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女神様からの贈り物

76      女神様からの贈り物



…………ただでさえ草一本と生えていない荒野だというのに、その一部が焼け野原となっていた。危険度Sという混合獣を倒してレベルが上がった俺だったのだが、まさかの【乗り移り】を習得する前にレベルがMAXになってしまったという現実。


(………さっきの、よくよく考えたらフラグだったのかなあ。)


【乗り移り】を習得できなかった今、完全に気持ちが萎えてしまい何事にもやる気が起きなくなってしまった。混合獣と戦う前、軽く女神様とレベルに関する話をしていたけどまさかそれがフラグになっているとは思わなかった。

 死亡フラグにしてもたちが悪い。


(【解析:俺が乗り移りを習得出来る確率】。)


《 解析が終了いたしました。

  あなたが【乗り移り】を習得出来る確率は99%です。 》


…………そんなわけねえだろ。

 解析の人が折角調べてくれたというのに、俺は『なに言ってんだこいつ?』みたいな反応を見せていた。そんな悲しい現実と向き合おうとしていたその瞬間、さっきまでどこかに隠れていた女神様がやって来た。


「いや~よく勝てましたね~。正直に言うと~私は無理だと思っていたんですよ~」


俺と混合獣が戦っているところをどこからか見ていたのだろう。女神様は俺に向かって小雨のような拍手を送ってくる。…………いやいや、あなたが戦わせたんですからね?勝つと思っていなかったのに戦わせるって鬼かあんたは。


「実を言うと~ハルトさんが苦戦しているところに私が助っ人に入って攻撃し、その後にハルトさんに止めを指してもらおうかと思ったんですよ~。経験値は止めを指した者に与えられますから~」


(こっちも実を言うと一人で戦わせたことに関してはどうでもいいですよ。だって勝ったから。でもさ…………まさかの【乗り移り】を習得する前にレベルが最大になるってどういうことですか!!何のために俺はレベルを上げてたんですか!!)


口からではなく心の中で強く女神様に語る。すると女神様は少し考えているような素振りを見せ、俺の頭の上に手を置く。…………このゴーストボディの触り心地でも確かめたかったのか?

 でも、基本的にはプニプニしているわけでもないので一肌が冷たくなった程度のはずだ。


(女神様…………別に俺の頭を撫でても冷たいだけですよ?いや………むしろ生ぬるい感じかもしれないし。)


《 SPSスペシャルスキル【乗り移り】を習得致しました。 》


――――ふぇ?えぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!?


「これで習得完了ですね~。おめでとうございます~。あとは乗り移るために、巫女の街オーレンに行くだけですよ~」


(ちょ、ちょっと待ってください!!今何が起こったんスか!?)


女神様が頭に触れて数秒経過した瞬間『SPSスペシャルスキル【乗り移り】を習得致しました』って解析の人が言ってきて……………って、ヤバイ…………何か頭痛くなってきた。冷静に今起きたことを振り返って見たけど、どう考えても非現実的すぎて頭が痛くなってきた。


「今のは~私がハルトさんに【乗り移り】というスキルを習得させたんですよ~。まあ、【女神の祝福】を授けたような感じですね~。この世界に送る際に『体を見つければ乗り移ることができますよ』と言った手前、さすがに乗り移りさせないわけにはいかないので~」


俺がメチャクチャパニックているというのに、女神様は笑いながら言ってきた。……何か、今まで一生懸命レベルを上げていた意味が全くもってなかったような気がする。まあ、この世界最高峰の加護を授けてくれた女神様なら【乗り移り】の一つや二つくらい習得させること何て造作もないことだろう。


―――そして俺は考えることを止めて、現実を受け止めることにした。



(もう考えるのとツッコミを入れるのがめんどくさくなったから言いませんが、俺が【乗り移り】を習得したってことは巫女の街オーレンに行って本体の体に乗り移ることが出来るということですね?)


