人助け
どうもお久しぶりです!
何か、2週間から一ヶ月ほど休載といいましたが、本日更新とさせていただきます!
今回は少しショッキングなところがあるので、そこはご了承ください。
8 人助け
O・B・Kとして異世界に来た俺だったが、思っていたよりも危険が少なくてとても助かっている。
一番最初にできた友達がまさかのチート級の強さと言うバグ発生もあったが、そのお陰でモンスターに襲われることもなく森を進んでいる……はずだった。
(解析:目の前の魔獣。)
森の茂みに隠れながら俺は目の前の魔獣を【スキル:解析】を使って調べていた。
俺の曇りなき眼(嘘)で写っている景色は、二人の姉妹に魔獣が襲い掛かろうとしている光景だ。妹と思わしき少女は、魔獣にナイフを向けて抵抗している姉の後ろに隠れ、姉は何としてでも妹を守ろうとしている状況だ。
《 解析が終了しました。これより反映させます。
種族名:魔獣
種類名:黒毛狼
レベル:7
攻撃力:120
防御力:50 》
……あれ?魔力とかNSが反映されないのはなんでだ?
俺が調べてきた数は少ないけど、魔力やNSを持っているなら絶対に反映されるんだけどな。つまりあいつは、魔力とかスキルを持っていないということか?
………でも待てよ。よくよく考えたら俺よりも攻撃力高くね?
てか俺よりもレベル高くね?
「貴様……目の前の少女たちがピンチな時に何を考えておるのだ?元人間の貴様なら、少しは人間に対して思いやりがあると思って連れてきたのだぞ。貴様がレベルのことを気にしているなら、今すぐにでも魔獣が大量発生しそうな場所に連れて行くが?」
(そんないじめはしないでくれよ。俺はてっきりお前が助けるんだと思ってたから。)
「我が敵対者である巫女を助けると思うか?確かに退屈はしているが、浄化されたいわけではないからな」
……まあそれもそうか。
こいつの言うことも一理あるけど、さすがに現在進行形で大ピンチの子供を放っていくってのも後味悪いというか、そこまで人間の心を捨てたくないというか。
(お前の言うことも分かるけどさ。俺の貧弱なステータスじゃ助けられないだろ?それに、あの子が巫女なら助けに行った瞬間に浄化されそうだしさ。ここは一つ、助けに行ってやれよ。どうせ暇7なんだろ?)
完全に自分の都合の悪いことをノワールにぶつけた俺だったが、ため息をつきながら二つ返事で了承してくれた。こうも簡単に了承をしてくれるとは思っていなかったけど、あの子たちを助けてくれるというのなら何でも構わない。
(よし!!じゃあ行くか!!)
人(幽霊)の心を勝手に読むノワールにしか伝わらないけど、俺は自分でも可笑しいと思うほど気合の入った返事をした。
するとノワールは、少し真剣な表情をしながら俺に言った。
「貴様、さきほど自分で『助けに行った瞬間に浄化されそう』と言っていたが、そんな古典的なゴーストの姿で行ってもいいのか?」
…………あ。
俺はノワールの言った言葉で、少女を助けようとしていて動かそうとしていた足を止めて脂汗がこれでもか、というほど垂れていた(足ない。そして気のせい)。
「フハハハハハ!!!やはり貴様の頭のねじは、何かが外れているようだ!!転生―――いや、転死の際に肉体だけでなく脳までもが消えてしまったのか!!フハハハハハ!!」
(うるせえぇぇぇぇぇぇ!!ほっとけぇぇぇぇぇぇ!!……今のはそう……元人間の時の癖というか、人間としての本能というか……ねえ?)
「人間でない我に同意を求めないでない。……まあ、一度了承してしまった手前今更断るようなことはしないのだがな。少しこっちに来るがよい」
(え?お、おう……。)
少し不自然な手招きをしているノワールに少し警戒しながら俺はノワールに近づいて行った。
するとノワールは、俺の薄透明な頭の上に手を置いてスキルのような言葉を口にした。
「【認識阻害】そして【同調】」
《 ノワールから認識阻害の同調されました。同調を展開致します。なお、これは同調なため、魔力が消費することはありません。 》
……え?どゆこと?
