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目的地決定

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(ところでノワール。次の目的地ってどこなんだ?)


いきなり襲い掛かってきた童顔の魔族を無事に撃退をすませたあと、再び歩き始めた。少し寂しそうに感じるノワールに聞くのは少し緊張したけど、今までどんだけ空気を読まれなかったと思うと、こちらが空気を読むのもばかばかしく思えてきたからだ。

 

「目的地であるか…………。ちなみに聞くが、貴様の今の目的はスキルを習得することでいいのであるな?スキルを習得する気がないというなら、我は遠慮なく貴様をこき使うぞ」


おいおい。いきなりどうしたんだよノワール。

 いつも通りのノワールだと安心した矢先、いきなり責められた二つの選択肢。元々俺の目的は本体の体を探すことであったため、ノワールとの縁は切ることが出来る。だが、めんどくさいならさっさと縁を切ればいいのにノワールはそんなことを言わなかった。

こいつは俺が下につきたくないことをよくわかってやがる。だからあんな選択肢を与えてきたんだ。

スキルを上げるためにレベルを上げる日々というのも異世界らしくてとてもいいが、最後までスキルを覚えられなかったら本末転倒でしかない。かといってノワールの下でこき使われるのだけはごめんだ。

なら、ここで俺の取れる選択肢はただ一つ。


(てかさ、両方ってできないのか?)


「ん?それは一体どういうことだ?」


第三の選択肢の誕生を全く予測していなかった様子のノワールは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている。だが、第三の選択肢というほど大層な提案でもない。普通に考えれば小学生でも選択できるような単純な答えだ。

 レベルだけ上げているのもつまらない…………でも、こき使われるのもまっぴらごめんだ。

 

(お前が何をしようとしてるのかは分からんけど、俺がレベルを上げながら出来ることじゃないのか?)



そう。俺が選んだ選択肢は両方受けることだ。こき使われるのとは少し違うけど、協力だったら別に構わない。正直に言うと、俺はノワールとの縁は切りたくない。異世界に来て最初にできた友達というのもあるのだが、一緒にいるとそれなりに情が湧くものだ(変な意味ではない)。

 だから俺はレベルを上げつつ、ノワールがやろうとすることに協力をするという選択肢を選んだだけだ。


「フハハハハハ!!なるほど、それは盲点だった!!!貴様のその考えは我には思いつかなかった!!それでこそ我が友であるな!!そこらのゴーストと比べたら異常な強さを誇る貴様だが、まさか魔族と戦うことを覚悟したとは!!」


…………ふぇ?なに、『魔族と戦う?』まさかノワールさん、そんな笑えない冗談を――――


「こんな時に我が言うわけがなかろう?貴様は今まで『チキンの出がらし元人間ゴースト』だと思っていたが、それは訂正しておくとしよう」


――――冗談って言ってくれよぉぉぉぉぉぉ!!てか、今までそんなこと思ってたのか!!

 自分で勝手に墓穴を掘てしまったことと、ノワールが抱いていた俺のイメージの総攻撃が俺の心を容赦なく潰してきた。俺が魔族と戦う?そんな恐ろしいこと俺が考えるわけねえだろ!!


ノワールさぁぁぁぁぁん!!!あなたも俺の友達ならそれぐらい分かりますよねぇぇぇぇ!?何で俺が魔族と戦うことになってるの!?


「そう心配するな。貴様を肉弾戦の戦力に入れるつもりはない。貴様を使うとすれば頭を使ってもらうだけである。そもそも、我が全力を出せば魔族が束になっても撃退は可能である」


うん、ノワールが強いのは知ってるよ。てか、それならお前が一人で頑張ってくれよ。


「だが、魔王が相手だったら我一人の力ではどうにもならん。負ける気はないが、万が一のこともある。我の知る魔王と今の魔王の力が的中していない場合もあるのでな。だから、魔王が相手の場合に絶対は存在しないのだ」


うわ…………何でそんな奴が誕生してんの?というか、それを生み出す悪魔ってどういう存在なわけ?俺はそんな異次元な戦いに巻き込まれるのは嫌なんですけど?

