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先手はどちらか

どうもココアです!!今日ネット小説大賞の一次審査の発表がありましたが、見事に落ちてしまいました。

 でも…………まあ、気にせず書いて行きたいと思います!!


これからもよろしくお願いします!!

40      先手はどちらか



「フハハハハハ!!まさか殺してほしいという竜族が存在するとは思っていなかった!力を持っている種族でありながら、まさか殺してほしいというとは、我も笑いが止まらないものだ!!」


「俺はいたって本気だ。お前には分からねえだろうが、魔族になった俺には分かるんだよ。

 もう俺は…………竜族じゃない。もう戻れねえってな」


『さあ殺せ』ということを伝えるかのようにヨセフは無防備に腹を見せる。ここで我がこいつを殺してもいいかもしれないが、万が一にでもこいつを殺して場合は直ぐにでも魔王に情報が行くことだろう。

 最後の願いを叶えるという面で考えるならば、こいつを殺してもいいかもしれん…………だが、ここでこいつを殺したら魔王に目を付けられるだけでは済まない。


それでも…………我の体は勝手に動いていて、無防備に腹を見せるヨセフに手を伸ばしていた。我がここで【天滅】でも使えば、こいつは跡形もなくこの世界からいなくなることだろう。


「一つ問うとしよう。貴様を殺したら、我は魔王から目を付けられるだけでは済むはずがない。できることなら魔王との戦いは避けたいのだが、その時はどうるのだ?」


「…………確かにその可能性が高い。でも、お前はその程度のことでくじけるような奴ではないだろう?魔王様も言っていたが、間違いなく最強のアンデッドだ」


既に腹をくくったような顔をしながら言ってくるヨセフ。ここで我は少しばかり、こいつを殺さなかった時の未来のことを考えてみた。ここで我がこいつを殺さなければ誰も殺せないし、誰もこいつを殺さない。それだけでなく魔王の目論見通り戦争が始めるだけだ。

 こいつを説得しないかぎり戦争は終わらない。こいつを説得する方法は殺すしかない。


…………だとすれば答えはもう既に決まっている。



「悪く思うな…………ヨセフ」


我は手を無防備に腹を見せるヨセフに手を伸ばし、スキルを発動する――――






「【魔拘束】」



――――我はスキル【音速走】を使ってヨセフとの距離を一気に縮め、唖然としているヨセフの顔に触れながらスキルを発動させた。【魔拘束】とは魔力を使って拘束するスキルで、魔力が高ければ高いほど強く拘束する。さらに、ただの拘束とは違って体の部位に絞って活動を束縛することができる。

 今我がヨセフに活動を束縛したのは、口以外の全部だ。つまりこいつは我が解くまで口以外動かせない。


「何だ…………?これは…………」


口しか動かせないヨセフは、ようやく自分が置かれている状況を理解したみたいで何とか力づくで解こうとする。だが、我の【魔拘束】はそこまで弱い物ではない。力づくで解かれる程度の【魔拘束】を使うならば、最強など名乗っていない。


「どういうことだ?俺を殺してくれるんじゃないのか?」


「さっき貴様が言っていた所でいくつか腑に落ちない点があったのでな。貴様の本心を聞くまで拘束させてもらったぞ」


「…………俺の本心は言っただろ?俺はもう戻れない…………竜族に戻れないんだよ。このまま魔族として生きていくんだよ」


ヨセフはやけくそのように我に言ってくる。一般人ならつい騙されてしまう所だが、我はここである違和感に気が付いた(我も最初は騙された)。ただのこじつけかもしれないが…………我の直観が自分に伝えている。



「貴様はさっきから『戻れない』と言っていたが、()()()()()()()()()()()()()()()。我が腑に落ちない点は他にもあるが、一番気になったのはここだ。最初は流していたが、貴様は異常なほど同じことを言っていた」



…………そう我が言いたかったのはこれだ。こいつは不自然なくらい同じことを言っていた。だが、我の記憶を確かめても『戻れない』と言っているだけで『戻りたい』とは一言も言っていない。

 しかもこいつは魔王に隷属している。仮に『騙せ』という命令を出されていたとしたら簡単に人だろうと簡単に騙す。


「…………」


ヨセフは見破られたことに動揺しているのか…………さっきから顔色も優れない様子で、冷や汗のような物も大量にかいているようだった。我はそこにつけこむようにして、またも怪しい点を言うことにした。


「さらに我がここに来て【探知ロケーション】を展開した結果、この屋上の奥に魔族特有の魔力反応がある。その魔力反応は恐らく、条件発動式の術式だろう?今どき条件起動の術式などを使える者など魔王並の奴にしかできん。そしてその発動条件は…………貴様、『ヨセフが死ぬこと』。違うか?」


我がこの短時間で導きだした答え。仮にこれが完璧な答えでなかったとしても、明らかに答えに近い答えに導きだせたことだろう。この屋上に来た時から感じていたことだが、魔族特有の魔力反応があるのは分かっていた。

 それはてっきりヨセフのものかと思っていたが、こいつが不自然なくらい『戻れない』と言った時に確認した。そしたらびっくり!メチャクチャ複雑な条件起動式の術式だ。

恐らく召喚の術式だろうが、召喚の術式は召喚される者が強ければ強いほど複雑に作る必要がある。


「…………すごいな。さすがは最強のアンデッド魔王様がお前を特別視する理由が分かったような気がする」


「そうか。そんなことはどうでもいいが、答え合わせといこう。我の…………我が導き出した答えは合っているか?」


年甲斐もなくワクワクしてしまっている。なぜか分からぬが、こういう時はやたらと鼓動が早くなって興奮してきてしまう。ヨセフは少しばかり俯きながら何かを考えているようだ。

