もう一人の元魔王候補
新章スタートでぇぇぇぇぇす!!
これからもよろしくお願いしまぁぁぁぁぁす!!
51 もう一人の魔王候補
(それで?次はどこを目指すんだ?)
新しい仲間、竜族のコアトルちゃんが増え、また新たなる目的地を目指すことになった。今回の騒動で俺のレベルは全く上がらず、一体いつになったら【乗り移り】というスキルを習得することができるのだろう?
途方もない千里の道というのはまさにこのことだろうか?でも、いつになってもゴーストのままは少し嫌だな。いつまでたっても味覚がないし、人間に警戒をされるのも結構心にグッとくるものがあったりする。…………何と言うか、『汚物を見る目』という感じ?
「…………貴様は相変わらず自虐するのが好きだな。確かに汚物を見る目で見られるのは悲しいが、わざわざ思わなくてもよいだろう。まあ、それはそれとして次も目的地だが………」
俺の心の中を当たり前のように読んでいるノワールは的確なツッコミを入れてくれるが、ここでのツッコミは正直に言うといらない。確かに反応がないと悲しい時もあるけど、それでも放ってほしい時だってあるのだ。まあ…………それはそうとして次も目的地は気になってしまう。
「次は我と同じ存在の場に行くのだ。分かりやすく言えば、我と同じ元魔王候補だ。奴は一応魔術師として通っているが、魔術以外も並以上に使える」
…………ふぁい?なに?元魔王候補?
ノワールの言ったことが一瞬分からなかった。元魔王候補という単語を聞いて思い浮かぶのはノワールみたいな奴ということで、正直に言うと嫌な予感しかしない。別に行くのは構わないのだが、魔術師と聞いたらヤバい奴に決まっている。
「フハハハハハ!!安心するがいい!!今から行く魔術師…………ルインは我よりも弱い!!万が一城ごと破壊しようとしたら我が全力で止めてやる!!」
自信満々に答えるノワールだけど、俺が心配していることと少し違う。確かに暴れられたりしたら大変だけど、皆が皆ノワールというわけではないのだからいきなり城を破壊するなんてことはないだろう。…………多分…………大丈夫だよね?
「大丈夫でござるよ。仮に何があったとしてもノワール殿が守ってくれるでござる」
「そこでモンよ…………。今からサプライズのために準備がある。だから少し手伝ってもらうぞ」
フォローに入ってくれたモンまでも利用してしまうというノワールさん。サプライズという単語を聞いた瞬間に、ノワールが言っていた『ルイン』という人が今までどれだけ苦労してきたか何となく分かった。きっと今までノワールに振り回されてきたのだろう。
(それでノワール。ここからどんくらいかかるんだ?)
「―――3秒だな」
―――ふぇ?
俺がかかる時間を聞いた途端にパチンッと指を鳴らしたノワール。その瞬間に目の前に映っていた映像はまるっきり変わり、草原の光景から不気味な雰囲気溢れる城へと変わっていた。いきなりのことで取り乱してしまったが、これはノワールお得意の転移だろう。そろそろこのメチャクチャ簡易式転移も慣れてきたところだけど、できれば圧胴する前に一言言っておいて欲しかった。俺はまた歩いたり空を飛んだりして向かうのだとばかり思っていたから、いきなり転移してショートカットするとは思わなかったのだ。
だが、それなら城の外ではなく『ルイン』という人の目の前に転移すればよかったというのに、なぜそれをしなかったのだろう。
(なあ、何でわざわざご丁寧に城の外に転移したんだ?いつものお前なら目的の目の前に行くだろ?)
「…………確かに我も最初はそうしようと思ったが、この城には結界が張られている。…………どうやら見ないうちに姑息な力を手に入れたらしい」
いやいや…………姑息って言うのは可哀想でしょ。だって結界ってお前みたいな奴が不法侵入しないように家の鍵をかけているようなもんだろ?むしろ結界を破壊できないお前の方がしょぼくね?
そんな感じでノワールのことをバカにしているような口調で言うと、ノワールはいきなり城に向かって手を伸ばす。不気味な城は、そんなノワールの右手を弾くように紫色のエネルギーを発する。
どうやら結界は触れたらそんなエネルギーを発するらしい。
「よく見ているがいい。我にかかればこんなもの…………簡単に破壊できる」
―――バシュ!!