いきなり複数のことが頭に流れ込んできたことに、対処が追い付いていなかった。同調?認識阻害?二つともどこかで聞いたことがあるような言葉ではあるけど、実際の効果のようなものは知らない。
【認識阻害】というくらいなら、その名の通り認識を阻害するということか?
つまりは、隠密……姿が見えなくなるってことか? そんな凄いスキルがあるなら先に使ってくれればよかったのに―――
「ウガアァァァァ!!」
―――何て話している場合ではなかった。少女を助けようとして開いた会議だったはずなのに、いつの間にか黒毛狼が少女たち(姉)に襲い掛かっていた。
(やべえ!!ノワールを説得するのに時間がかかりすぎた。ノワール!急いであの子を助け――)
「ウガァ!?」
「フハハハ!!我のことを前にしても逃げ出さないとは、危険度Cレベルの雑魚のくせに度胸だけはS級みたいだな!!」
―――マジかよ。
俺がノワールに指示を出す前には、既にあいつは少女たちを襲おうとしていた黒毛狼と少女の間に割り込んでいた。たかが180センチくらいしかないはずのノワールなのに、体長2メートルを軽々超えそうな黒毛狼が恐れているように見える。
ちなみに黒毛狼の外見といえば、名前の通り黒い毛でおおわれている狼だ。だが、地球にはいない威圧感と凶暴さが見て取れる。鋭い爪と、鋭い牙を持ってすればどんな堅い物質でも砕くことができるだろう。
……そんな感じで、見た目の偏見だけで全てを決めてしまうとノワールの勝ち目はまずない。
なぜなら、ノワールの見た目は優しそうな好青年だからだ。討伐や剣を使っての戦い何て無縁にしか見えないのだ。主に少し年をとった……年齢にすると40代くらいの女性にモテそうな外見だからな。
でも……ノワールなら赤子の手をひねるかのようにして黒毛狼を倒すだろう。
ノワールのステータスを見た後では、あの黒毛狼のステータス何てただの雑魚だ(自分よりは高い)。
「グガァァァ!!」
「我もそこまで暇ではないのでな。貴様のような雑魚と遊んでいる場合ではないのだ」
力の差を理解しながらも、黒毛狼はノワールを噛み砕くために飛び掛かった。
俺にとってはとてつもない速度でジャンプして飛び掛かったようにしか見えないが、ノワールにとってはほぼ止まって見えるだろう(ただの予想)。
自分を噛み砕くために飛び掛かってきた黒毛狼に、ノワールはゆっくりと手を伸ばしてデコピンを喰らわせた。
ドピュ……ブシャァァァ。
ノワールが黒毛狼にデコピンを喰らわすと、黒毛狼の頭と身体がキレイに真っ二つになってしまった。実に深いな音を立てながら、黒毛狼の血の雨が辺りに降り注いでいた。
そして、互いを慰めあう姉妹たちの方を向いたノワールは視線を合わせるためにブルブルと震えている姉妹の目の前で軽く膝をつくようにして座りながら少し微笑みを見せた。
………まさかとは思うけど黒毛狼の恐怖が残っているのに、デリカシーのないことを言うんじゃ―――
「お嬢さん方、大丈夫ですか?お怪我はありませんか?」
―――いやいや誰だよお前。
『フハハハハハ!!』とか、『これは傑作だ!!』と言った、人(幽霊)の気に障ることばっか言ってくるいつものノワールではなく、ただ単に優しい好青年に変身していた。
……声を変えるスキルでも使っているのか分からないが、女性向けの恋愛シュミレーションゲームに出てくるイケメンのイケメンボイスみたいな感じの声だ。地球にいるいわゆる『腐女子』と呼ばれる女子が『きゃあ!!』みたいな黄色い声が上がりそうな声だな。
てめえノワール、俺とは全く態度が違うじゃねえか。俺と全く同じの対応をしろとは言わねえけど、一体どこの紳士になったつもりなんだ!!
