表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/131

魔女の立ち位置

73     魔女の立ち位置


「…………あなたが言っていた狂人の名前はマッド・ヘル…………最強の称号を手に入れた暗殺者よ」


「最強の称号を手に入れた暗殺者だと…………?しかし、じゃあなぜ我は見覚えが全くないのだ?最強の称号を手に入れた存在なら、見覚えくらいがあったとしてもおかしくない…………。いくら属が違ったとしても、最強の称号を手に入れた存在なら見覚えがあってもいいだろう?」


以前ノワールのことを襲ってきた狂人の正体が明らかとなったのが、それでもノワールはその狂人――――マッド・ヘルのことを全く分かっていない様子であった。時代が違くとも最強の称号を手に入れた存在ならノワールに知れ渡っていてもおかしくはないはずなのだが、ノワールはマッド・ヘルのことを知らないと言う。


「…………それは知らないけど、彼を含めて私たち【隠密】はその名の通り存在を隠しながら情報や偵察…………そして暗殺を行う。確かに彼は『最強』と言う称号を手に入れたけど、むしろ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「―――!!そうか、存在を公開しては【隠密】として機能しなくなってしまう。つまり敵に正体をバラしているようだから矛盾するわけだな」


破壊の魔女の含んだ言い方に納得したノワールは的確な相槌を打ちながら破壊の魔女に言う。最強でありながら最強として知られていない…………そんな特殊な存在であるマッド・ヘルは、現在は魔族となってしまっている。しかし、そのマッド・ヘルは誰よりも悪魔たちのことを知っているような口ぶりであった。ノワールもそのことに気が付いているからこそ、無視できない存在にもなっているのだ。



「それで?あなたがここに来た目的の一つは達成できたとして、もう一つ目的があるんでしょ?」


「その通りだ。実を言うともう少し情報を欲しかったが、最初に答えを聞いてしまうよりは我自身の力で見つけた方が面白い。そして…………最初にも言ったが、我は貴様を戦力の一人として見ている。近いうちに必ずやってくる悪魔たちを返り討ちにするための戦力…………我は貴様のことをその一人として見ている。   だから―――どうか我に力を貸してほしい」


言葉を放つと共に深く頭を下げるノワール。最強のアンデッドであり傲慢であるノワールが頭を下げて頼み事をするなど今まであったか分からないほど珍しく、破壊の魔女も少し反応に困っているみたいな顔をしている。そして深々と頭を下げて頼みこむノワールに近づくように立ち上がった破壊の魔女は美しい笑顔を見せながら



「―――嫌よ。何で私があなたの目的の手助けをしないといけないの」


―――全てをぶった切るようにして全力で断って見せた。その言葉を聞いたノワールは下げていた頭をゆっくりと上げ、「どうして?」という顔をしている。その顔からは『悲しみ』という感情も溢れていて一度断った破壊の魔女には少しの罪悪感が襲う。


「そ、そうか…………。確かにその通りである。貴様が我の目的の手助けをする理由はない。貴様にメリットというメリットが目に見えているわけでもないし、一歩間違えれば命を落とす戦いでもある」



ノワールは語る―――。真っすぐ破壊の魔女を見つめながら、自分自身の中で決めた覚悟を破壊の魔女に雄弁に語っている。


「だが………それでも我は戦うしかないのだ。戦うと決めたのだ。この力有り余る体がこの世から無くなると未来が決まったとしても、それでも――――それでも我は戦うと決めたのだ」


「あなたがそんなことを言う何て意外ねえ…………そんなにあなたはこの世界が好きだったかしら?」


真剣に―――雄弁に語りかけるノワールを小馬鹿にするような言い方で破壊の魔女は少し笑う。しかし、ノワールはそんな破壊の魔女の行動に苛立つような素振りを見せることなく破壊の魔女が言っていたことに小さく頷いた。


「ああ…………我はこの世界が好きだ」


「…………」


小さく頷いて見せたノワールは優しく囁くようにして言った。そして一度言った言葉に繋げるようにして再び口を開く。


「…………ルナいた世界が好きだ。ルナが笑っていた世界が好きだ。ルナと過ごしていた時間が好きだ。だから我は戦う。…………ルナが最後まで笑って生きていたこの世界を救うために我は戦う。そのためだけに生きてきたし、我はそのためだけに戦う」


いつになく真剣な表情で語って見せたノワール…………。全てを語り終えたノワールは目に少しだけ涙を浮かべながらもう一度深々と頭を下げる。さきほどからノワールが心に決めた覚悟と思いを誰よりも近くで聞いていた破壊の魔女は、誰よりもノワールの気持ちを理解しているようで誰よりも悲しそうな顔をしている。


「…………あなたがどんな思いで戦いをするのかは分かったけど、私の立場はあくまでも中立よ。その立ち位置を変えるつもりはないし、好き好んで悪魔や魔王とは戦わない。

 あなたが期待していた通りの返事を出来なくて申し訳ないけど、よほどのことがない限り私は中立よ」



深々と頭を下げるノワールが望んでいる答えとは全く違うものであるが、それでもノワールは少しさっぱりした顔をしている。



「…………そうか。少し残念ではあるが、貴様がそう易々と見方になってくれるとは思っていなかった。

 ……………では、我はここらで引かせてもらう。破壊の魔女(引きこもり)は大概にしておくことだな」



さっぱりした顔をしだしたノワールはパチンッと自分の指を鳴らして黒い霧に包まれる。最後に破壊の魔女に敬礼をして見せたノワール。そんなノワールの敬礼に答えるようにして破壊の魔女は顔に笑みを浮かべ、優しく手を振ってノワールを送り出す。



「そう言えば…………さっき私は中立とは言ったけど、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