていたのだ。いや、こうなることをのぞんでいたのだ。
支援者たちはたくさん作った。俺や華の伝手を中心に、そして春香と海の交友関係から募った。
多くの人間が集まった。だが、それでも俺とアリアを中心に活動していった。
俺が活動方針を検討する。その後、アリアに許可をもらい、メンバーたちに俺が動くよう連絡する。その流れだった。
だが、こういったポスター作り等の重要となる作業は俺がすべてやっていた。
この作業、そしてこいつとかかわること自体が面倒だが、『重要』なことだった。
「でも、ごめんなさいね。全部和人君に任せるみたいになっていて……」
「だから何度も言っただろう。気にするなって。俺はお前の力になりたいんだよ。」
「和人君…」
「お前は重要なイベントだけ、そうだな、生徒たちの前に立つイベントだけ気にしていてくれ。雑務は俺がやる。期待しているぞ、未来の生徒会長」
「うんっ! ありがとう和人君」
二人でまた手を重ねあう。それはもう慣れたことだった。
その様子を見ていた奴がいる。そう、華だ。
「……あんたたち、私が目の前にいること忘れていない? 何イチャイチャしているのよ」
「べ、別にイチャイチャなんて…」
「ふーん、そうなんだ…。」
焦るアリア。そしてジト目を俺に向ける華。
俺は頭を掻きながら答える。
「はぁ…。しょうがないだろう。俺とアリアは二人での作業が多い。こうして冗談も言い合う仲にでもなるだろうが」
「……別にあんたたちが急に距離を詰めて、こうしてイチャイチャしてることなんて、別にどうでもいいんだからっ」
「そっぽを向くな。後、安いツンデレの言葉を吐くな。」
「誰がツンデレか!」
これは、ちょっとご機嫌取りが必要だな。
「はぁ……。アリア。今日はもう終わりでいいか?」
「え、ええ…」
「じゃあ今日は解散にするか。華、ちょっと帰り道付き合え。」
「あー、ちょっと待ちなさいよ!」
今まで話していたのは喫茶店だった。
会計を3人分済ませ、華の手を引きながら店を出る。
目指したのはまず雑貨屋だった。
「ほら、何か欲しいもの言えよ。それで機嫌なおせ」
「物で釣るな!」
「わかった。じゃあジュース買ってやるからそれでどうだ?」
「だから物で釣らないの!」
華の求めているもの、不満はわかっていた。それが物で解決することができれば一番楽だった。
…だめな友人だな俺は。すぐに楽な方法に逃げようとする。
「はぁ…。華、わかってくれ。今は忙しいんだ。アリアの選挙もある。」
「べ、別にわかっているわよそれくらい…」
「もうすぐ終わる。後はアリアが演説するだけだ。」
「うん…」
「まだ何か不満があるのか? 今度二人で遊びにいく時間を作る。それでもだめか?」
「……」
「言ってくれないと、言葉にしてくれないわからない。不満があるなら正直に言ってくれ。直すよう努力する。」
「…じゃあ。」
華が俺の制服の袖を握り、俯く。
「……だって、あんたたち、急に仲良くなったりするから」
「俺とアリアが仲良くなるの、お前は嫌か?」
「……別にそういうわけじゃない。和人、今までアリアに距離とってたの、感じてた。それが解消されたのは友達として嬉しいわ。でも…」
「でも?」
「……あんたたち、急にあんなに仲良くなるなんて思わなかった。私、なんか置き去りにされたようで…。」
「……」
「……それに、和人が私から離れていっているようで、なんかやだっ」
そういって華は俺の胸に軽くパンチしていた。力弱く、腰も入れないパンチ。それが俺の心に罪悪感を作った。
「……華。いつものところに行くぞ」
「えっ…?」
そうしてやってきたのは、いつもの公園。
そう、華の家の前にある公園だ。
ベンチにお互い座る。
「ほら、ココアでいいだろう華?」
「うん…」
飲み物を買ってきて、ベンチに座っていた華の横に座る。
静寂が訪れた。
だが、それは苦じゃなかった。久しぶりの心地よい時間だった。
「華」
「……何よっ」
「やっぱり、お前と居る時間が一番安心できるわ」
「…ふんっ。他の女の子にも言ってるんでしょっ」
「言ってねぇよ。……少し疲れた。膝貸してくれ」
「ちょっとっ! ……もうっ。わかったわよ」
半ば無理やり、俺の頭を華の膝の上に。
別にこの行為は特別なことではなかった。たまにこうして二人の間でやっていた。
また少し、静寂な時間が訪れた。
「こうして二人でゆっくり膝枕するの、久しぶりだな。」
「そうね…。」
膝枕して、俺は空をぼーっと見上げる。
しばらくすると、そんな俺に華は頭を撫でてくれた。
「ねぇ、あんた少し瘦せた?」
「あー、そう見えるか?」
「そんなにきついの、選挙活動?」
「別に…。…問題なく処理できる量だ」
「じゃあ何で疲れてんのよ?」
「…ぶっちゃけていいか?」
「ええ。」
「正直、まだアリアと話すのは、……きつい」
「…はぁ。そうだと思った。」
「うん? わかってたのか?」
「急に距離が近くなったなって思ってた。でも、ここまで歩いて冷静になって思い返してみると、やっぱりあんた無理に笑っているように見えたなって。でも、それ気づくの遅れて何か悔しいなって思ってた」
「あはは、なんだそれ」
「はぁ…私もまだ表面的なことしか見えてなかったわねぇ」
「そんなことないと思うぞ?」
「現にそうじゃない。あんた、やっぱり何か無理してたのね?」
「ああ、そろそろ距離を詰めなきゃなって。俺から歩み寄る姿勢を見せないとって思ってな」
「何で急にそう思ったのよ?」
「秘密だ」
「どうしても?」
「どうしても、だ」
「わかったわよ…。アリアと、昔何かあったの?」
「それも秘密だ」
「はいはい。…って、あんたが先にアリアと仲良くなりたいって言ってなかったっけ? 思い返してみると」
「あー、今は思い出すな。それも秘密だ」
「秘密秘密って、……わかったわよ。しょうがないわねぇ」
また、少し静かな時が経った。
「寒くなったな。そろそろ行くか」
「ええ、そうね」
「今日はお前の家で飯食べていいか?」
「いいわよ。弟たちも歓迎するわ。ほら、夕食の材料買いに行きましょう」
「ああ。」
………
……
…