あの黒スーツの姿で蝶ネクタイでもしていたらまんま紳士だっただろうな。
もちろん、俺はあいつが猫をかぶっていることを理解しているから紳士になんて間違ってでも思わないが、初対面であのような対応をされてしまっては心を読むとかしないとあいつのことは計れないだろう。
「あ、あの……助けてくれてありがとうございました!!」
「当然なことをしたまでです。私はたまたまここを通りかかっただけに過ぎませんからね。だから、そんなに頭を下げなくてもいいんです。……それより、そちらの方の足は大丈夫ですか?」
………何か、体中がメチャクチャかゆくなってくる。
ノワールの気持ちが悪い対応はさておき、少女たち―――妹の方は足を痛めているはずだ。そこに気が付いたノワールも、そちらの方を心配していたようだ。
「ちょっと転んだだけだから、私が村までおぶって帰るから大丈夫です」
だが、ノワールの質問に答えたのは妹ではなく姉の方だった。おそらくはこれ以上迷惑をかけたくないと考えている姉が、妹の変わりに言ったのだろう。
でも、俺の見た感じだと全くもって大丈夫のようには見えない。 転んだというのは本当かもしれないけど、痛みは結構あるみたいだ。
「……私には、結構な怪我に見えますね……。ちょっと失礼」
「え?あ、あの……」
「大丈夫ですよ。痛くはしませんから」
ノワールは、姉が言ったことを軽く否定し、足を押さえながら涙を流している妹に近づいて行った。
黒毛狼とりも、それを一撃で倒したノワールの方を警戒する妹は涙を流しながら戸惑っていた。そんな少女のことを気にすることもなくノワールは、少女が押さえている足に手を翳した。
「【ヒール】」
そして、ノワールがスキルのような単語を口にすると足の痛みで涙を流していた少女はいきなり泣き止んだ。
「ティナ?足は大丈夫?」
ノワールが足から手を離すと、姉の方が妹を心配そうな表情で見つめながら駆け寄った。妹―――ティナと呼ばれていた少女はポカンとしながら足を押さえてから姉に言った。
「おねえちゃん……ティナ、足痛くないよ?もう大丈夫だよ」
「ほ、本当に?でも、何で急に……」
「私がスキルを使っただけですよ。【ヒール】というスキルは、怪我を治したり、呪いを解除したりできますからね」
「ほ、本当ですか!?ありがとうございます!命を助けてくれただけでなく、足の治療までしてくれて……是非、私たちの村に来てください!!」
……ちょ待てよ。
何でお前ばっかりいいことが起こるんだよ。確かに俺にはその子たちを助けられる力はないけどさ、それでもお前ばっかり褒められるのはズルいじゃん?
認識阻害して気づかれないから、あえて茂みからでて言うけどさ。
(……お前、俺のこと忘れてるんじゃねえだろうな!!!!)
《 ノワールから【スキル:テレパシー】を使用してのメッセージが来ました。メッセージを確認致します。 》
あ、まじですか。
心の中でノワールに対する愚痴を思い切り叫んだその瞬間、まるで計ったかのような―――というか完全に計っただろという絶妙なタイミングで頭の中に言葉が流れ込んできた。
久しく聞いてなかったこの流れてくる声だが、なんやかんやでノワール以上の付き合いだ。どうやらノワールが俺にメッセージを送ったみたいだが、量が多いのか分からないけど確認するのに結構時間がかかっているらしい。
《 メッセージの確認が終了致しました。これよりメッセージをお伝え致します。 》
(フハハハハハ!!我の唯一無二の友よ!元気であったか?我が認識阻害を同調させているため、誰からも気づかれることのないハルトよ!お察しの通り、我は村へのお誘いがあったため、その村でちやほされてくる。貴様は我が同調を切らないよう願いながら、フラフラとついてくるがよい!!我が同調を切った瞬間、貴様はティナと呼ばれていた少女に呆気なく浄化されてしまうだろうが、それはそれで見てみたい気もするので地球とやらにいる神に願っておくがいい!
