表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
そうだ、女の子を壊してヤンデレにしよう(旧題:そして俺は彼女達を堕とす)  作者: pawa
7章 花の笑顔。そして、俺は彼女を壊した。
81/106

7章16話(ハーレム編_林間学校) 主要人物は集まっていく

「よーし! 張り切ってみんな作りましょー!」


「「「おー!」」」


華の声に皆が声を上げる。

もはや林間学校の恒例だろう、カレー作りの時間になった。

この会場に、学校の全員が来るのはもう夕方に差し迫っていた頃。夕食の準備にはうってつけの時間だった。


俺たちのクラスの中で班分けをしてカレーを作ることになるが、その班分けのメンバーは勿論華と一緒だった。


華はクラスでも中心の人物となっていた。

元から素材はトップクラスにいいのだ。あの海たちにも見劣りしない。

それに俺との交流からか表情の豊かさが生まれた。

化粧もし、おしゃれにも気を遣うようになった。


それに加え、この性格。面倒見の良さ。さっぱりとした性格。クラスの誰もが彼女を認めた。


「華ちゃん、今日の晩御飯の隠し味は?」


クラスの女の子の一人が華に質問する。


「え? そうね、あまり考えていなかったけど……」


「違うでしょー。旦那さんへの愛情でしょー?」


「え? は? えぇぇ! ち、違うわよ! 私と和人は付き合ってないわよ!」


「誰も和人君とは言ってないよー!」


「う、うぅぅぅ!」


「「「あはは!」」」


春香とは違った方向での、クラスへの溶け込み方。

あの時の春香は、クラスから尊敬を集めていた。誰もが彼女を頼り、彼女に反抗もしなかった。春香がそれを許さなかった。

何故それを俺がわかるのかって?


だってそれは……。


『和人、あなたは何故他人を気遣うの? 私が付いているのよ? 胸を張って、相手を跪かせなさい』


姉の一端を、見ているように感じたからだ。

姉さんは、他人を見下している。

だが、相手はそれでも姉さんに反抗しない。

『姉さん』、だからだ。


……姉さんは今関係ないか。

言いたかったのは、姉さんと同じ目を、春香に感じたからだ。


だが、華は違う。

姉さんと春香ならば、相手の反抗を許さない。そもそも、プライドが高いものからみたら舐められるような「弄り」を許さない。

華は周囲に愛されているのだ。弄られている? それがどうしたというのだ? クラスのみんなが、華を慕い集まってくる。華の笑顔は絶えたことがない。支配というより、ただ華が好きでみんなが集まってくるのだ。そもそも、舐められているから弄られるという姉さんの理論がわからない。


これを、人柄というのだろう。これが人気というのだろう。


その人気は、華に当然のように、本来は初めから備わっていたものだ。

俺と華が出会う前の世界、そう、聖と仲良くなった前の世界では、俺がいなくても周囲からの信頼を集めていた。


俺とは違い、その人柄は周りを幸せにする。周りを豊かにする。居なくてはいけない人間。俺とは、根本的に違うのだ。俺など、他者に不幸しか与えない。



そうだ、俺など初めからこの世界に……。



「和人君? どうしたの?そんな暗い顔して…。」


俺は華たちと少し離れて俯いて座っていた。そんな俺に誰かが話かけてきた。

顔を上げる。その顔は…。


「アリア、か……」


「ええ。どうしたの、そんな暗い顔して……。」


アリア。

前の世界での、分岐点となった女。

俺の認めたくなかった部分を、的確に指摘した少女。


金色の髪が美しいと、初めて見た時から思っていた。今顔を上げると、それが目の前にある。だが、『あの子』を思い出すから、本当は見たくはなかった。


…しかし。


「ああ、なんでもないよ。ちょっと考え事をしていただけだ。」


「そう。何か悩んでいるのなら、遠慮なく相談してね?」


「ありがとう。その時は相談させてもらうよ」


にこやかに答える俺だった。

こいつとは、去年、球技大会後に出会った。どうやら球技大会に転校してきたらしい。外国からこの国に転校してきたのだ。


右も左も、そして文化もあまりわかっていなかった彼女(※なぜかこの国の言語は堪能だったが)。社交的な俺を演じ、優しくこいつとの接触を図っていった。


何のためだって?

