信じる
どうもココアです…………。昨日は少し大会がありまして、今日は大分お疲れのココアです。
もしかしなくても誤字とかがいっぱいあると思いますが、そんな時は批判の感想と慰めと共に教えてください。
42 信じる
(それで、明らかに俺よりも強い力をコアトルちゃんはこれからどうするんだ?俺は友達だから、多分ピンチであろうノワールを助けに行く。でも、コアトルちゃんはまだノワールと友達じゃない。)
「…………そんなの分かってる。でも、私は行かないといけない。あなたの言っていた通り、何もできないからって何もしないなんてことはできない。私はこの里を…………皆を助けるためにノワールの元に行く」
さっきまで自信がなく、迷いがあったような顔とは違っていた。完全に覚悟を決めたような顔をしているコアトルちゃんは俺のことを真っすぐ見つめながら言ってくる。その顔は誰よりも強い意志を持っているようで、その気持ちは誰よりも強いみたいだった。
どうやらもう心配はないようだ。…………まさかとは思うけど、ノワールはこのことを想定してコアトルちゃんを絶望の底に落としたのか?俺が今まで生きた中で(既に死んでいる)絶望の底にいる女の子を救う方法を知ってるとでも思ってたのか?そんなことを知ってたら俺は35年間も童貞をやってねえ。この世界に来てやりなおして、美少女ハーレムを作るぞーーー!っていうことでもいいけど、外見は美少年で中身は童貞のおっさん(35歳)何か好きになる奴なんていないだろ。
中には年上の人が好きっていう人もいるかもしれないけど、俺はそんなに大人の雰囲気が出ているわけでもない。むしろこの世界に来て心が幼くなったと思えるくらいだ。今回こそうまく行ったけど、次は上手くいくかどうか分からないからこれがノワールに仕組まれたことだったとしたらちゃんと言っておかないといけないな。
「…………ねえ。その話はあとででもいい?」
きゃぁぁぁぁ!!今の聞いてましたかぁぁぁぁぁ!?止めてください!今の全部嘘です!嘘です!お菓子もおもちゃも買ってあげるから、今のは全部忘れて下さーい!!
コアトルちゃんが俺の心を読めることをすっかり忘れていた俺は、自分の中に抱いていた妄想を全てさらけ出してしまった。
俺の心の中を全部聞いてしまったコアトルちゃんは俺のことをゴミを見るような目で見ながら二歩、三歩と遠くに行ってしまう。なぜか分からないけど、今は女の子に逃げられる不審者の気持ちを痛いほど理解していた。でも、ここで俺には新たなる問題が発生してしまう。
(…………あれ?もしかしたら俺ってノワールが居る場所分からなくね?)
そう。ノワールが天滅を打ったのは知っている。でもその正確な位置を知っているわけでもなく、俺が天性な方向感覚を持っているわけでも土地勘があるわけでもない。…………そう。コアトルちゃんに励ましの言葉をかけたのは、俺がノワールの所に行くまでの道が分からなかったからだったりしてしまう。まあ、3割…………いや、2.5割ぐらいは…………。
俺は申し訳なさそうな顔をしながら少しばかり距離を取られたコアトルちゃんの方を向いた。正確な場所は分からなくても、何か背の高い建物から放出されていたのは分かってる。
(あの…………すみませんが道案内を頼んでもいいですかね?ノワールがいる場所の見当はついているですけど、正確な場所は分からなくて…………。)
俺がそう言うとコアトルちゃんはゴミを見つめるを少しばかり和らげてくれてから首を傾げた。どうやらその見当がついている場所の詳細を求めているらしい。それを察した俺はさっき思い出したやたらと高い建物だということを説明する。
すると、コアトルちゃんは数秒間頭を悩ませていたみたいだけど、何かを思いついたような顔をしていきなり俺の方を向いた。
「その場所はきっと里の砦。里の長とか、偉い竜が居る場所。その場所なら分かるから着いてきて」
あらイケメン…………。多分立場が逆だったとしてもこんなにイケメンには見えないことだろう。そう言えば道を聞いてから俺をゴミを見るような目で見なくなっていたけど、あの時はなにか考えたのかな?思えば頭を悩ませて何かを考えてる時も似たような目をしていた。
つまりあれは何かを考えてたってことになるのかな?距離をとったのは考えている時に漏れる声を聞かれないようとかだったりしたら軽くこじつけだけど成立する。
「そういえば――」
心の傷を癒すために勝手に憶測を立てたことがバレたのかと思って身構えてしまったけど、どうやらそういうわけではないらしい。もしかしたらさっき俺のことをゴミを見るような目で見ていたことと関係があるのかもしれない。これで俺のもやもやを解消してくれるなら別に何の質問でも構わない。
「あなたの名前は?」
あれ?これってもしかして怒っても良い奴かな?
