神の使い魔
結局更新してしまいました!!
皆さんお待たせいたしました!!
6 神の使い魔
(……巫女?それって、神様を祭るような感じの人のことか?)
ようやく大体の種族について説明が終わったのかと思ったが、今度は何と人間の説明が始まっていた。元人間の俺にとっては単なる愚門でしかないと思っていたけど、【巫女】という新しい単語が誕生したことに少し驚いている。
俺が知っている巫女と言えば、白い着物?みたいなのを着て、よく初詣とかでお守りとか売ってたり、何か踊ってたりする人だけど……まさか被っているわけではないよな?
「ふむ。大体はあっているが、やはり貴様の頭ではその程度だろう。巫女というのは別名【神の使い魔】とも呼ばれる人間のことだ。当然、『女』とつくから女しかいない。そしてそれが、我々アンデッド族を倒すための技【浄化】を使えると言わけだ」
まじか。ていうかもしかしなくても、この世界って意外と地球と似てるところがけっこうあるよな。
エルフやら魔族やらと言った種族は当然出てこないが、言葉といいさっきの巫女といい、結構似ていることが多いな。
(えっと……その浄化って言うのは、俺たちアンデッド族を絶対に倒せるのか?)
「それはない。どんなことにも『絶対』は存在しないからな。特に我に限れば、相当レベルの高い巫女でなければ傷一つつくことはなかろう。レベルの差や、ステータスの差は戦いにおいてはかなり重要な要素だ。それに―――」
まるで何か辛いことを思い出したかのような真剣な顔をし、ひと呼吸おいてから再び語りだした。
「――我を倒せるほどの巫女が現れたりでもすれば、この世界のアンデッド族は全て殲滅させられるであろう!!フハハハハハ!!!我を倒せる者など存在しないのだ!たとえそれが魔王であったとしても、我を倒すことはできまい!!」
前言撤回!
やっぱりこいつは辛い表情なんてしてなかった。俺に少しだけでも情をもたせるためにあんな芝居をうったんだ。 ……そうだよ、こいつはこういう奴だった。
最後の最後で全部台無しにする最悪の奴だった。
確かにこいつの言っていたことが嘘だとは思わないし、むしろ本当だと信じている。 まだ一緒にいて少ししか経っていないが、こいつが半端ない力を持っているのは嫌でも分かってしまう。それこそ、『アンデッド族最強』と言っても過言ではない。
そのこいつが言うなら、きっと正しいのだろう。本当の強さがどのくらいなのか分からないが、とりあえず巫女<ノワールと思っていたらいいのだろう。
「ハルトよ……いきなり我をおだてても何もでぬぞ?」
(あ、聞こえてたのか。気にしなくていいよ。俺もそこまで本気じゃないから。)
そうだった。こいつは人(幽霊)の心を読めるっていう化け物だったけ。
じゃあ、珍しく俺がノワールを褒めたのも全部聞こえていたってことか。……それはそれで凄く気持ちが悪い。
心の声は相手に聞こえないからこそ素晴らしいというのに、こいつは容赦なくぶったぎって―――
「貴様……今の言葉はなかなかカッコよかったぞ。『心の声は相手に聞こえないからこそ素晴らしい』だったか?フハハハハハ!!!これは傑作だ!!我は今まで、こんなにも素晴らしい言葉は聞いたことがない!!この言葉を貴様がいた地球とやらで発表していたら、きっと大成功していたことだろう!!!フハハハハ!!!」
(ごめんなさい!許してください!!本当に止めてください!!そろそろ俺のHPは限界です。)
――言っている傍から心を読まれていた俺は一生懸命謝っていた。
今度こそ、薄い透明のこの体がタコのように赤くなっているような気がする(気のせい)。
だってさ……心の声って、やっぱり聞こえない方がいいと思うんだよ。その方が世の中上手くいくと思うんだよ。 だからお願いだから――
(――これ以上いじるのは止めてください!!!お願いしますノワールさん!!)
