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明日から

68        明日から



(うーん…………名前……………名前ねえ。)



元女神様から依頼をされた俺は、この世界での女神様の呼び名を考えるようにと頼まれた。正直適当に考えようかと思っていたりしていた俺だけど、どうせ名付けるならいい名前と思う自分もいたりするのだ。

 俺の脳内に存在する天使と悪魔が必死になって争っているが、6対4くらいの割合で天使が勝ってしまいそうだ(結局めっちゃ考える)。


「そう言えばハルトさんはこの世界で何をしてるんですか?」


――――いやいや女神様、俺は今さっき頼まれた名前を必死になって考えてるんですよ。

 二人で地平線のように平らでどこまでも続いていそうな草原を歩いているなか、俺の前を歩いていた女神様はクルっと体の向きを変えてから俺に質問をした。…………もう少し勢いよく回ってくれたらスカートの中に広がる夢を見ることが出来たのに…………何てことは思わないようにする(それでも思ってしまうのが男)。


(何って言うほどのことはしてませんかねえ…………。今は【乗り移り】というスキルを習得するために頑張ってはいますが、この草原の穏やかさを見たら気持ちも萎えてしまいますよ。)


「あれ?確か私って、体に入り込むためには【乗り移り】のスキルが必要だってことを伝え忘れましたよね?それなのにどうやって分かったんですか?」


俺の答えに対して質問で返してくる女神様。…………そうなんですよ。女神様が事前に教えてくれなかったから俺はめちゃくちゃ苦労したんですよ?


(…………まあ、その――――実際に俺の体が保護されている場所に行って実際に乗り移ってやろうと思ったんですけど失敗に終わりました。

 その時にスキル【解析】から教えてもらったんです。《 体に乗り移るためには【乗り移り】というスキルが必要です。 》って。)


これを聞いた時は思わず発狂しそうになったけど、そこは35歳なりのプライドと言うか…………いい年したオッサンが発狂と言うのも痛いと思ったりして。確かこれがあったのは【オーレン】という街だったような気がするが、この世界で最も巫女さんが多い街でもあった。

 ノワールがいたから無事に行けたけども、俺がたった一人で向かった時は絶対に追い出されるだろうな。一応浄化パージはきかないけども、浄化パージがきかないアンデッドの方がより物騒で恐ろしいだろう。


「そうですか…………。実はそれを伝えていないことにハルトさんが行ってしまった後に気が付いたもので…………本当に申し訳ございませんでした」


深々とアンデッド最弱の俺に頭を下げる女神様。いくら自分が悪いからっと言って最弱のアンデッドに頭を下げる女神様なんてのは天界でもこの女神様だけだろう。

 しかし…………こうやって深々と謝罪されるのは何となく好きではない。謝罪をするのは得意なのだが、謝罪されるのは好きではない。


(そんなに謝らなくていいですよ。仮に女神様が教えてくれなかったとしても俺は知ることでしたでしょうし…………現に俺は知っているから気にしてませんよ。

 それに――――女神様が教えなかったから今の俺がいるんです。教えてくれていたら、今の俺は存在していなかった。だから大丈夫です。)


「そう…………ですか」


俺の言葉を聞いた女神様は少し驚いた表情をしながら数歩後ろに下がる。


「何か…………不思議な人ですね。ハルトさんは」


(…………ん?今何か言った?)


もう一度体をクルっと回転させた女神様だったが、その瞬間に何か言ったような気がして思わず聞き返すけど女神様が答えることはなかった。

 …………まだまだ地平線のように続く草原は終わりそうもない。少なくともこの草原が終わるまでに良い名前を考えるとするか――――





※※※







所と人が変わり、ここは大陸の最南東に位置する場所である。


「懐かしいな…………ここに来るもの」


最南東に位置するこの場所は殆どが沼地は墓場となっており、普通の人間はまず立ち入ることがないばじょである。

 そんな場所に転移したノワールはどこかウキウキしているような表情を見せ、心臓が高鳴っているように胸を押さえながら歩いて行く。そんなウキウキな気持ちとは裏腹にドンドンと気味悪くなっていくこの場所は、進む度に腐食によって柔らかくなった地面に足が埋まる。


「昔はもう少しキレイな場所であったのだがな…………長い間我が来ないだけでここまで汚くなってしまうのか」


見渡す限り腐っている木々や沼地…………現在の時刻が夜であることを含め、何よりも不気味な場所となっていた。しかし、この大陸にも生物は存在する。墓場、沼地、腐敗…………そんなものが好きなモンスターは一つの種族しか存在しない。


「あれ!!!ハタストムさんじゃないですか!!!こんなところで何をしてるんですか?」


「ほう、貴様は【グルー】か。我のことを覚えていたのか?」


――――びちゃびちゃと沼地を横断して現れたのはノワールが言っていた通り【グルー】だった。すっかりボロボロの服を着ていて、血走っている紅い目を光らせながら陽気な様子でノワールに話かける。相手もノワールも互いを覚えている様子で、親しんでいるようにもとらえることができる。


「私たちの住処が広がったのもハタストムさんのお陰ですよ!!さあさあ、早く行きましょう!!」


「フハハハハハ!!!!いいだろう!!久しぶりに我が住処に帰るとしよう!!!どこよりも同胞がいるb所は他にない」


犬のようにノワールに話かけているグルーにノワールは高笑いをしながら答える。墓場と沼地に囲まれた場所にノワールの高笑いが響き、より一層気味の悪さが増していく。

 ノワールはグルーに案内をしながら墓場と沼地に囲まれた道を進んでいくと、月の光も届かないほど暗い場所に薄っすら光のような物が灯る。


「フハハハハ!!!久しぶりであるな我が同胞よ!!最強のアンデッドの我が帰ってきたぞ!!!さあ、今すぐ我が来たと言うことに喜びひれ伏し、早く我を崇めるがいい!!」


光が灯る場所まで一瞬にして移動すると、そこはまるで小さな集落のようだった。そこにはアンデッドというアンデッドが数多く集まり、中にはノワールに並ぶアンデッドの中の上位種族も数多く存在する。

 ノワールはそんな集落のど真ん中に現れると、空を見上げながら手を広げて高笑いを披露する。周りにいたアンデッド達は、いきなりのノワールの登場に動揺する――――



「うぉぉぉぉ!!ハタストムさぁぁぁん!!」

「帰って来るなら、僕が特大サイズのケーキを焼いたのに!!何で教えてくれなかったんですか!!」

「ハタストム!!ハタストム!!!最高ぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


―――こともなく、ノワールに言われた通り全力で喜んで全員でノワールのことを崇めて見せた。


「フハハ!!フハハハハハ!!そうだ!!我は元からこれを期待していたのだ!!」


他のアンデッドたちが崇めれば崇めるほど調子に乗るノワールの高笑いはドンドン大きくなり、この集落の夜は今までで最高に賑やかな夜となった――――

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