角を無くしたオーガ
うぉぉぉぉぉぉ!!
最近ブックマークが一日一件ペースで増えています!!読者が増えて本当にうれしい限りですね!!
よーし!!このまま書籍化だぁぁぁぁぁ!!
…………いや、調子に乗ってすみません。
61 角を無くしたオーガ
…………次に目を覚ましたのが何時間後なのかすら理解できないほど俺は眠りについていた。
特性【夜目】のお陰で目を凝らせば夜でも昼間と同じくらい見ることが出来るけど、ここは森の中なので夜でも昼でも結構暗かったりする。
(…………確か俺、オーガに【ドレイン】を使って魔力を吸い取ってたよな?解除したら急に眠くなったからそれで…………。)
気を失ったように眠った俺は眠っている間夢も何も見なかったので、とりあえず眠る前のことを頑張って思い出すことにした。永眠キノコを食べて永眠に近い眠りについてしまったオーガを起こすために【ドレイン】を使ったのは覚えているし、その後謎の疲労感に襲われたことも覚えている。
(…………!!そうだ!!オーガは?)
頭の奥底に眠る記憶を頑張って思い出しているところで、【ドレイン】を使ったことでオーガが少し反応したことを思い出した。確か解析の人が「対象の魔力が枯渇します」とか言って警告もしてきたはずだ。
少し期待をしながら寝ていたオーガに目を向ける――――
――――が、俺が眠る前までは確かにいたはずのオーガが居なくなっていた。
(…………ふぁい?オーガさんどこ行った?)
折角俺が疲れて寝落ちしてしまうほど頑張ったというのに、起きたのか起きていないのかすら分からない状況になっていた。
ただ単に寝相が絶望的に悪いだけなのかもしれないし、たっぷり眠ってさっぱりしたから顔でも洗いに行ったのかもしれない。…………まあ、高確率で後者は無いだろうな。確かに魔力切れというのは命の危険を感じるのに十分かもしれないけど、それで起きたら拍子抜けもいい所だ。
何十年間眠っていたのかは知らないけど最弱のアンデッドモンスターが習得した【ドレイン】で命の危険を感じさせることが出来る何て…………他にまともな手段で起こそうと思っていた人たちに比べたら邪道もいいところだ。
(【解析:オーガが行った場所】。)
《 それは解析できません。 》
…………まさかの解析拒否でした。
何でもかんでも【解析】を使えば全部解決なのかと思っていたけど、どうやらそういうわけではなかったらしい。ただ『解析のレベルが足りない』ということでなく本当に解析ができないというのは初めてかもしれない。…………全然違うたとえだけど告白もしていないのにフラれた気分だ。
い、いや!?別にモテないわけじゃねえし?地球の時35歳まで童貞の彼女いないだったけど(彼氏もいない)、仕事が忙しかっただけだし!?…………うん…………きっと…………そうだよ?
(やべえ…………自分で自分の首を絞めているとしか思えない…………。)
《 大丈夫です。現在の心の声は私しか聞いていません。 》
余計なこと言ってくるんじゃねえ!!ノワールと離れた途端に話しかけてくるのは止めてくれよ!!
…………ちょくちょく頭の中に直接話しかけている解析の人。ノワールと一緒の時はそんなに…………というか全くってくらい話しかけて来なかったのに、ノワールと離れた途端に話しかけてきた。…………いや、もしかしたら俺って寂しがりやだと思われているの?
…………間違ってはないけど――――ってそんなこと言ってる場合じゃねえ!!
ようやく目的を思い出した俺は急いでオーガを探しに行く。
※※※
(【透視】!!)
一度オーガを見つけたと言うのに、またオーガを探すとは思っていなかった。頼りの【解析】が使えない時はどうしようかと思ったけど、思いのほか早く足跡を見つけることができた。一応足跡を解析してみたが、その時はキチンと「オーガの足跡です」と教えてくれた。
現在【透視】のスキルを発動しているのはオーガが警戒して【認識阻害】や【保護色】を発動させている可能性を踏まえてのものだ。
…………でも、見つけられるのはただ淡々と森を進むオーガの足跡だけで本物のオーガを見つけることはいまだにできなかった。幸いオーガから【ドレイン】で吸い取った魔力があるので魔力には当分困らないだろうが、それでもずっと消費しているわけにはいかない。
魔力を持っていない俺などそれこそ最弱もいいところだ。
(…………ん?あれは…………オーガなのか?)
