女神様は意外と鬼畜
昨日は更新できなくて申し訳ございませんでした…………。
ちょっとした諸事情があったため更新が出来なかっただけなので、別に更新しなくなったわけではありません。
次からはちゃんと気を付けます。
74 女神様が意外と鬼畜
(うぎゃぁぁぁぁ!!!ヤバい!!死ぬ!!マジで死ぬぅぅぅぅぅ!!?)
今まで緩やかな草原が続いていたというのに、進んでいくこと約二日。穏やかだった草原がそのうち荒れた荒野となり、モンスターたちの威嚇の声は魔力を直に感じることが出来た。幸い今は女神様も一緒だから余裕だろ~何てことを思っていたけど、女神様は「スキル【乗り移り】を習得できていないなら、兎に角レベルアップするしかないですね~」とか言って、いきなり俺をモンスター同士がケンカしている真ん中に放り込まれた。
…………結果、今に至る。現在俺は高見の見物をしている女神様を軽く恨みながら追いかけてくるモンスターから頑張って逃げていた。荒野を走り抜けるのには少しコツがいるらしく、足場を少し考えながら進まないと直ぐに怪我をしてしまう。もちろん、それなりの強さを持っているモンスターなら大抵【自己再生】という特性を習得しているので、足の切り傷何かは直ぐに治ってしまう。
(くっそぉぉぉぉぉ!!マジでこの状況どうするんだ?止まりたいけど、ここで止まったら本当にぶっ殺されそうなんだけど!?)
「グギャァァァァ!!」
俺のことをずっと追いかけてくるモンスターは全長が数十メートルはある巨大なモンスターだ。【解析】を使った結果、モンスターの名前は【ビッグウッド】と言うらしく、イノシシが突然変異で巨大化したモンスターらしい。巨大な体とは裏腹に耐久は全くもって皆無らしいが、この状態で反撃なんてできるわけがない。
《 …………数メートル先に人工的に作られた穴があります。 》
(それはマジですかい解析さん。じゃあ、そこまで誘導して一気に畳みかけるとしましょう。)
珍しく俺に助け舟を出してくれた解析の人。情報によると数メートル先に落とし穴のような物があるらしいので、俺はそれをありがたく使わせてもらうことにした。落とし穴までのルートを【解析】にキチンと分析してもらい、一ミリの狂いもないようにモンスターを誘導する。
(……おっ。穴ってあれのことか。)
しばらく【解析】に誘導を任せて走って行くと、絶対悪質に掘られた穴があった。まるで誰かに悪戯をするために掘られたような落とし穴…………大きさ的にも後ろから追いかけてくるモンスターには丁度いいものだ。偶然と言うものなのか、それとも今まで全く運が無かった俺にようやく月がやって来たのか。
(さて…………【浮遊】っと。)
落とし穴のギリギリまで進んでいき、直前で【浮遊】を発動させて宙に浮く。どんなモンスターでも、ブレーキをかけた地点で止まれる者などいない。ビッグウッドは俺に追いつくために自身が出せる最高速度を出していたため、いきなり宙に浮いた俺を認識できてもその場で止まれるわけがない。ビッグウッドはそのまま勢いに流されて穴までたどり着くと、重力に逆らうことなく落とし穴にはまって行く。
…………石器時代のマンモスもこんな感じで捕っていたのだろうか?何てくだらないことを思いながら、俺は落とし穴に落ちてもがいているビッグウッドに近づいた。
(【火炎風塵】!!)
「グギャァァァァ!!?」
穴に落ちて存分に身動き一つとれないビッグウッドに、俺は自分で作りだしたスキル【火炎風塵】を容赦なく放っていく。俺が放った【火炎風塵】はビッグウッドが落ちた落とし穴と全く同じサイズで赤い竜巻が巻き起こり、それに包まれているビッグウッドは今にも灰になりそうだ。
包まれている対象を灰にするだけでなく、【風塵】の効果も合わさって灰にした対象を今度は強力な風によって塵にする。
―――やがて【火炎粉塵】は魔力を失って無くなる。落とし穴をそっと覗き込むと、そこにはビッグウッドの屍存在していなかった。ビッグウッドの屍さえも灰となり塵となって風に吹かれてどこかに舞ってしまったのだ。落とし穴から異常なほど焦げ臭いが漂っている。
「うわ~よく倒しましたね~」
(女神様…………いきなりちょっと酷くない?確かに【乗り移り】を習得するためにはレベルアップしかないけど、だからっていきなりモンスター同士がケンカしてる所に投げ込む?)