メチャクチャ真剣な顔でいってくるけど、これは別に怒ってもいいよね?一応俺のもやもやは解消されたけど、まさかこの期に及んで名前聞いてくるとは思わなかったじゃん。確かに自己紹介するような時間は無かったけど、それでもタイミングってあるじゃん?
それに何回かノワールが俺の名前言ってたよね?俺ってそんなに影薄かった?元々半透明だからある意味薄いかもしれないけど、俺の名前を覚える必要もないってことですか?
…………まあ、別に許すんだけどさ。
※※※
――――砦の屋上。長い間魔王の手によって封印されていた最悪であり災厄の竜が召喚されてしまっていた。その災厄の竜に挑んでいるのは最強のアンデッドという異名を持っている者だった―――
「シャァァァァ!!!!」
「…………我の【天滅】を打っても、首がまだ三つもついているとは…………名前負けしない強さよ」
間違いなくこのヒュドラを丸ごと消せるほどの範囲の天滅を打ったはずなのだが、当たる瞬間に我の天滅と同じエネルギーを放出したらしい。むしろ首を二つ消せただけでもよかったというべきなのだろうか…………。
さらに――――
「おらっ!!」
「【縮地】」
――――ヒュドラだけでも厄介であるのに、それだけでなく魔族としての力を手に入れたヨセフの攻撃。ただの竜だけでも十分強いのに、悪魔の血を飲んだせいでさらなる力を手に入れた。認めたくはないが、この二人は強い。どちらか片方ならあるいは…………。
「助太刀するでござるよ」
「なに?」
スキル【縮地】によって現在ヨセフの死角に入り込んだ我だったが、そんな我を照らす太陽によってできている影から何かが飛び出した。それが【影移動】によって移動していたということは直ぐに分かった。そして、その口調と小さな体を見れば一目瞭然である。
それは我の数少ない仲間であり、頼りにできる者である魔獣…………モンだ。
まだヨセフの死角にいるため、こちらの姿は気づかれていない。
この際影からいきなり飛び出したモンが我の肩に乗っていることに関して何も言うまい。今、この場で大切なのは状況の解説でなくここに来た仲間を信頼することだ。
「説明は省くが…………貴様はヨセフの相手をしてくれ。今の貴様には手に余るやもしれんが、我が速いことヒュドラを片付けてそっちを手伝う」
「分かったでござる」
とりあえず互いにやるべきことは決まった。だが、これでは確実に勝てるとは言えない。この状況をひっくり返すのなら、あれを使う必要があるが、出来れば使いたくない。あれを使うのではなく、このモンのように仲間が助けに来ることを信じる。
…………いや、仲間ではなかった。我は絶対にこの場にくるハルトを信じることとしよう。
「それまで…………絶対に負けるわけにはいかないであるな」
「キシャァァァァ!!!!」
…………さっき消し飛ばした首が既に再生されている。この無尽蔵の魔力と生命力。再生が追いつかないほど攻撃を繰り返すか…………それとも、再生ができないほど木端微塵に消し飛ばすか。
「とっておきを使うとしよう…………」
パチンッ!と、久しぶりに本気で指を鳴らす。これだけでスキルが発動するのはありがたい。我が指を鳴らして発動させたスキルは【ゲート】というスキルだ。
我はこのスキルを習得してからというもの、ほとんどの攻撃を【ゲート】に通して回避していた。そのそもゲートというのは時空の狭間に繋げる扉なのだ。
我が指を本気で鳴らしたのは、今まで時空の狭間に送ったスキルを全部ヒュドラに当てるからだ。かなりの魔力を消費するが、それでコンマでも勝率が上がるなら構わん。
「…………」
「フハハハハハ!!さすがに気が付いたな!魔力と違って知力はゴブリン以下のヒュドラよ!貴様の周りには数千を超えるゲートが存在している。そのゲートからは、今まで我がゲートに送ったスキルのほとんどが放出される」
念のためこの砦の周りを【魔結界】で防御しておくが、それでも耐えられるかどうか分からないほどのスキルが放出される。我の【魔結界】が限界を迎えるか、それとも今までため込んできたスキルが切れるか。
それも気になるが、今は目の前のヒュドラを潰すことだけを考えることにしよう。
「さあ、存分に食らうがいい。貴様が封印されていた間に我が受けた攻撃を…………」
もう一度本気で指を鳴らす。すると、数千から数万にも及ぶ無数のゲートから一気に放出された。
…………これを受けてしまっては原型さえ保つことが難しいだろう。この怒涛の攻撃の連鎖はヒュドラだけでに的中し、これから数十分間はおさまらないだろう。
読んでいただいてありがとうございます。
最近気が付きましたが、どうやら私は二日に一話投稿というのが合っているみたいです。
というわけで次回の更新が二日後です。