ノワールがそう言った瞬間、突然何かがはじけたような音が響き、発していた紫色のエネルギーが消失した。ノワールは何も言わずに進んでいく…………どうやらもう結界を破壊したらしい。俺とモン…………そしてコアトルちゃんもノワールの後をついて行き、そのまま城の領地へと入って行く。
…………大分進むと、人影のようなものが見えてきた。段々とそれがはっきりと見え始め、俺たち(ノワール)の姿を見た瞬間に大きなため息をついた。
「ハア…………俺の結界が破壊されたから見に来たが、よりにもよってお前か…………」
「久しぶりに会ったというのにそれはないのではないか?貴様は相変わらず我を超えることはできないようだな。あの程度の結界なら転移は防げても我のスキル【打ち消し】でなら破壊は容易だ。貴様のSPS【創造】なら、それも容易いであろう?」
ため息をついた男―――ルインは短く整えられた黒髪をかき上げながらノワールを応対する。身長は二人とも変わらないほどの大きさで、どちらかというとルインの方がシュッとしているような感じだ。ノワールもこのくらい貫禄があってくれると嬉しいのだが、今から求めてもおそいだろう。
さっきからため息ばかりついているルインは一度俺たちが来た理由を知るために城の中へと案内をしてくれた。
外見は不気味な怖い城だったけど、中に入ったらモフモフのぬいぐるみが沢山あった。これが噂に聞く『ギャップ』というやつなのだろうか?モフモフのぬいぐるみ…………シャンデリア…………メルヘンチックな置物もたくさんある。前の城の所有物かとも思ったが、何回か落ちている熊のぬいぐるみを拾ってキチンとキレイに戻している。…………どうやらルインの私物らしい。
見た目はこんなに貫禄があるというのにモフモフのぬいぐるみが好きとか…………ノワールとは違った意味でヤバい奴だな。
「ここが客間だ…………散らかっていて悪いな」
ガチャっとドアを開けてくれたルイン。中に入って見てみると、日本にあるディ〇ニーのキャラクターのような人形やフィギュアが沢山置いてあった。いくら城とはいえ広さは俺の住んでいたアパートくらいの広さで、中央にテーブル(隅に小さな羊のぬいぐるみ)。そのテーブルの左右に長椅子が置いてあり、壁紙は全部水玉模様だ。よく見たら天井の4隅にはそれぞれ風船が張り付けられていて、まるで誰かのお誕生日会みたいになっていた。
「ルイン、早くこの城で一番高い茶を出すがよい。客人を待たせるのは人として失格であるぞ」
「アポ無し+結界を勝手に破壊したお前に出すお茶は無い。出してほしいならちゃんとアポを取って、結界を破壊せずに入ってこい」
…………もっともな意見だ。仮に俺がルインと同じ立場なら同じことを言っていたことだろう。
けどノワールはそんなことを全く聞かず、勝手に自分で入れてきたお茶を飲んでいた。しかもお茶を入れているカップがこれまた可愛く、動物の絵が彫られているようだ。
「貴様ならそう言うと思ってな…………生憎だが、さきほどキッチンから持ってきた」
「ちょっと待て…………それってうちで一番高いお茶じゃねえだろうな?いつも魔術の本を読む時だけと決めているのに、もしお前が飲んでいるなら俺は今からこの城ごと破壊する」
「フハハハハハ!!安心するがいい!!我が入れてきたのはこの城で一番安い茶だ。だが、我は安いお茶でも美味しく飲む方法を知っている。これで味は最高級のと変わらん」
…………何その主婦が喜びそうな無駄な技術。今度聞くから教えてねノワール。
そんな茶番はこのくらいにするとして、ノワールがお茶を飲み干して話は始まることになった。
「…………時にルイン。貴様は現在魔族が増えているということを知っているか?」
――――バリンッ!
ノワールがその言葉を放った瞬間、何かが割れるような音が部屋に響く―――
…………残念なことに、ここから三日間大会でございます。
金曜日、土曜日、日曜日連続で大会があるなんて…………一体いつ休んだらいいんでしょうかねえ?
というわけで、もしかしたら疲れ果てて更新ができないかもしれません。そしたら本当に申し訳ございませんが、気長に待っていてください。