そんな本音を心の中で思っていたら、勝手に人の心を読んでいるノワールが決め顔で親指を立てながら言ってきた。


「心配するでない。貴様が仮に逃げようとしても、さっきの言葉はちゃんと言質を取っている!我のスキルを持ってすれば証拠を出すことも容易い。貴様…………まさか嘘はつかないであろう?」


怖いですノワールさん。そんな圧をかけるような黒い顔でこちらを見ないでください。分かってますよ。分かりましたよ。逃げないし、ちゃんと協力しますからそんな怖い顔をしないで下さいよ。

 …………俺は今日、初めてノワールの裏の顔を垣間見たのかもしれない――――





※※※




(それで、結局これからどこに行くんだよ?)


半ば強制的に魔族を倒すことに協力することになったのだが、ノワールから目的地を聞き出すことをすっかり忘れてしまった。この際魔族と戦うことは気にしないようにして、俺のレベル上げ兼活動拠点を作らなければならない。

 いつまでも歩いてレベルを上げるのもいいかもしれないが、拠点があった方がやりやすい。家を作るわけではないが、町に宿でも借りてしばらく拠点に――――


「貴様、勝手に想像するのは構わないがその宿代は我が払うのだぞ?それに町や国は我を警戒しているなら、長居どころか行くこそさえ困難なのだぞ?」


あ…………そうでしたね。でもさ、ノワールは別に危害を加えてないんだからそこまで警戒することないだろ。でもまあ、よくよく考えたらそうですね。

 ノワールに対しての警戒が強くなってるのにわざわざ町とか国に行く必要もないのか。


(でもノワール。目的地くらい決めてるでしょ?)


「それなら安心しろ。全知全能の我が完璧の目的地を決めたのだ。

 そこは『エルミトロ国家』という国だ。人間だけでなく、亜人も多く住んでいる国であるな。噂では【竜族】も住んでいるらしい。最も強くて最も数が少ないとされている【竜族】が住んでいるとなると、行かない理由はないであろう?」


え?まさかただ単にお前が【竜種】っていう種族に会いたいってだけ?てか、無駄に500年生きてるのに会ったことないの?会ったこともないのに全知全能とか言っちゃてるの?



「いや、我はあったことがあるぞ?時間制限付きのランダムデスマッチをやったのだが、勝負がつかなくて引き分けとなったがな。丸二日間戦い続きだったが、あんなに刺激的な戦いをしたのは今までで初めてであろうな」


うわ!やっぱりただのチートじゃねえか!!標準のヴァンパイアの強さが分からないから何もいえないけど、竜族と互角に戦うヴァンパイアなんて聞いたことないし出会いたくもなかったよ。別にノワールに会いたくなかったわけじゃないんだけどさ、竜族と互角に戦うヴァンパイアってヤバい奴じゃん?

 

「貴様がどう思おうと我には関係のないことではあるが、その国に行くためには少し厄介な道を通らなければならない」


厄介な道?めちゃくちゃキツイ斜面とか、風が強すぎて前に進めないとかか?


「エルミトロ国家に行くためには『ぽんぽこ山』を通る必要があるのだ」


ぽんぽこ山?なにそのめちゃくちゃ可愛い名前。狸とか小動物がいっぱいいて、全然怖そうじゃないんですけど。どこがそんなに怖いんだ?


「ぽんぽこ山は魔獣が最も多く生息や山で、村どころか人間はすんでいない。しかも生息している魔獣の平均危険度はAという死の山なのだ」


ノワールのその言葉を聞いた瞬間、俺の心が折れるような音が聞こえてきた。

 次の目的地はエルミトロ国家ではあるが、ぽんぽこ山でもう一度死にそうな俺はどうしたらいいのだろう。

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