再びオーガを探し初めて20分。背の高い木々や茂みの間にできた獣道のような道を進んでいると、ようやく少し開けた場所に出ることが出来てその中心に俺から見て背中を見せている大きな体があった。さっきのオーガと同じ赤い体を持っていて、頭には角も生えていなかった。
(どうも!こんにちは!私はゴーストのハルトです!!)
それがオーガだと確信した俺は歩くペースを上げてオーガの背中までたどり着く。そして心の中で元気よく挨拶をして、とりあえず礼儀を見せることにした。
亜人族かアンデッドモンスターをどう思っているのかは知らないけど、舐めた態度をとったらさっき会った人間と同じ態度をとられそうだ。正直に言うとあんな態度をとられると結構心に来るものがあったりする。
「…………ゴーストだと?この森にゴーストは存在しないはずだぞ?一体どうやって入って来たんだ?」
と、俺が心の中で挨拶をした結果オーガは向けていた背中をくるっと回転させてこちらを向きながら言った。さっき見たのは寝顔だったので起きてる顔を見るのはどこか新鮮だ。体が赤いから目も赤いのかと思ったけど、意外にも目は優しそうなおじいちゃんのような目をしていて瞳の色は美しい海のような青色だった。赤い体に青い目…………なぜか分からないけど俺の心を高ぶらせていく。
「質問に答えろ…………さっき話しかけてきたのがお前なら俺の質問が理解できたはずだ」
(えっと…………この森には強制的に送られて…………それでオーガを起こせば出られるって言ってたから。)
「なに?では俺のことはお前が起こしたのか?」
急に態度を一変させたオーガは俺を見る目も変えて、座り方も胡坐から正座へとかわっていた。思わず拭いてしまうほどの光景で、思わず笑いがこみ上げてくる。
そんな笑いを必死に耐えてから大きく咳払いをした俺はオーガが聞いてきた質問に答えることにした(咳払いはイメージです)。
(一応そうだけど…………別にそんな大したことはしてないぞ?ただお前の体に触れて【ドレイン】で魔力を吸い取ってただけだし…………。)
「ど、ドレインだと?そんなスキルを習得できるゴースト何て聞いたことがないぞ。
い、いや!最初はお礼を言うのが筋だな!!俺を起こしてくれてありがとう!!」
少し動揺しながらも俺に深く頭を下げるオーガ。俺がオーガを起こしたと言うことが信じてもらえたみたいだけど、こんな簡単に終わっていいものなのか?確かにこの森を抜けるための条件は満たした。この森を出るには主を起こさなければならない…………そして俺は現主であるオーガを起こした。
だとすれば既に森から出れるということだ。でも、どこか俺の胸に引っかかる。何かしたのに何もしていないような…………。
こんな気持ちは初めてだった。不完全燃焼というものなのか?確かに今まで俺が体験してきたことに比べたら序の口もいいところだ。
(…………そう言えば、オーガって言うと角が生えてるイメージだけどお前は角が生えてないんだな。)
難しいことは考えないようにして深く頭を下げるオーガに今度はこっちから質問することにした。そして、俺の質問を聞いたオーガは顔を上げて質問に答えようとするけど、その瞳はどこか辛そうだった。さっきの瞳とは違い、何かを訴えかけるような瞳だった。
「…………いや、角が生えてないのは俺だけだ。俺は角が生えない…………いや、『角を無くしたオーガ』なんだ」
悲しい顔をしながらそう言ったオーガ。その顔を見るだけでも何となく分かってしまった。
俺はまたとんでもないことを聞いてしまったと―――
読んでいただいてありがとうございます!!
次回もお楽しみに!!…………と言いたいところですが、今週から『テスト週間』となってしまいました…………。さすがにそろそろやらないとかなりヤバいので、もしかしたら更新ペースが遅くなってしまうかもしれません。
できれば更新したいところですが、更新できなかった分はテストが終わったら馬鹿みたいに更新します!!