「そう言うわけですよ~。きっとハルトさんならあの……ノワールさん以上に強くなりますよ~」


女神様は相変わらずのほほんとした雰囲気を身にまといながら言ってきた。まあ……ノワール以上に強くなるってのは少し大袈裟だとは思うけど、少なくともノワールに痛みを感じさせるくらいには強くなりたい。…………いつもいつも俺の最弱さを馬鹿にしてくるけど、たまには俺だって強いということを認識させていきたい。


(【解析:ここからオーレンまでの距離と時間】。)


《 解析が終了致しました。

  巫女の街オーレンは、ここから南東方向に2000キロ進んだ場所にあります。今のあなたのペースでは、急いでも半年はかかります。 》


…………もうヤダこの世界。てか、次会ったらノワールのことを二百発くらい殴ってやろう。自分で「強くなれ」とか言ってたのに、何で本体があるオーレンから離れてる場所に転移させたんだ。俺がスキルを習得しないと思っていなかったのか、それとも適当に転移させた場所がそこだったということだろうか。

 ……まあ、ノワールのことだから多分後者だろうな。


「あ、ハルトさんの本体なら私持ってますよ~」


―――ふぇ?

 女神様は俺が心の中でノワールに文句を言っている際中に【収納魔法】を使って、巫女の街オーレンで見た俺の本体を出した。……黒髪の美少年。この中に俺が乗り移ったら見た目は子供、中身は童貞の35歳おっさんという悲しき生物が生み出されてしまう。



―――でも、俺は目の前に仰向けの状態で目を瞑っている本体に向かって突撃していった。そして以前と同じようにスキル【浮遊】で宙に向き、丁度心臓の辺りまで動いてスキルを解除する。以前はそこで目を瞑り、気が付いたらマットに乗っかって跳ね返ったようにバウンドして地面に落ちてしまったけど、今度は目を瞑らずに下降していき段々と本体の胸が近くなってくる―――



※※※





―――次目を開けた場所は何も見えないほどの暗闇だった。特性【夜目】を習得しているはずなのに、暗くて何も見えないというバグが発生しつつある。



《 現在あなたは本体の心の中にいます。この体はあなたという魂を欲しているので、適合のためのプロセスを組んでおります。 》


――そう言うことか。確かに初めて会った時も『この体はあなたを欲しています。適合率は100%です』何て言っていたような気もするし、乗り移ったからっていきなり体を自由を動かせるわけではないのか。


《 ――プロセス1をクリア。プロセス2をクリア――――全てのプロセスをクリア致しました。これよりあなたの意識・記憶・経験値・スキル・特性・加護を本体と繋げます。 》


おっと、思っていたよりも早いですね。会社の連絡とか担当者指名とかもこれくらい早いと助かるんだけどな。…………そう言えば、何となく右手を動かすと指があるような感じはするし土特有の匂いが鼻を突き抜けているような感じがする。


《 本体と全ての感覚・感覚―――を繋げました。あなたはこの瞬間より【人間】という種族となり、この体は物理攻撃もきいてしまいます。…………では、目を開けてみてください。 》



…………今も目を開けているつもりなんだけど……と言うことを思いながらも、人間だった頃の感覚を思い出して目を開ける。


「―――」


目を開けると、そこにはゴーストの時に見ている青よりもずっと澄んでいる青い空が広がっていた。焼け野原のような荒野も、爽やかに吹く風も全てが心地よく感じていまう。


《 ゴーストの時に得た経験値を全て送りました。レベルが上がりました。ステータスの向上と新たなるスキルの習得を報告いたします。 


   レベル1→83

    攻撃力2000→70000

    防御力1300→67000

     魔力2800→120000

   

    習得スキル 【黒炎】【黒炎竜】【ゲート】【天槍】【黒炎球】【水流】【水迅】【円廻】【認識阻害】【天滅】【天滅】【収納】【土人形(ゴーレム)】【魔力覚醒】【不屈】【分身体】【匠】【魔力誘導】【魔力付与(マジックギフト)】【魔力制御】【見切り】――――


    習得特性  【全属性適正】【詠唱破棄】【自動反撃(オートカウンター)】【経験値2倍】→【経験値5倍】【自己再生】【魔力異常回復】【毒耐性】【麻痺耐性】【覇気】 》



……スキルの後半とか何言ってるのか分からなかったけど、習得特性は全部聞き取ることができた。一つだけ言うことがあるとしたら―――



「絶対強くなりすぎだろぉぉぉぉぉぉ!!!!」


人間になって初めて言った言葉がその言葉だった―――

読んでいただいてありがとうございます!

 ついに!!ついにハルトが成り上がりましたね!


さて、ようやく人間になることができたハルトですが、これからどんな活躍をするのか楽しみですね~


次回をお楽しみに!!

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