再び訪れた日常
うおぉぉぉぉ!!!
今回でちょうど50話でーす!!そして、いつのまにか10000pv達成していましたぁぁぁぁ!!
これからも頑張りまーす!!
50 再び訪れた日常
「しかしハルトさん…………一体どうやって私を英雄にするのですか?私は一度ヨセフに負けた身…………そう簡単に長を倒したことを認めてくれるでしょうか?」
(それについては問題ない。ノワールが全部手を回してくれる。)
そう。予定ではこの竜の里にノワールが全力で【黒炎竜】を放つ…………そこでお父さんがその攻撃を防ぐと言う手筈だ。正直に言うと、ノワールが全力で【黒炎竜】を放ったらこの国まるごと灰となる。最初に威力の見せしめとして小規模の黒炎竜を放ってもらうが、そのつぎに全力で放った黒炎竜を防げば、竜の里の連中は改めてお父さんの力を認めるだろう。
「確かにそうかも知れませんが、私にあの方の力を防げるほどの力はありません。……………私が全力を出しても届くかどうかです」
…………マジかい。どんだけ半端ねえんだよノワールの黒炎竜。確かにノワールがいつも半分ほどの実力を出していないとなると納得できるかもしれない。けど、最も強い種族である竜族が全力を出しても防げないほどとは思わなかった。
でもまあ…………ノワールならその辺もうまくやってくれるだろう。
(多分その辺もノワールがうまくやってくれ――――)
―――――ドガンッ!!
その時、いきなり爆発音と灰の臭いが俺たちを包み込んだ。一斉に音の鳴った方を向いてみると、竜の里から複数天に向かって煙が上がっている。その煙の上がる勢いと爆発音……………今まで何回か目の当たりにしたことのある【黒炎竜】に間違いないだろう。だが、ノワールの黒炎竜でないことはたしかである。
(…………なんだあれ?)
「私の里を…………ッ!」
(……………え?)
―――バサッ!バサッ!
いきなり血相を変えて飛び立ったお父さんは、脇目も降らず里に戻っていく。きっと今黒炎竜を放った現行犯を捕まえようとしているのだろうが、ノワールに気取られる前に攻撃を放ったと言うことは相当な強者だ。いくらお父さんでもどこまで時間を稼げるものか…………。
「ハルト…………行こう。私につかまって」
(ふぇ?いきなりなにを―――――)
お父さんを追いかけたいということなど話かけられる前から分かっていたことだが、理由を聞いている途中で俺の思考回路は麻痺していた。あの時に体験した半端ないスピードに比べれば大したことはないけれど、いきなり空を飛ばれると誰でも驚いてしまう。
(うぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!死ぬぅぅぅぅ!!)
「…………暴れないでハルト。大丈夫……………今はもう…………以前の私とは違うから」
(うん分かってる。というか、空をちゃんと飛べるのかとか、いきなり落ちたりしないかという心配じゃないて、今の俺の体勢の問題なの。)
――――ポニュン………。
いきなりコアトルちゃんが俺のことを抱きつくように掴んできたので、現在はコアトルちゃんの胸に収まっている。年齢的にも精神的にも子供とはいえ、たまに柔らかい感触が俺の顔を襲う。正直に言うと嬉しいが、不可抗力なので罪悪感が半端ない。たしか日本の誰かが『熟していない物を慈しむのもいい』と言っていたような気もするけど、この助教はまさにそれを感じろということだろうか。
「ハルト…………もう少しで着くから…………」
(あ、はい…………何かすみません。)
俺の心の声がコアトルちゃんに聞こえているということをすっかり忘れてしまっていたため、少し低い声のトーンで伝えられた。とりあえずここは心を無にしてやり過ごすしかない。
煩悩ばかりの俺には難しいかもしれないけど、人間は
やればわりとなんでもできたりするものだ(自分は今はゴースト)。
「ハルト…………あそこにノワールがいる」
(ん?あ、ほんとだ…………。)
竜の里が近くなり、既に半壊している砦の屋上ではノワールとモンが待っていた。俺のコアトルちゃんの存在に気がついたノワールは俺がコアトルちゃんの胸に収まっていることに対して笑い、メチャクチャ馬鹿にしているような顔をしてくる。
ノワールのことを見つけたコアトルちゃんは高度を下げてノワールとモンが待つところに降りていく。
「ハルトよ…………貴様の前世が儚いものだったからと言って、まさかコアトルに手を出すとは思わなかったぞ」
(うん。絶対言うと思ったけど、やっぱり言われるとメチャクチャムカつくな。正直に言うと、俺はお前に【魔力撃】を全力で打ち込みたいよ。)
降りた瞬間にいってきたノワール。確かにそんなことをいってくるという予想はしていたが、実際予想通りにいわれるとメチャクチャムカつく。だが、ノワールは俺の怒りのツッコミを華麗に回避してこの竜の里を襲撃した奴の目星をつけていた。
「…………正直に言おう。今回竜の里を襲撃してきたのは魔王だ。もちろん直接手を下しているわけではないが、魔王は【感覚同調】といSPを使って、かけた対象の視覚や聴覚を通じて情報を得ている」