「私だってそこまで鬼じゃないですよ。ちゃんとピンチになったら助けようとしましたし…………」
俺がビッグウッドを倒したところでやって来た女神様。ここまで言葉に真実味のないのを聞いたのはいつぶりだろうか、助けに行ったと言うわりには俺が倒すところまでばっちり見ていたらしい。それに、女神様は最初に「よく倒しましたね~」と言った。
別にそんなことを一々気にしてるわけじゃないけど…………本当に気にしてるわけじゃないよ?でも…………意外と女神様が容赦ないから動揺してるだけ?
「それよりハルトさん。不思議な戦い方をしますね。私も天界で暇だった時にこの世界を覗いたりしましたが、ハルトさんみたいな地形を利用する戦い方をする人々は少なかったですよ?皆が皆脳筋みたいに突っ込んでいましたから」
(ちょい待ち。いくら何でもそんなに馬鹿じゃないでしょ。俺だって別に戦いが得意なわけじゃないし、戦いが好きなわけじゃない。
……でも、地球の人間ならこれくらい誰だって出来るんじゃないか(ただの偏見)?)
俺が心の中でそう言うと女神様は少し首を傾げながらこちらを向く。…………いや、そんなピュアな瞳で見つめられても困るだけなんですけど。
戦い方についてはどうでもいいとして、俺はいつになったら【乗り移り】を習得することが出来るのだろうか。さっきのビッグウッドを倒してもレベルすら上がらなかったし、このまま行ったら俺は一生ゴーストのままだと言うことだろうか。
「それなら大丈夫ですよ~。ハルトさんは今までで誕生していたゴーストの中では最強でしょうし、仮に習得できなくても【女神の祝福】の加護のお陰である意味不死身じゃないですか~」
(いや…………そういう問題じゃなくてね…………。こんな状態じゃ永遠とモンスターと思われちゃうでしょ?永遠と人間から怯えて暮らすのも嫌だし。何より声に出して殆ど話せないし。何より!!この状態じゃ味覚がないからこの世界の美味しい物とかも食えねえんだよ!!!)
「そ、そうですか……。うーん……でも、このペースだと少し厳しいかもしれませんねえ。先に天界から沢山ハルトさんを殺すためにやってくるでしょうし、多分それまでには間に合わないかもしれませんねえ」
(それは嫌だ!!ってか、俺は人間と巫女と神様って一体何種族に狙われればいいの?皆そんなに俺のこと嫌いなの?そんなに童貞のことが嫌いなの?そんな可哀想な童貞を容赦なく殺す何て神様は慈悲もないもないのか。)
「そうとは言い切れませんが、ハルトさんが天界に狙われる原因は私ですしね。仮にゼウス様が来たとしても25秒ほどは持つと思います」
自身満々にそう答える女神様。確かに俺が天界に狙われる原因はこの女神様にあるわけだが、もし仮に女神様からの加護を受け取っていなかったら俺はゴン・ゼノンさんに浄化されちゃったかもしれないから、女神様だけが悪いとは言えないんだよなあ。
※本作の19話あたりの話です。
(……まあ、一応来るまで時間がかかるだろうからそれまでは頑張りたいけど。)
「―――!!そうですか!!じゃあ、早速あのモンスター達を倒してきてください!!」
女神様だけに責任を押し付けるのが申し訳ないくて言ってしまったことだけど、女神様は急に態度を変えると遥か遠くに見える豆粒のようなモンスターを指差す。スキル【千里眼】で確認をしてみた結果、数種類のモンスターにおける大規模な争いごとのようだ。
…………そんな危険極まりない戦争に俺を参加させようと考える何て、やっぱり女神様は意外と鬼畜であった―――
読んでいただいてありがとうございます!!!
次回もまたお楽しみに!!




