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来世の話をすれば鬼も笑う

今日はテスト初日でした!!

 まだ三日間あるとはいえ、最初の山は越えたので時間は遅くなりましたけど更新でぇぇぇぇぇす!!

63      来世の話をすれば鬼も笑う



「………悲しいのはずっと一人で生きていくことなんだ。

   死ぬこと自体はそんなに悲しくない…………一人で生き続けることが最も悲しいことなんだ」


オーガは真剣な表情をしながら俺に言ってくる。恐らく、このようにちゃんと(ゴースト)と話すのは初めてのことなのだろう。オーガは今まで人の心が冷たいということしか知らなかった。

 しかし、今回のように永眠キノコを食べて永眠に近いした自分を助けてくれたことにより、人の心の温かさを知った。


オーガが何の躊躇いもなく自分の過去を話してくれたのは、俺をし信用してくれたからだろう。


(………俺は現在ゴーストだから、お前の言っていることは分からないでもない。死ぬことよりも一人で生き続けることが一番悲しいことも、否定はしない。

 でも……………死んだら何も残らない。今の自分というものが完全に消滅し、来世の新しい人生に期待するしかなくなるんだ。)


「そんなこと知ってる………!!でも!!俺は…………生まれてくること自体が罪なんだよ!

   何も知らない劣悪なスラムで育った俺に仲間なんて居ない…………亜人族を嫌う国であったから標的にしやすい。――――その時に言われた言葉を知ってるか?」



声を荒げながらオーガは雄弁に語っている…………。その言い方からその国の人間がどのようにオーガを扱っていたのかが手に取るように分かった。

 オーガが聞いてきたことが分からないでもない…………むしろ、今まで言われたことをまとめると予想など簡単に出来る。だが、俺はここで答えは言わない…………言ってはいけないのだ。

少し含んだ言い方をしたオーガは、俺が分からないと判断し顔を下に向けながらポタポタと水滴の涙を溢した。


「―――――()()()()()()()()()()()()()()()()と言ったんだ!!そして人間たちは俺を嫌い、蔑み、そして疎まれた…………。

  運命を恨め何て…………出来るわけねえだろ……………折角生まれてきたんだから、希望を抱いたっていいだろ…………。でも、俺は一人ぼっちだ…………今までもこれからも…………」



雄弁に語ったオーガの過酷な過去の話は終わった。言葉からはこれ以上ないほどの重みを感じ、妙に感情移入をしてしまう俺も目に涙を浮かべていた。オーガは全てを話してスッキリするどころか、忘れかけていた過去を思いだし、さらに心に傷を負ってしまったようだ。

 …………その傷は俺にまで伝わったように、今の俺の心もトゲが刺さったかのように痛んでいる。


亜人を嫌う国があることくらいは予想していた…………しかし、オーガの過去がここまで過酷なものとは思わなかった。つまりオーガは人間に嫌われるがままに国を後にし、迷い混んだこの森で永眠キノコを食べてしまったということだ。


(…………それで、お前は何をしたい?それを理由に人間を殺したいと思うのか?)



下を向いて涙を流しているオーガは俺の質問に対して頭を上げ、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしている。


「…………いや、何もしねえよ。俺はこのまま来世に期待することにしたんだ」


腕で目に浮かぶ涙を拭いたオーガはさっきとは打って変わってさっぱりしたような顔をし、既に覚悟を決めているようだった。

 …………そんな時、日本で思い出したある言葉を思い出した。――――『来年の話をすれば鬼も笑う』という言葉だ。


それは、未来の話をすればあの怖い鬼でもおかしくて笑ってしまうということから作られた言葉だと言う。…………なのに、本物の鬼は笑っていない。未来(来世)のことを話しているのに笑っていない。



(そんな顔で期待何て言うなよ。本当は未練たらたらなんだろ?

 俺が住んでいた国だと()()()()()()()()()()()()って言うんだぜ?)


一度さっきこのオーガは笑ったけど、この時の笑うとは少しだけ意味が違う。所詮は雰囲気しか変わらないような気がするけど、何となくこっちの方がいいだろう。


「鬼も笑う…………?来世の話をすると?」


(鬼って言うのはオーガ。来世って言うのは未来ってことだ。つまり、未来の話をすればオーガも笑うんだって話だ。けど、お前は来世の話をするとき笑ってないだろ?