…………ようやく顔を上げると、不敵に笑いながら我に言う。


「さすがだ…………()()()()()。まさか俺様が本性を出すとは思ってなかったが、やっぱりすげえな…………お前」


今までと全く口調が違う。真実味を着せるために口調を変えていたということか…………?だが、今更その程度のことで動揺したりしない。むしろ本性を見せてくれたお陰でヨセフの実力がより分かるようになる。

そしてさっきから我を持ち上げているが、またも顔を変えたヨセフは今度は我をバカにするような顔をしながら 


「でも魔王様の方がすげえな。お前じゃ絶対越えられねえわけだよ」


今度は我をこけ下ろして魔王のことを持ち上げ始めた。この魔王にも引けを取らない全知全能の我をこけ下ろして魔王のことを持ち上げるなど笑止千万。よほどこいつは死にたいらしい。だが、こいつを殺しても条件起動式の術式が発動してしまうだけだ。

 だとすれば【収納魔法】を使って朽ちることなく、枯れることもなく、死ぬことできない空間で閉じ込めておくとしよう。

…………そんな我の考えを想定すらしていないヨセフはまだ魔王のことを語っている。


「――ちなみに言うが、お前の言っていた答えは殆ど正解だ。一つだけ違うけどな」


「なに…………?何だそれは?」


我の出した答えが違うだと…………?しかも一つだけ違うなどありえるのか?違うならもっと間違っているはずなのになぜ一つだけ違うというのだ。

 まあ別にいいかと答えを改めて聞くことにした。


「この奥にある条件起動式の術式…………発動条件は俺様が死ぬことじゃねえ。()()()()()


「なに?」


一瞬ヨセフの言っている意味が分からなかった。発動条件がヨセフが死ぬことではなくこの状況とはいったい――――!?

 …………その瞬間、寒気と戦慄が体全身を駆け巡った。確かにあいつは言った。【この状況】だと…………。この状況とは、我がヨセフに口以外の活動を束縛し、我がただ一つの答えを導き出したことを言ったこと。そして…………その答えが一つだけ的外れで、我がこうやって考えているという現場のこと…………!?


「まさか…………!貴様…………そんなことが」


「あれ?気が付いた?普通なら絶対気づかないはずなんだがよく気が付いたな。だが、もう遅い。条件は既に満たされたからな」



ヨセフがそう言った瞬間に、我は【音速走】を使って術式が書いてあるところまで急ぐ。2秒もかからず辿り着ける場所だったが、ヨセフが言っていた通り既に遅かった。条件起動式の術式は起動してしまったら止める術がない。しかも、嫌なほど感じるこの強力な魔力…………。我より上…………もしかしたら魔王と同等かもしれん。

 間違いなくこの世界の中で3本の指に入るほど強いはずだ。


発動された術式はやはり止まることなく、稲妻と煙を演出のように登場させながら召喚された者の影が見えてきた。…………感じたことがないほど強い魔力と覇気。さらにかなりデカそうだ。


…………煙と稲妻が無くなってようやく見えてきたその姿。20メートルはあるヨセフの体を余裕で超す大きさ。全長は80メートルほどあるかもしれん。黒い体と竜のような鱗…………首の数は合計五つほどだろう。その首一つだけでも危険度はS級にもなるかもしれん。

 その首が合計で五つ…………これはSSSトリプルエス級を凌駕するほどの強さかもしれん。


「キシャァァァァ!!!!」


「――ヒュドラ。その昔魔王様に封印された竜だ。実際は女神によって生み出されたって話だが、そんなことはどうでもいんだよ」




「これを召喚したのはお前だって言っても過言じゃねえんだぜ?今回の戦争も、ヒュドラを召喚したのも、全部お前を釣るためのものだからな」


「なんだと?」


いつの間に我の【魔拘束】を解いたのか、気が付いたら後ろにいるヨセフは我を挑発するかのように言ってきた。…………確かにこのヒュドラを召喚したのが我であることは否定できない。我が一つでも行動を改めれば召喚されずに済んだと言っていい。

 本当にヨセフに言われるがままに殺しておけば…………我ではなく、ハルトがここを訪ねていれば。


「そう。結局はお前が悪いんだよ。今回はお前は何も守れない。いや…………()()()()()()()()()と言った方がいいな。結局お前は何も変わってねえんだよ」


「…………黙れ」


そのヨセフの含んだ言い方だけで、我は怒りを覚えていた。だが………この怒りは逆に使える。この怒りの方向をヨセフ(こいつ)ではなくヒュドラに向ければいいのだ。

最強という名の異名が付いた時の我を思い出せ。全てを殺し…………奪い…………そして消す。

 ――そして、気が付いた時には我は手をヒュドラに向けていた。



「【天滅】」


そして我が習得しているスキルの中で最も強力なスキル【天滅】をヒュドラに打ち込む。当たった物体、生物問わず跡形もなく消すスキル。

 今度は地面ではなく天に向けって打ったので、あの時のように手加減をしない。全力でヒュドラに点滅を打ち込んだ。少しばかり先手を取られたが、この際別にどうでもいい。



絶対にあの時と同じ過ちを犯さない…………今度は守る。守って見せる!

 


「――――そのために、ヒュドラを殺す」

読んでいただいてありがとうございます!!

 最近出番が少ないハルトとモン、そしてコアトルですが、そろそろ全員集合致しますよ!さあ、皆でヒュドラを倒していきましょう!!

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