「フハハハハハ!!!これで貴様をいじれるネタが一つ増えたな!!」
もうやだ……こいつ。
「さて……貴様をいじるのはこのくらいにして、巫女について教えるのだったな」
(あ……いじられすぎて本来の目的を忘れてた。というわけで、巫女について説明を頼む。)
切り替えの早さが俺のモットー。
即座に態度を変えた俺は、いじられモードから聞くモードになって睨みつけるようにしてノワールの方を向いた。……正直、本物の幽霊に睨みつけられるって、かなりの恐怖だと思う。
この世界に鏡があるのか分からないが、この状態で鏡の前に立っていたら自分自身の顔に悲鳴を上げるような気がする。
「貴様がそこまで我を睨んでも全く怖くないが、とりあえず説明を続けよう。確か浄化のところまでは大体話したか。じゃあ、今度は『何故、我々アンデッド族を狙うのか』を説明してやろう」
(え?いきなりそれ話ちゃうの?何かこう……もっと簡単な内容なかったの?)
「これが一番大事だからな。まず、【巫女】が別名【神の使い魔】と呼ばれる理由は、我々アンデッド族を倒せるからだ。我々アンデッド族は、別名【神に背く者】と呼ばれている」
(なるほど。神の意志に背いて産まれた俺たちは、神の力が宿っている巫女に殺されるってことか。)
俺がそう答えると、ノワールは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしてこちらを向いていた。
何というか、まるでギャグマンガに出てきそうな顔をしている。今までは俺がいじられ役だったが、この顔を見た後ではもしかしたら入れ替えが出来るかもしれない。
それほどまでに間抜けな、ギャグマンガに出てきそうな顔な顔をしている(マジで)。
「き、貴様……なぜわかったんだ?貴様の知力は我が気に入った一つだが、正直そんなに早く理解できるとは思わなかったぞ。元人間というのは嘘ではなかったのだな」
(え?信じてなかったの?俺ってそこまで頭悪そうに見えた?これでも一応大学出てるし、会社でもそれなりに頭いい方だったし。て、テレビでやってるクイズ番組も結構正解するし(選択問題のみ)。)
最後の悪あがきは意味なかったかもしれないし、言い訳だけを聞いたら頭よさそうには聞こえないだろう。
てか、この世界にテレビがないことくらい知ってるし、電気はあるかもしれないけど、それでも家のロウソク代わりだろう。
「貴様の知力の高さはこの際どうでもよい。正解したなら説明する手間を省けたからな。そして、さっきもいった通り我々アンデッド族は、神の意思に背いて産まれた存在だ。だから、神の力を持っている巫女に浄化をされるということだ」
(そうか。じゃあ、巫女が別名【神の使い魔】何て呼ばれる理由も分かった気がする。でもさ、仮にその巫女がいたとしても他の人間とは区別がつくのか?)
「区別はつくぞ。なぜなら、巫女と呼ばれる者は全員『紅い目』をしているからな。だから、お前のようなアンデッド族最弱は紅い目の人間に会ったら即座に逃げることを進める」
(紅い目か………それ以外の人間とか動物ってのは俺たちを浄化できないんだよな?)
「ああ。元々巫女の数は世界でも300人くらいしかいないからな。だから我々アンデッド族が増えるのだ」
………え?300人?
それだけしかいないの? まあ、よくよく考えればアンデッド族が増えていく理由は巫女の数が少ないということになるけど、それでももう少し多いと思っていた。
………待てよ。 俺は今重要なことに気がついた。 この世界に来て、二週間とちょっとくらい経ってからようやく重要なことに気がついた。
俺は今幽霊だ。 心臓も、足も、耳も、内蔵のほとんどがない。
乗り移る予定だった体見つけるまで、俺って恋愛できなくね?
えーと………いつもに比べれば、文字数が少ないとおもいます。
それについては本当に申し訳ございません。
12月16日の更新をお楽しみにしていてください!!
それでは皆さん、読んでいただいてありがとうございます!