 つまり、まだ未練たらたらってことだ。)


「アハハ、アハハハ!!」


少しカッコつけながら言った俺。するとオーガは今まで以上に笑い、まもバシバシと俺を叩こうとする。

 ゴーストだから物理攻撃が全くきかないのでダメージもくそもないが、これは感情の温かさを感じとるものなのだ。


「そうだよな!!期待を胸に未来の話するんだから、笑ってないとおかしよな!!笑って…………笑って…………笑ってないとな…………」


――――一度大きな声で笑いを見せたオーガだが、何かを言いかけたところで再び涙をポロポロと流す。煌めく滴がオーガの赤い額を伝って地面に落ち、その光景がスローモーションで映ってしまう。


(笑ってないといけないのに涙が出るのは、まだ未練があるからだな。)


「…………そうかもしれないな。じゃあ、一つだけ…………」


俺の言葉に反論の一つもしないオーガは人差し指を立てながらいきなり立ち上がり、俺に手を差し伸べる。


「…………友達になってくれないか?俺は今まで友達がいなかったんだ」


ゆっくりと手を差しのべたオーガは少し照れ臭そうにそう言った。友達ところか今まで敵しかいなかったオーガにとっての唯一の心残りは、まさかの友達を作ることだった。

 もちろん断る理由がない俺はオーガが差し伸べてくれた手に手を重ねて、オーガの顔を見つめる。


(もちろんいいぞ。こんな奴でいいならな。)


「………!!ありがとな!じゃあ、これからよろしく!!」


物理的に触れることができない―――――と思いきや、さっきのバシバシはきかなかったのに今度の握手はしっかりとすることができた。

 オーガの温かさをここで身を持って体験したということだ。これでこの世界で4人目となる友達ができたわけだ。


「…………ちなみにお前は何をしているだ?」


(ん?俺か?俺はな―――――)



握手を終えるとさっきまで泣いていたり怒っていたりと感情豊かだったオーガはどこへ行ったのか、普通の顔をしながら俺に聞いてきた。

 別に内緒にするようなことでもないので、今度は俺がオーガに俺のことを雄弁に語ることとなった。






※※※※





(――――と言うわけで、俺は本体に乗り移るため【乗り移り】っていうスキルを習得するために旅をしてるんだ。)


長い長い俺の過去とこれからの目的についての話を語り終えると、オーガは何かを考えているような顔をしていた。

 …………こいつちゃんと俺の話を聞いていたよな?まさか考えるフリをして寝ている何て展開はないよね?そんなことしてたら全力で【硬化】+【魔力撃】を打ち込んじゃうよ?



「…………よし!決めた!俺もお前のスキル習得に協力するぜ!!」


(え?いいのか?何か悪いな…………。)


自信満々に答えたオーガ。何をしてくれるのはまだ分からないけど、協力してくれるなら大いに助かる。

 もしかしたら俺一人では倒せないモンスターも出てくるだろうし、道とか地形についても俺は理解がない。


()()()()()()()()()


(――――――え?)


突然のことでオーガがなにを言ったのか今一分からなかった。


「スキルを習得するにはレベルを上げないといけない。そのレベルはモンスターを倒したり、食べることで上げることができる。

      どうだ?完璧な作戦だろ?」


どや顔をしてくるオーガとは裏腹に戸惑い続けている俺。オーガが何を言っているのかが本当に分からないままだった。

 …………自分を食え?そんなことを言う奴がいるのか…………ってここに居るのか。でも普通はありえないだろ?


(なあオーガ。…………お前、自分で言ってること分かってるのか?)


「分かっているぞ?俺を食え。……………どうせ俺はこの森の外に出ても意味がないし、そもそもあの過去を忘れられるわけでもない。あの時以来人間に会ってないから何とも言えないけど…………実際に会ったら何を仕出かすか分かったんじゃない」


段々と距離を詰めていくオーが…………しかし、その顔には全くもって不安も何も感じられなかった。むしろ今まで以上にさっぱりした顔をしているように思える。


「これが()()()()()()()()()()()()()……………俺はもう未練何てないんだ。そして出来ることなら、一度くらい誰かの役に立って終わりたいんだ。

  俺をこのままお前の成長の糧となるなら、俺は胸を張って来世に期待することができる」


(オーガ………………分かった。俺はお前を食べる。)



距離を詰めているオーガに対して【浮遊】を使って宙に浮き、あえて目線を合わせるようにする。ここで俺が口を大きく開けて飲み込めば捕食は簡単だが、友人を食べることなど俺には出来なかった。

 …………さっきは大口を叩いたくせに、まだどこかに嫌だという感情が眠っているようだ。


そんな俺の姿を見た俺が歯を見せるようにして笑って、俺の顔を見つめる。


「そんな顔するなよ。俺が笑ってるんだから、お前も笑えばいいんだよ。()()()()()()()()()()()()()()()()……………だから、俺が笑ってるんだから笑ってくれよ」


(…………そうだな!)


オーガの最後の言葉で何かが吹っ切れた俺は思いきり口を開けてオーガを丸のみにしようとする。


(……………じゃあな、俺のともだ―――――親友。またこの世界に転生したら、今度もまた親友になってくれ。)



最後にそう言って、俺は一思いにオーガを丸のみにした。

 ――――――こうしてオーガはどこに繋がっているのかも分からない俺の胃袋へと収まったのだった――――

読んでいただいてありがとうございます!

 今日、最近更新していなく久しぶりにページを開いたらブックマークが一件減っていました……………。


しかし、めげずにこれからも頑張っていきます!


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