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6章15話(文化祭)

感想募集してます。感想を参考にさせていただきながら、物語をブラッシュアップできればと考えております。


「はい、今日のボランティア部は終了! みんなお疲れ様!」


「「「はーい!」」」


文化祭も近い。学校に貢献するという目的で設立されたこの部活は、この時期部活動の時間の前半を清掃活動等に費やし、各自クラスの出し物の準備に途中参加したりする。その他のメンバー、例えばアリア等は生徒会に赴いたり、各自自分の私用に赴いたりする。俺は部のみんなの談笑の輪に加わらず、一人で部室を出ようとすると、柔らかい物体が抱き着いてくる。


「和人君―、どこに行くのー?」


聖だ。一瞬驚いたがこいつの顔を見たら落ち着いた。なんだかんだ、こいつと触れ合うのは良い具合に俺の心を穏やかにしてくれる。そうだな、……安心すると、言っていいのか。この世界にきてこんな気持ちになれるとは思わなかった。

そんな聖の頭はわしゃわしゃと撫でる。聖は「やめてよ~」と言う。構わず撫で続けた。


「誰かさんが俺に仕事を押し付けるから、その準備に行くんだよ」


「えー、担当教室の見回り?」


「いや、それじゃない方だ」


「あー……。ごめんねー、難しいこと頼んじゃって……」


「本当だよ。まったく、面倒なものを……」


「でもねでもねー! 『あれ』やってる和人君って、絶対カッコイイって思うんだー!」


「何のフォローにもなってねぇよ」


「痛い痛いー! 頬を抓らないでー!」


「……ねぇ、和人、あれって何?」


聖と戯れていると、いつの間にか横に美姫がいた。……何だか機嫌が悪そうだ。


「ああ、あれっていうのはねー、和人君、……バンドメンバーになりましたー!」


「「「えー!?」」」


いつの間にか俺たちの会話を聞いていた部活のメンバーたち。声の大きさにうんざりする。早く帰してくれないか? ……って、聖が俺を掴んで離さないし。


「えっとね、文化祭のステージに出る予定だったバンドグループが一組ね、一人がケガしちゃって、ギターの代役を生徒会に相談していたの。そんなとき、和人君に頼んだら快くOKしてくれてー……」


「快くしてねぇよ」


「ごめんごめんー! ちゃんとお礼するから許してよー!」


「……そう。和人、ギター弾けたの」


「うん、和人君って何でもできるんだよー。えっへん!」


「お前が威張るなよ。……はぁ。本当に少ししか触ったことないぞ? それに付け込みやがって……」


「向こうだって和人君のこと所望していたんだよー?」


「はぁ? それ、初耳だぞ?」


「え? 言ってなかったー?」


「……なんで」


「ん? どうした、美姫?」


美姫がうつむきながら小さな声で話した。


「なんで、先輩が和人がギター弾けること、知っていたんですか? さすがに和人が弾けること知ってなくちゃ、先方からの依頼も断りますよね?」



……美姫、切れているな。少し美姫の前ではしゃぎすぎたか。早く場を鎮める必要があるな。その様子に聖も気づき、フォローを入れようとする。


「えっと、ごめんね。確かに和人君がギター弾けることは知っていたけど、本当に雑談ついでに和人君から聞いていただけなの。……あれ? ちょっと、和人君いい?」


「どうした?」


耳を近づけるようサインしてくる聖に素直に応じる。


「……私たちって、そんな話したことあるっけ?」


「はぁ? お前今更何言ってるんだよ? ……待てよ」


……あれ? 俺、聖にギター弾けること、言ったことがあったか? たしかにこの世界に来る前、姉さんに言われて弾けるようになってはいたが、それを聖に言った覚えは……あったか? 記憶をさかのぼってみる。……だめだ、思い浮かばない。……………………まあ、今は思いださなくていいか。それよりも美姫を放置するのがまずい。

そうこう悩んでいると、一人の女の子が入ってきた。


「あはは、聖先輩聞こえましたよ。私が言ったこと忘れたんですか? 和人君弾けますよって」


春香が入ってきた。こういうときの春香は心強い。とりあえず助かったという安心感がわいてきた。


「あ、そうだったねー! ごめんごめんー」


「和人君も私と前話したでしょー! だから和人君を指名したんだからー」


「……春香先輩が指名した?」


美姫が驚いた顔をする。というか部員のほとんどが驚いた顔をしている。そんな彼女らに、春香はどや顔をする。


「うん、そうだよ! だって、私のバンドに和人君が入ってほしいなーって!」


「……春香先輩、バンドするんですか?」


「うん! ……あれ、言ってなかったっけ?」


「「「えーっ!?」」」


……何度この部室でこいつらは叫べばいいんだ?


「えっとね、クラスに楽器弾ける子たちがいたの。ああ、ベースとドラムとキーボードね。でね、その子たち、文化祭の日にバンドとして出たいって、私に相談してきてくれたの。私にボーカルもしてほしいってね。……あの時は困ったなぁ。まぁ、プラスでギターできる人がいないかも相談してくれてきたんだけど。その時、和人君がギター弾けること思い出してね! 和人君にお願いしたいんですけど、いいですかーって聖先輩に相談したの!」


「そうだよー。それで和人君も快く……」


「快く承諾してねぇよ。便乗するな」


「痛い痛いー!」


「あはは、というわけで私たちバンドに出るの! みんなー、応援よろしくね!」


部員のみんなが笑顔で了承する様子を見て、こいつら仲良いなと今更ながらに思いながら帰る準備をする。春香はみんなの輪の中にいた。ここから抜ける良い機会だ。……あれは。美姫以外に一人だけ輪に入らないやつを見つける。だが、俺はこれ以上今日は面倒ごとは勘弁してほしかったから、知らないふりをして、部室のドアに手をかける。


「あ、和人君」


「……あ?」


まだ皆の中心でにこやかに話していたはずの春香がこちらに歩いてきて笑みを深め、顔を近づけこう言った。


「私のお願い、忘れないでね」


「……わかっているよ」


春香の『お願い』が俺に頭痛を生ませる。なぜ、なぜ俺はこの世界で周囲の環境に呑み込まれる………。帰りに薬局に行かないと………。それはさておき、『あいつ』に声をかける。


「おい、……海! 今から音楽室に行くぞ!」


「……はい」




………

……



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