はい。人間です
うぉぉぉぉぉぉ!!!
本日で80話目でございますねぇぇぇぇぇ!!
100話まで残り20話となりました!!これからも応援よろしくお願いします!!
80 はい。人間です
「……コアトルちゃん。取りあえず久しぶりって言っていいかな?」
後ろを向いて姿を確認した結果、それがコアトルちゃんだということが分かったのでとりあえず感動の再会ということにしたかった。しかし、コアトルちゃんの方は俺が人間になったことを知らなので「初対面なのに何で名前知ってるの?」みたいな顔をしている。
…………なぜだろう。さっきよりも警戒の度が強くなったような気がする。
「何であなたは私の名前を知っているの?」
「……うーん。一から説明すると結構時間かかるんだよな……。少し時間をくれるなら全部一から説明してあげるよ」
心に思った声をそのまま外に漏らしたようなことを言ってきたコアトルちゃん。説明は女神様に任せようとか思っていたけど、自由奔放すぎる人なので俺がピンチになっている時には既にどこかに行っていた。危険察知能力が半端ない元女神様、もしかしたら本当にヤバい時でもどこかに逃げていってしまっているかもしれない。
「もういい……。別に説明しなくても……。あなたが私の名前を知っている理由はそこまで気になるわけでもない。それ以上に気になるのは…………私とあなたが戦ったらどちらが強いのかだけ」
「――!?」
言葉を発すると同時にただならぬ殺気を感じた俺は無意識にスキル【縮地】を発動して、コアトルちゃんの死角に移動していた。そして…………やはり俺の判断に間違いはなかったらしく、さっきまで俺がいた場所にはコアトルちゃんが強力な拳が繰り出されていた。
「…………外した」
「コアトルちゃん…………折角感動の再会をしたのにこの仕打ちはないんじゃない?」
まだ和解が出来ると判断した俺はスキル【縮地】を使ってコアトルちゃんの死角に移動したというのに、自ら場所を教えるように言葉を発してしまった。でも、コアトルちゃんは俺の言葉に聞く耳を持つことはなく、殺気を放ったままこちらを向いて全力で拳を振る―――
―――先ほどはただのパンチだったが、今度はコアトルちゃんの両手が炎を纏っているように燃えていた。
《 警告。個有名コアトルが繰り出してくるスキルは【黒炎突き】です。スキル【炎突き】の進化スキルと考えられますが、その名の通り拳に黒炎を纏わせて殴るスキルです。 》
「へえ…………【炎突き】の進化スキルか」
全速力でこちらに向かっていて、全力で【黒炎突き】を繰り出そうとするコアトルちゃんが目の前にいるというのに俺はいたって冷静だった。俺は黒炎が纏ったコアトルちゃんの拳をスキル【魔力分解】を右手に纏わせて何食わぬ顔で受け止める。
【魔力分解】を両手で発動させた状態で黒炎が纏っている拳を掴むと、みるみる内に黒炎は小さくなり――やがて消えていった。
黒炎が小さくなるところ辺りから違和感を感じていたコアトルちゃんは両手で連続パンチを仕掛けてくるが、元々この体が持っていた天性の動体視力で全て見切り、コアトルちゃんが繰り出してきた高速連続パンチを一つ一つ正確に受けていく。【魔力分解】を発動させている両手で魔力を纏わせている拳で殴れば、段々と魔力が分解されていき―――そしてただのパンチと成り下がってしまう。
「な、何で…………?」
自分から解除したわけでもない【黒炎】が消えていく姿を見ているコアトルちゃんの顔にがこれ以上ないほど焦りが見え、動体視力関係なく単調な攻撃が増えてきた。そして…………俺は素人丸出しの粋りヤンキーパンチを掴み、思い切り引っ張ってコアトルちゃんのバランスを崩した。
元々パンチを打つ際には少なからず体重が前に行くので、少し手前に引くだけで簡単に体が前に倒れ初めてバランスを崩してしまう。
「そろそろ俺の話を聞いてもらっていいか?」
手を引き、自分の顔とコアトルちゃんの顔が近づきすぎて触れてしまうかもしれないというほどに近づけた。…………自分でやったことだけど、メチャクチャ照れる。35歳童貞のオッサンにはこれくらいが限界なような気がする。