フハ、フハハハハハ!!!)
《 メッセージは以上です。 》
……マジかよ。
ノワールさーん、俺ってそんなにやらかしたっけ?そんなに俺のこと嫌いだった?
ねえ、まさかとは思うけど……本当に同調を切ったりしないよね?切ったら本当に俺、浄化されちゃうよ?
ねえ、ねえ、ねえ!!!
いいの!!お前の唯一の友達だよ!?本当に浄化されちゃってもいいの!?お前はいつも気に障ることばっかり言ってくるけど、なんやかんやで優しい奴だと思ってたのにさ!!
……って、そんなことばっかりやってたらいつの間にか皆いねえし。
いつに間に行ったんだよ。少しは待ってくれよノワールさん。 元魔王候補のくせに、一人の友達も待てないのか!!この人でな――いや、ヴァンパイアなし!!
お前なんか水と間違えて聖水飲んで浄化されちまえ!!!バーカ、バーカ!!
見た目詐欺の最悪の性格を持っている青二才が!!(涙目)
ハア………。
じゃあ、ノワールたちを頑張って探しますか。
自分でも乗りツッコミを入れてしまうほど、変わり身に少し呆れながら、ノワールが進んだだろうという方向に行ってみることにした。
………ドンッ。
すると、俺のかなり低い視線よりもさらに低い何かに当たってしまったようだ。足に何かが当たった……と言いたいところだが、残念ながら俺には足がない(涙目)。
でも目はあるので、一応当たった物を確認してみることにした。
(………もうヤダ。早くノワールに追いつこう。)
俺が視線を向けたその先には地面から立派な黒毛狼の首だけの剥製があった。
剥製………ではなく、リアルの生首を見るのは初めてだが、想像よりも胸にくるようなものがある。生々しい、というか本物だから当然だけど獣臭が溢れていて動体と首の切断部分には大量のどす黒い血が滝のように溢れていた。
……どうやったらデコピンで首と動体を切断できるのかとても気になるところだが、今は既に終末を迎えている黒毛狼に憐れみを抱いてしまった。
………このまま微生物に任せて分解させるのもいいが、何となくそれだともったいないような気がする。
これはただ単に好奇心だが、これを食べたらどうなるのかが少し気になる。
草や枝を食べたことがあるが、動物を食べたことはなかった。………地球にいた時の俺はこんなことを思わないだろうが、折角異世界に来て、しかも良くも悪くも味覚がないから不味いかどうかも分からない。
……ならば、これを食べない選択肢はないだろう。ノワールからステータスのことをバカにされるのも嫌だし、これを食べてレベルが上がるというなら食べてもいいだろう。
バキベキ………ボキバキ、バキベキ………ゴクンッ!!
軟骨唐揚げのような食感を感じながら、恐らく骨だと思われるものを噛み砕いて飲み込んでいく。
《 レベルが5に上がりました。ステータスの向上と、新たなるスキル習得、さらに特性の習得を報告致します。
レベル2→レベル5
攻撃力5→攻撃力120
防御力5→防御力50
魔力45→魔力200
NS浮遊・透視・保護色・テレパシー。
→浮遊・透視・保護色・テレパシー・魔力撃。
特性:大食漢・鋭歯 》
一気に流れ込んできた俺のステータス情報は、現在の知識ではとても処理できるものでなかった。
特性?魔力撃?鋭歯?
幽霊なのに歯があっていいの?確かに今までも、なんか歯で噛み砕いたような感じあったけどさ。
………どうやら、あの軽く裏切られたノワールに聞くことが一気に増えてしまったようだ。
頭に流れ込んできた言葉をよく思い出しながら、俺はノワールのことを追いかけた。
読んでいただいてありがとうございます!
休載期間が短くなったとはいえ、少し間が空いてしまったので文章の感じがいつもと違ったかもしれません。
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