7章38話(ハーレム編_クリスマスパーティ) 助っ人とフォロー
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……
…
「アリア。一つお願いがある。いいか?」
「え、ええ…。何かしら和人君」
あの日の会議から、どこか弱気な態度を見せるアリア。
生徒会室で、また俺とアリアは二人きりで仕事をしていた。
クリスマスパーティーの準備で忙しいこの時に、二人きりでだ。
「さすがに俺とお前だけでは限界がきているタスク量だ。それに、他の役員のタスク量も限界に近い。生徒会の業務の定時に帰宅させているが、疲労がたまっている」
「ええ、……みんな本当に頑張ってくれているわ」
あの費用の会議から、仕事は増えていた。
そもそもおかしいのだ。普段の生徒会の仕事もこなしつつ、クリスマスパーティーの運営までやる? 教師はどうしているんだ? 何が学生の自由意思を尊重だ。馬鹿どもが。もしつぶれてみろ。監督責任を問われるのはお前たちだぞ。
愚痴はやめておこう。
「だから、何を言いたいかというとだな……、助っ人を呼びたい。」
「助っ人? でも、どこのクラスも準備で忙しいと思うのだけれど…」
「いや、この学校の者ではない。違う学校の者だ。……ほら、入ってこい」
「え…?」
そうやって、生徒会の扉を開けたのは。
「ちょっと和人。呼ぶのが遅いのよ」
「美姫さん…?」
そう、美姫だ。
美姫とアリアは初対面ではない。実を言うと、少しだけ合わせたりもしていた。どうせ未来で会うのだ。それが早まったところでどうということはない。
「アリア。お前が言うように、確かにこの学校の者に頼むのは厳しいかもしれない。だから、美姫を連れてきた。美姫も来年はこの学校に入り、生徒会を目指しているようだしな。」
「そうなの、美姫さん?」
「まあ、私は和人がいれば暇つぶしになりそうだったからであって…」
「そこは素直に『はい』というんだよ」
「うるさいわね~。ええ、私はこの学校に入学を希望しています。そして、生徒会の仕事にも興味があります。」
アリアは悩んでいる様子を見せていた。
「でも、受験があるんじゃないの?」
「大丈夫ですよ。模試も満点ですし、過去問も全部満点でした。」
「そ、そう……。でも、それで疲れさせて、体調を崩したりでもしたら」
「大丈夫ですよ。これくらいのタスク量だったら、私でもさばけます。問題なく、ね。和人にここに来るまでに、どんなものが教えてもらいましたが、大丈夫です。」
「それは俺も保証するよアリア。クリスマスパーティーの資料と隠して、試しに資料作成とその報告をさせてみたが、問題なくやれていた。仕事ができないタイプのお嬢様と思っていたが、存外そうでもなかったらしい」
「一言多いのよ、馬鹿和人!」
こうやって美姫に仕事の手伝いをさせて負担を軽減できるし、なおかつ美姫のご機嫌取りもできる。一石二鳥だ。
「……」
アリアはまだ何か悩んでいる様子だった。
悩んでいることは、想像に容易い。
「アリア、華に俺は言われているんだ。倒れるくらいになるまでやるのはやめなさいと。だから、負担を軽減する必要がある。かといって、お前は他の生徒会のメンバーの負担を増やしたくないんだろう? だったらもうこうするしかない」
「で、でも…。それなら私が」
「お前の仕事量を増やすのか? お前もお前でもう手が埋まっているはずだ。お前が倒れるつもりか。それはやめろ。華にも言われているのもあるが、お前が倒れたら誰が生徒会長の仕事をつとめる?」
「私がいなくたって、和人君が……」
「本気で言っているのか? お前がなりたいといった役職だろう? お前だから、俺が今の地位にいる。それを忘れるな。お前が生徒会長をやめるんだったら、俺も生徒会に関わるのをやめる」
「……」
「それにお前が倒れて俺が仮に代行することになっても、もっと俺の仕事が増えるだろう。逆効果だ。」
「……そうね。ごめんなさい。浅はかだったわ」
「アリア。お前も疲れているんだろう。今日はもう休め。大体仕事は終わっていて、今日は後片付けだけだ。美姫に仕事のことももう少し俺から教えたい。だから、もう帰っていいぞ」
「……ええ。今日はちょっと帰らせてもらうわ」
アリアは帰りの支度をする。顔を伏せて生徒会室を出ようとする。
…ちょっと言い過ぎたか。
このままこいつの精神状態を悪くするのは得策ではない。
華も言ってるしな。『嫌いな相手がいても、人間関係はなるべく良好に保ちなさい』と。母ちゃんみたいなことを最近言っているが、もっともだ。
「美姫、ちょっと外せ。つべこべ言うな、ほら。……なぁ、アリア。この前は言い過ぎた。すまない」
「ううん、……あの時は私が悪かったの。」
「いや、お前の気持ちも十分にわかる。各クラスの望みを十分にかなえたかったんだよな? 確かにかなえようとしすぎた箇所もあるが、…生徒会長の立場として俺は正しいと思う」
「え…?」
「俺は、組織の長としてはまず理想を追うべきだと思う。最初から低い現実の値ばかりを追い求めてたら、スケールが小さくなってしまうだろう? 楽しくなくなってしまうかもしれない。だから、お前がやろうとしていたことも正しいよ。」
「でも、あのままいってしまっていたら…」
「そんな細かいこと気にするな。……お前と俺の仲じゃないか。これから少し気を付けてもらえれば問題ない」
「で、でも……、私は反省しないとで……」
アリアは涙を瞳に溜めていた。
…そこまで思い詰めていたのか。
しょうがない。あまりやりたくないが…。
「アリア。お前は本当に頑張っているよ」
「ふぇ? 和人君?」
アリアの肩に手を置き、そして頭をなでる。……華と同じような強さで。
「尊敬している。他の人のために頑張る姿勢を。俺なんて絶対にまねできない。お前しか生徒会長はできなかったよ」
「……」
「だからお前を支えたいと思ったんだ。大事な友人だから。ごめんな、冷たい態度とって。でも、あの場で厳しい姿勢を見せないといけなかったんだ。飴と鞭かな? 甘いままで生徒会を見られると、この先絶対よくないことが起きると思ったから」
「う、うぅぅ…」
「あこがれているよ。みんなのために明るく笑顔で頑張っているお前を。だから、そんな悲しそうな顔しないでくれ。泣かないために、俺もこれからも副会長として傍で頑張るからさ」
「うわぁぁぁぁぁぁぁん!!」
アリアは泣きながら俺に抱き着いてくる。
……はぁ、やはりこうなるか。
抱き着いてくるアリアの頭を右手でなでながら、左手で携帯をいじる。メッセージをある相手に送信するためだ。
いつものように仕事が早い彼女は、すぐに俺の要件を理解してくれて答えてくれるだろう。
「ちょ、ちょっと海先輩! 引っ張らないで! これから和人に色々教えてもらわないといけないの!」
「美姫さん。ほら、早く行きますよ。私たちが居ては邪魔です。それに、それだったら私が教えますから。」
扉の外からくぐもった小さな声が聞こえたが、海が仕事をこなしてくれたのだろう。
さて、俺も仕事を片付けるか。
「ほら、アリア。泣き止んでくれよ。これから一緒にご飯でも食べに行こうぜ? あまり最近は仕事のことばかりで話せていなかったからさ、ゆっくりとおしゃべりでもしよう」
「うん。うん……」
アリアが泣き止むまで俺は抱きしめられるがままになっていた。
……はあ。まだ、仕事が残っているんだけどなぁ。そのように、仕事のことが頭の大半を占めていた。