7章23話(ハーレム編_林間学校) 月が綺麗
遅くなり申し訳ありません。再開します。
※誤字報告ありがとうございました。
横たわる海に膝枕しながら、教員たちの助けが来るのを待つ。
これまでの時間軸で、一応医学的な知識は少しだけかじったことがある。暇つぶしと、海に知識を蓄えてもらうためにだ。
それが今、こうして役立った。無事のように見えるだが、念のため近くの医者にも見せたいと思っているが…命の危険はなさそうに見える。
「海、……すまない。本当にすまない。」
眠った直後の海に謝る。
本当に、本当に予期していなかった事態だったのだ。
海が湖に落ちるなんて、今日の予定の中で考えてもいなかった。
ただ、今日は海のために時間を使おうと考えていただけだったのだ。
……誰が、誰がそんな悪辣な手を考えるか!
海は、大事な人なんだ!
そんな彼女を命の危険にさらすことなど、するわけがないだろうが!!!
何故、こうも都合が悪いことが起きる…?
海に思い出してもらった矢先に、こんな事態になるとは……。
――――――――――――――――――――――あぁ。……そういうことか!!!
「春香!!!!」
「は、はい!」
憎しみを籠らせ、春香をにらみつける。
お前が、お前がやったのか!!!!
こうも、『都合が良い』こと、起こるわけがないだろうが!
少し離れた位置にいる春香の方を見る。教師への電話も終わったころだ。
ほくそ笑んでいるであろう、あいつを睨めつけようとしていた。
「いい度胸しているな。俺をそこまで怒らせたいのか………あ? お前が……、お前が!!!」
「和人先輩……?」
春香の様子を見るために振り返る。
すると、予想外のことが目にはいる。
「お前、足を怪我しているのか?」
「はい…、少し足をくじいてしまって…」
足を引き摺りながら、こちらに向かってくる春香を見てしまった。
「大丈夫か? いつケガした?」
「はい、ジュースを買いに行くときに、転んでしまって…。」
「見せてみろ。…腫れているな。ほら、俺の背中に。海が寝ている近くにベンチがあるから、そこに座ろう」
「あっはい。ありがとうございます。」
春香をおぶさり、海の近くまで連れていった。
ベンチに座る春香。俺は海に膝枕しなおした。
そして、頭をかかえる。
海には、こんな目にあってほしくなかった。
だって、そうだろうが…。
「嫌いになれるわけ、ないじゃないか……。」
「先輩…?」
「……すまん。口に出てたか。関係ない。忘れろ」
「先生たちを電話で呼びました。すぐに来てくれるそうです。救急車も呼んでくれるって。」
「そうか…。」
…ダメだ。どうしてもネガティブな考えが頭を支配してしまう。
「春香…、海は大事か?」
「……はい。そうですよ。当たり前ないですか。何で、そんなこと聞いたんですか?」
怒りが少し、戸惑いと、疑惑が少し。そんな感情を感じた。
「俺も大事だ。大事な…人なんだ。」
「…海ちゃんが好きなんですか?」
「……ああ。お前と同じくらい大事だ。どうでもいいわけないじゃないか…。だから、海にはこんな目に合わせたくなかったし、お前にも、怪我してほしくなかった。」
「…先輩、泣いているんですか…?」
「……すまん。情けない姿を見せた。少し待て。持ち直す。」
「気にすることないですよ。……心配してくれて嬉しいです。」
「当たり前だろうが。心配する。心配しないわけないじゃないか。」
「どうしてですか?」
「どうして、だと?」
春香を見る。真面目な顔だった。
「あはは、すみません。聞き方が悪かったですね。だって、普通の後輩だったら、そんな泣いてくれるまで心配しないなって思いましたので…。」
「認めるよ、俺はお前らを普通の後輩以上の感情を抱いている。」
「ありがとうございます。嬉しいです。それって、好きってことですか?」
「…今はその話題はやめてくれないか? その話をする状況じゃないし、何より気分でもない。」
「…ごめんなさい。」
「……ただ、言えることは」
「…はい?」
「お前たちに、悪いと思っている。こんな苦しい思いをさせて悪いと思っている。悲しい思いをさせて、悪いと思っている。俺の、俺のせいなんだ…。全部俺が悪いんだ。」
「何をいってるんですか…? 私、そんな和人先輩に悪いことされたことなんてないですよ…」
「……」
「和人先輩……」
「…救急車の音がするな。話はここまでだ」
「はいっ」
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「どこだろ、ここ……」
白い天井があった。
目線を少し変えると、医療用の器具があった。どうやらここは病院のようだ。
また目線を変える。そこには彼がいた。
「和人、君……」
寝ている彼。
その彼の頬に手を伸ばした。
前は、そう過去は彼に触れるのに許可が必要だった記憶がある。
今は、……ないと思う。
「……あ? あぁ…寝てたか。……って海?! 大丈夫か? 具合悪くないか?」
「はい……。大丈夫です。あれからどうなったんですか?」
「病院に運ばれたんだよ。身体検査のために。」
「どうして和人君が、ここにいるんです? まだ林間学校中だったんじゃ?」
「黙ってきた。俺の責任だからな。教師に一応行きたい旨を伝えたが、許可の話し合いが長引きそうだった。お前のところに一秒でも早く行きたかったからな。」
「ありがとうございます…。でも、和人君のせいじゃありませんよ。」
「いや、俺のせいだ。後輩の面倒を見るのが先輩の役割だ。お前をこんな目に合わせるなんて、俺のミス以外ありえない」
「……でも」
「……すまない。今はこの話はやめよう。お前の体調を回復させるのが今は大事だ。」
「はい。」
少し、静寂な時間が続いた。
少し、その時間がいたたまれなくて、窓から見える景色を見てみた。
「……星、きれいです」
「……そうだな」
「あなたにとって、どうでもいいかもしれませんが……」
「何がだ……?」
「あなたの涙を、信じたい…。だけど、もう信じること……辛いのです」
「……」
「……でも、嬉しかった。助けてくれたことが嬉しかった。あなたの腕の中が、心地よかっのたです……」
「……っ」
「……今、この時間は。この時間で言えることは」
「ああ……」
星の中で一つ、特に輝いているのは。
「……月が、綺麗ですね」