しかし、今更引くことも出来ないので俺は顔が触れてしまうかもしれないという距離を保ったままコアトルちゃんの目を見つめながら言う。
「俺はハルトだよ…………。あのいつもフワフワ浮いてた最弱ゴースト」
「…………え?」
俺がコアトルちゃんの目を見つめながら真実を言うとさっきまで殺気を帯びていたコアトルちゃんの目がいきなり変わった。…………まるで鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていて、思い切り「嘘でしょ?」という顔をしながら俺のことを見つめてくる。
…………とりあえずこれ以上は俺の心臓が限界なので手を離して少し距離をとるけど、コアトルちゃんの顔は相変わらず鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている。
「…………嘘……でしょ?」
「本当です」
思わず敬語になってしまった。
「何で……?だって私が知っているハルトはゴーストのはず……。それに、ゴーストがスキル【乗り移り】を習得するのは稀のことで、それにいくら乗り移ったからっていきなりそんなに強くなる何て…………」
「…………まあ、普通はそうなるよね」
コアトルちゃんの言っていることは正論過ぎて何も言い返せない。……言い換えるなら、俺に起こったことはとても奇跡的なことだ。ラッキーなことが重なりすぎたと言ってもいい。……しかし、そう考えると俺に起こったのは所詮『奇跡』と『連続ラッキー』なのだ。
そう考えると別に不自然じゃないような気がするけど…………そういうわけにはいかないですよね?
「……私はハルトが乗り移る予定だった体を知らない。だから…………ハルトだと言うなら証明をして」
「証明?」
「ハルトが私に今までどんなことを言ってきたか…………それを教えて」
てっきり「信じられない」とでも言われると思ったけど、これはむしろ好都合である。コアトルちゃんの提案により、俺は何とか偽物扱いされないで済みそうだ。コアトルちゃんに言ってきた言葉は沢山あるけど―――いや、別にそんなに話てなくね!?
今更思ったけど別にそんな心に残すようなことを言ったような覚えもないし、別にそんな洒落た声をかけたような覚えもない。
―――そこから俺は『5分』という長考をしてようやく思い出した。
「えっと…………確か『何も出来ないからって、それが何もしない理由にはならない』だ」
「正解……でも、答えが出るまで随分と長かった」
「い、いや……!?そ、それは…………」
5分間長考した結果答えを思い出せたわけだが、確かにコアトルちゃんの言った通り答えが出るまでかなり時間がかかってしまった。俺は偽物扱いをされても仕方ないと思ったその瞬間、警戒したり殺気を放ったり驚いた顔したりと忙しいコアトルちゃんの顔に今日初めて笑みがこぼれた。
「分かった…………私はあなたをハルトだと信じる。
改めて久しぶり、ハルト…………」
「お、おお…………久しぶり」
どういう風の吹き回しか、いきなり俺のことを信じてくれたコアトルちゃんは言葉通りの行動をとるように手を差し伸べてきて握手を要求する合図を出す。その手を握った俺は再びコアトルちゃんの顔を見てみると、既に明後日の方を向いているコアトルちゃんの姿があった。
何を見ているのかと気になった俺はコアトルちゃんが見ている方に視線を向けてみると、そこには茶色の毛で覆われている小動物―――狸のモンの姿があった。
コアトルちゃんはそのモンに俺の存在を伝えるために手を振り、そして呼び掛ける。
「どうしたでござるか?…………って、ハルト殿ではござらぬか!!!久しぶりでござるね!!」
「え?お、おお…………」
コアトルちゃんに呼ばれるがままにこちらに来たモンは、俺の姿を見た瞬間に俺をハルトだと認識して俺の名前を呼ぶ。当の本人である俺もまさか分かるとは思っていなかったので、モンの言葉に少し動揺しながら変な返事の仕方をしてしまった。
読んでいただいてありがとうございます!!
次回更新は多分二日後でございますでしょうが、もし明日も更新していたら是非読んでください!!