そんな半端なく強いスキルなんて想像もしたくなかったけど、そんなスキルがあるという予想はしていた。今回も魔王が直接関わっていないということは、ヨセフの他に刺客を送ってこちらの状況を把握していたのかもしれない。
「あら~懐かしい顔があるじゃない~」
「……………何者だ?」
そんなとき、いきなり上空に現れたのは一人の少女だった。外見はそれなりに幼く、大体12~13歳くらいだろう。赤ずきんのような服装に赤いずきんを被っている少女は、隠しきれていない綺麗な金髪をみつあみにしている。
赤いルビーのような瞳なのだが……………なぜかその目はどこかおかしかった。
口調も外見からは想像もつかないほど色っぽい口調で、まるでノワールと顔見知りのようなことを言う。
「…………何者ねえ?あなたはよく知っているでしょう?だって、ともにあの時代を生き抜いたのだから」
「…………貴様も生き残りか。だが、それは答えになっていない。我が聞いているのは、その口調の主のことを聞いている。貴様が生き残りだろうと、我には関係がない。貴様が魔王なら我が今すぐにでも消し飛ばすだけだ」
そういいながらノワールは指を動かす。どうやら【天滅】の準備は完了しているらしく、いつでも放つことができるらしい。
すると、少女の外見を被った魔王は気味の悪い笑みを浮かべながら口を開く。
「うふふ…………せっかくだけど今すぐにあなたとケンカする気はないわ。でも、あなたは―――――あなたたちは私の計画を邪魔した。それだけは覚えておいて。本当はこの国ごと滅ぼしたいけど、そんなことをしたらあなたにこの体ごと消し飛ばされそうだし」
「安心しろ。痛みを感じさせる前に消してやる…………貴様は3秒ほど目を瞑っていればいい」
「あらあらいいの?この体は単なる借り物…………あなたがこの体を消し飛ばしても、消えるのはこの子だけ…………私の体と命は別の場所にあるのだから」
できないでしょ?という無言のプレッシャーを当ててくる魔王…………確かにこの状況ではノワールは手を出すことができない。ノワールはアンデッドでありながら人間を襲うことを極端に嫌う。だが、この次に魔王がとる行動を誰も予想することができなかった。
「それにしてもあなたが邪魔をするとは思わなかったわ。永遠と放浪者をやっているのかと思ったけど、あなたが世界を救うなんてね………。
たった一人の女を救えなかったあなたが世界を救えるのかしら?」
「!!?」
――――まるで呼吸をするかのようかに魔王が吐いた爆弾。
その事件とやらをしらない俺でもヤバイことだということくらいはわかっている。刹那、その場はノワールの気迫と覇気によって時が止まったかのように凍りついてしまった。
「…………貴様…………それ以上口を開くな」
「あらあら怖いわねえ…………でも、あなたにここで暴れられると後々面倒だし、今日のところは引くとするわ。
けど、あなたたちは私の…………魔王の計画を邪魔した…………それだけは覚えておいて」
そして霧のように消えた魔王…………。
ノワールは力を一気に抜き、周囲を凍りつかせていた気迫や覇気は全く感じられなかった。
「…………やはりそうなのか」
(ノワール?)
「さあハルトよ!今すぐに作戦を実行するぞ!!この国に滞在していては、関係ない人まで巻き込む…………それだけはなんとしても防ぐのだ!」
(あーはいはい。)
…………何かノワールがつぶやいたような気もするけど、いつも通りのノワールなので放っておくことにした。
かりになにか呟いていたとしても、事件のじの字も知らない俺が首を突っ込む必要はない。だから俺はノワールの言う通りに準備を始める。
こうしてノワール考案『コアトルちゃんのお父さんを再び長にするぞ』大作戦が実行されることとなった。
※※※※
「では行くぞ」
(へいへい…………ったく、もう少しゆっくりすればいいのに。)
作戦を実行した俺たちだが、見事に大成功することとなった。俺とノワールのもくろみ通りコアトルちゃんのお父さんは英雄となり、再び竜の長の座につくこととなった。人間側との間の亀裂は綺麗さっぱりなくなり、俺とノワールとモン…………そして――――
「待って皆…………私も置いていかないで」
――――またも増えた新たなる仲間…………コアトルちゃんだ。
竜の里には再び平和な日常を取り戻したのだが、コアトルちゃんは俺たちに着いていくと言う。ノワールは戦力が増えたと喜んでいるが、35歳のおっさんと年齢不詳のアンデッドと旅をしていいのだろうか(モンはメスなのでセーフ)。
「大丈夫……………私はそんなの気にしない」
コアトルちゃんは俺の方を向いて親指をたててくるけど、全くもってそいう問題ではない。
…………まあ、別にいいか。ノワールだけでも賑やかで、モンが増えてさらに賑やかになり…………今回はコアトルちゃんも仲間になった。
これからもっと賑やかになりそうだ。
でも、ここで俺は重要な事件に気づく。今回の竜の里の事件…………俺はそれでレベルが全く上がっていない。
いったい俺はいつになったら【乗り移り】というスキルを習得できるのだろう?
読んでいただいてありがとうございます!
次回からは新たなる章がスタートします!
新章スタート!!




