7章20話(ハーレム編_林間学校) ちゃんとお前との時間は作るから
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俺らの学校の林間学校の中日は、一応オリエンテーリングというものをやることになっている。
オリエンテーリングといっても、そう大層な者じゃない。この宿舎の隣にある小さな山に、軽く登山するだけだ。
登山と言ってもそれほど時間がかかるわけじゃなく、この宿舎から往復で数時間もすれば完了する。そして、宿舎の帰ってからの余った時間は宿舎で自由時間が許されている。
余った時間は、夜にあるキャンプファイアーまで、友人と駄弁るやつもいるし、昼寝するやつもいる。
自由な校風というやつだ。
それに、登山自体は、個人の自由での登山が許されている。山頂にあるスタンプを取得すれば、完了する。途中経路は問われていない。途中に湖があるが、そこで休んでもよし、まっすぐ登るもよしだ。
……適当過ぎないか、この学校。まあ、自由とは良いものだと結論付けよう。
この宿舎に大きな食堂があり、今俺は朝食している。今日の予定を頭の中でおさらいしていたところだ。
「で、あんた今日どうするの?」
目の前に座り、話し始めたのは華だ。
朝食はバイキングであるが、ほぼ俺と同じ構成である。それは華が俺の分をセレクトしてくれたから。栄養バランスを考えてくれたらしい。そのうえで、俺は自分の好きな卵焼き等の量を上乗せしたが。
朝飯を華と食べることは、この機会以外にも結構な頻度である。華が俺の家に来て、作ってくれるからだ。
だから、まあそれが同級生にばれて、押しかけ女房と弄られる時もあるが。
「どうするって、普通に登山する予定だ」
「またサボるんじゃないかって聞いているの」
「ああ、そういうことか。まあ、それも考えたが、普通に謳歌するさ」
「本当でしょうね…? まあ、いいわ。それなら一緒に登りましょうか。あんた分のドリンクも購入済みよ。後はそうね、お菓子も一応買っているわ。だから途中でコンビニとかによる必要もないわよ」
「用意がいいな。ありがとうな、そんなに俺に気を遣ってくれて」
「別にあんたのために用意したわけじゃないわよ! あんたがサボらないためよ!」
「だからテンプレなツンデレはやめろ…」
「ツンデレじゃないわよ! ああ、もう朝から何やっているのよ……。で、何時ごろ出発する? 一応、出発時間は各自自由だし、私は一時間後に出れるけど」
「ああー、……悪い」
「え?」
俺と華はいつも一緒に行動をしていた。朝飯も、登校も、昼飯も、下校も、休みの日も。ずっと、ずっとだ。
「実は予定がある。他の奴と登る予定があるんだ」
「えっ…うそ?」
「いや、本当だ。悪いな、報告が遅れた」
だから、ここで違う行動をとるのは、華も予想していなかったのだろう。
「……ちなみに、それって誰とよ」
「お前も知っているやつだよ」
「……女の子?」
「まあ、そうだが……。ただの後輩だよ」
「ふーん、……そう。じゃあ、好きにしなさいよ」
「……悪い」
「べ、別に気にすることないわよ……。」
一気に空気が重くなるのがわかる。
そうだよな、…華は、わざわざ俺のためにこうやって準備してくれて、そして時間を作ってたのにな。申し訳ないことをした。
どんなに仲が良い『友人』でも、そうやって雑な扱いを受けたら怒るよな。
俺の友人経験の浅さがこれを招いた。反省しなければならない。
「なあ、華。」
「…何よ」
「反省している。こういったら言い訳になるが、俺にとってお前はどうでもいい人間じゃない。大切な人、なんだ」
「な、何よいきなり…。」
華の手を握る。彼女の顔が赤くなった。
「嘘じゃない。いつも感謝している。お前のおかげで楽しく過ごせているから。そんなお前を蔑ろにしてしまって、本当に後悔している。」
「ちょっと、恥ずかしいわよ…。」
「この林間学校の後、一緒に遊びに行かせてくれ。そうだな、お前たちがよければ、弟君たちも呼んで遊園地なんてどうだ? 前行きたがってだろう、お前も、弟君たちも」
「う、うん…」
「お前が欲しかった服も買わせてくれ。この間、二人でウインドウショッピングしただろう? その時、欲しそうだったじゃないか。……ごめんな、物でしかお前に謝る方法が思い浮かばない俺を許してくれ。」
「………………………………その時ずっと手をつないでくれなきゃ、やだ」
「あ、ああ。わかった。そうさせてくれ」
そっぽ向きながらそう話す彼女。どうやら許してくれそうだ。
「あと、林間学校が終わったら、まっすぐ和人の部屋に行きたい。ずっと頭撫でて」
「わかった。それぐらいなら」
…ん?
「そしてその日、私の家に来なさい。泊っていきなさい。なんでもリクエストしてくれて構わないわ。あの子たちも、あんたに会いたいって言ってるから」
「お、おう…」
「その日は確か、…あ、そうか、ママもいなかったわ。せっかく和人のこと興味湧いてるから、会わせたかったけど…」
俺に何をさせようというんだ? 話が発展しすぎじゃないか…?
さすがに止めに入るか。
「それと和人、「わかった! まずはそれで許してくれないか? 今後はちゃんとお前のやりたいこと、いっぱいやろう。ああ、早く林間学校終わってくれるといいな」 そ、そうね。」
何か周囲を固められている気がしたが、スルーしよう。深く考えない方がいいことだ、これは。
「華、今からその後輩と待ち合わせだから、そろそろ行く。お前のこと、忘れていないからな。何かあったら電話でもしてくれ。すぐに駆けつけるから」
「ええ、わかったわ。ありがとう。ちゃんとエスコートしてきなさいよ!」
背中をバシッとたたかれる。心地よい痛みだった。
「それじゃあ…、またな。お前のためなら、本当にすぐに駆け付けるからな!」
「はいはい。……ずるいのよ、王子様みたいにして」
一旦自室に向かい、道具を取りに行く。
待ち合わせ場所に向かう。
そこには、すでに彼女がいた。
「和人く、…和人先輩! こっちです!」「あー! 和人先輩! 早くいきましょうよ!」
海と、春香だ。