わかりきっていることだろう。

目標のためだ。そのために、こいつを十分にまた知る必要があるし、交流ももっておかなければならない。一定の好感度が必要なのだ。

そうでもなければ、誰が好き好んでこいつと……。


……いや、感情を殺せ。笑顔を作れ。


「どうだ? もう慣れたか?」


「学校にってこと? ふふ、あまり和人君と入学時期も変わらないじゃない」


俺の横に座ってくるアリア。女性特有の甘い香りがする。それほど距離が近い。


「確かにな。転校してきたのがついこの間だと感じていたよ。月日が経つのは早いな。」


「ええ、そうね。でも、思い返すといろいろなことがあったわね…。私が困っているときに、助けてくれてありがとう、和人君。」


深い話はまた次の機会に話そう。


「気にするな。俺も役得だったさ。美人に頼ってもらえるなんてな。」


「も、もう。またからかって……」


「からかってなんてないさ。事実を言ったまでだ。お前はこの学校の中でも美人だからな。転校してきたときも視線が集まっていたのが見えたよ。周りの男に嫉妬されてたかもな、俺は。」


「確かにみんな見てるなって思ってたけど…。恥ずかしいわ…」


「だから美人を周りから一人占めできて楽しかったさ。いつも横にいるのは、ちんちくりんだからな。ストレートに美人だという相手と交流できて、普通にうれしかったよ。」


「もう…。私を褒めてくれるのは嬉しいけれど、そんなこと言うと彼女、怒るわよ?……あ…」


「彼女……?」


「かーずーとー?」


後ろに怒りのオーラを出している女がいた。

まさに先ほど話していた、ちんちくりんの華だ。


「悪かったわね! ちんちくりんで、怒ってばかりで、うるさくて! そ、それに、ひ、貧乳でっ!! ふんっ! そんなにスタイル抜群の子がいいかっ!」


「誰もそんなことまで言ってないだろうが……ぐふっ」


腹にパンチを入れられた俺。

……あれ? 何でこんなコメディを演じているんだ?

痛みで腹を抑えていると、アリアが小言で呟いていた。


「ふふっ……羨ましいわ、距離が近くて」


その言葉に俺は悩むことなく、俺は意図的に無視した。


「ところで華、もうカレーはできたのか?」


「そうよ、できたわよ。だから呼びに来たのに…、何よ、デレデレしちゃって…」


「デレデレしてない。普通に話していただけだ。な、アリア」


「え、ええ……」


「してた! 絶対絶対絶対してた! ……めったに私のこと、褒めてくれないのにっ」


「拗ねるなよ……」


「……つーん。もっと撫でなさいっ」


頭を撫でて機嫌を取ろうとすると、続きを要求された。華は周りの目が見えていないのか、今? 生暖かい視線でいっぱいだぞ? 二人きりと思い込んでないか?


とりあえずは、あのことを優先するか。


「華、ところで同じクラスの山田君の様子はどうだった? よくなったか?」


「え、山田君? ううん。やっぱりよくならなくて、今保健の先生のところで休んでいるわ。病院に行くかもって」


「そうか…残念だな。」


……よし、上手く進んでいるな。


「山田君?」


アリアがつぶやいた。


「ああ、俺と同じ部屋の人だよ。ちょっと今日の後半からどうも体調がよくないらしくてな。」


「そう…残念だわ」


「あ、あああ! ばか、ばか和人!」


華が大声を出す。その様子は、周りが俺たちを見ていることに、今更気づいたな。


苦笑いしながら華の腕をつかみ、みんなのところに赴く。飯の時間だ。

さあ、……上手くやる必要があるぞ。


「和人君……」


背中のアリアの視線を無視し、俺は華とともにクラスのところに戻っていった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