様々な出会い
65 様々な出会い
《 レベルが上がりました。ステータスの向上を報告致します。
60→62
攻撃力1625→1780
防御力1120→1200
魔力2230→2350
NS
※変化なし
特性
※変化なし 》
ご報告ありがとうございます。いきなり現れたメタルスパイダーを新たなるスキル、【火炎風塵】で消し炭にしたら予想通りレベルが上がった。新しいスキルを習得できなかったことを考えると何となく寂しい気がするけど、ステータスは上がったからよしとしよう。
現在の俺のステータスが強い方なのか分からないのは、俺の周りにいたのがチート並に強い奴ばっかりだったから参考にならないのだ。もちろんアンデッド最弱と言われているゴーストの中では多分強い方なのだろうが、全ての種族を合わせてしまうと俺なんてちっぽな存在だ。
(…………一先ずこの森を抜けるとするか。)
山の主を起こすまで森から出られないということだったが、その条件は既に満たしているので森から抜けることも可能になったわけだ。
…………そう言えば、この森で一回人間に会ったけどそいつは脱出できただろうか?まあ、こんな外見だから良くは思われなかったけど。
しかし、今は他人のことよりも自分のことを優先するべきだと思い【解析】を発動させてこの森から抜けるためのルートを検索してもらうことにした。
…………【解析】とは調べものもできて道も知ることが出来るとは…………まさにグー〇ル顔負けの性能の良さだ。むしろこちらの方が上位互換であることは明らかである。
(【解析:この森から出る道】。)
《 解析が終了致しました。
この森を最短で抜けるルートはその場から西に二キロ直進し、人間の顔をした奇妙な岩を目印に右に曲がってひたすら真っすぐです。西というのは、今あなたが向いている左の方向です。 》
了解でーす。
相も変わらず丁寧に教えてくれる解析の人…………解析の声の人を具現化とかできないのかな?もしできるのなら、是非挨拶をしておきたいものだ。「どうもいつもお世話になってます」何て言いながら、この世界にある酒でも渡してやりたい。
…………そう言えばこの世界に酒ってあるのかな?酒がトラウマで全く飲めない俺にとってはあっても意味は無いけど、もし存在しないのであればそれをネタに金儲けが出来るかも―――
《 警告。この世界には約数千種類の酒が存在します。 》
――――そうですか…………。
冷静に答えている解析の人に現実を見せられた俺は、さっき指示された通りの道を行くために左を向いて人間の形をした奇妙な岩を目指して歩き始めた(足ない)。
二キロと言っていた解析の人。地球のマラソンだと確か42.195キロだから…………それの二十分の一の距離しかないということになる。もちろん俺はフルマラソン何て走ったこともないから、実際どれくらい辛いのかは知らない。
…………そして現在、俺はたった二キロ先にある人間の形をした奇妙な岩を目指して頑張っていた。こういう時に【音速走】でも使えば早くつくのだろうが、この先何があるのか分かったもんじゃないから魔力を温存しておきたい。
(…………岩ってあれだよな?って言うか、あの岩の目の前に誰か立っているような気がするんだけど…………。)
霧が晴れた森の中を堪能しながら進んでいくこと数十分。やっと目的の岩が見えたと思ったけど、その岩の目の前に誰かが立っているように見える。逆光になっているから仁王立ちして立っていることしか分からない。男性なのか女性なのかという話ではなく、そもそも人間なのか亜人なのかすら分からなかった。
…………とりあえず色々な意味も踏まえてその岩の前まで進んでいく。逆光とは言え、距離が近づけばおのずとその姿が分かってくるものだ。
身長はノワールと同じくらいか…………?服というか防具を着ていても分かるほど鍛え抜かれた肉体、それを見れば少なくとも男性であることくらいは分かる。異世界なのだからめっちゃムキムキの女性が居ても構わないけど、何となく俺の趣味的に女性はムキムキの筋肉を持っているよりは細身で華奢の方がいい。
高確率で男性…………恐らく人間と言ったところ――――
「…………やっと来たな」
――逆光+岩から見ると斜面となっている俺のポジション。やがて互いに姿が見え始めると、見下したような目をしながら岩の目の前に立っていた男が言ってきた。…………やはり人間であり男であったか。それに、その声にはどこか聞き覚えのようなものがあった。しかし…………俺がこの世界で関わった人間は大巫女さんくらいだよな?
「やはりこの道を通ると思っていた。この森を抜けるための最短ルートはこのルートだからな。…………しかし、あの時最弱のアンデッドと罵ったゴーストが本当はヤバいくらいの化け物とは思わなかったぜ」
(…………あの時?まてよ…………こいつってまさかこの森で会った人間か?)
脳が持つ声の記憶を辿っていると、俺は一つの答えに辿り着いた。そう。こいつはこの森で出会った人間であり、自分で言っていた通り俺のことを出会いがしらに罵ってきた。
「…………最初の無礼を詫びるとしよう。正直に言うと、お前が居なくちゃ俺はこの森から脱出することすら出来なかった。オーガを起こすことが条件なのは知っていたけが、俺にオーガを起こすことができなかった」
…………さっきは出会いがしらに罵った男は今度は頭を下げて俺に謝ってくれた。謝っている割にはこちらを見下しているという矛盾は、この際目を瞑っておくとしよう。謝ってきた男の話を聞いた結果、どうやらこいつもこの森にさ迷ってしまったらしい。
俺の場合は強制的に転移をさせられたということだけども、この森に滞在していた期間は俺よりも長いことだろう。
(…………それはまあ、良かったな。それで、何でお前は俺を待ち伏せていたんだ?ただお礼を言うだけじゃないんだろ?)
「そうだな…………。確かにお前を待っていた理由はお礼を言うだけじゃない。
…………お前は何者なんだ?初めて会った時も最弱のアンデッドとは思えない魔力を感じたからお前に会えたんだ。その時は何かの間違いかと思ったが、やっぱり何かが引っかかったままなんだ」
…………引っかかった?
突然妙なことを言いだした男。最弱のアンデッドの割に強い魔力を持っているからかな?自分で言うのも何だけど、そこら辺にいるゴーストと比べたら俺は確かに強いかもしれない。
「レベルが62のゴースト何て見たことねえ。俺が見てきたゴーストは精々20程度だ。それに…………そこまで高ステータスを持っているゴーストも見たことねえ」
(うーんと…………そうだなあ。俺はゴーストの進化種というか。変化種というか。)
自分でもなぜこんなに高ステータスなのかもしらない。それに、ゴーストの平均ステータスを知らないし…………。
だから俺はノワールに言われた進化種だとか変異種とか言っておくことにした。どうせ【乗り移り】を習得したら人間の体に入れるわけだし。
「進化種…………それか変異種か。悪いな、変な質問をして。最初は巫女に突き出して浄化とか言ったけど、俺の命の恩人にそんなことはしない」
さっぱりした顔をした男は距離を縮めながらそう言ってきた。不意打ちで何かしてくるのかと思って少し身構える。
「いくら助けてくれたのがモンスターであれど貸しは貸しだ。今すぐは無理だが、今度どこかで会ったら貸しを返してやるよ」
近づいてきた男は握った拳を俺の手と合わせるようにして伸ばしてくる。そして…………それを言い残した男は元々いた人間の形をした奇妙な岩の方向ではなく、真逆の方向へと走って行った。




