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ノワールさん再び

今回はノワールさんが再び登場します!!

 ………というか、サブタイトルで分かってしまいますよね………。


サブタイトルを考えるのが苦手なので、そこは本当にすみません。

21         ノワールさん再び


巫女の街オーレン。

 世界で最も巫女の数が多いというのにも関わらず、指名手配者である最も危険なアンデッド族がのんびり観光していることに街の人々はパニック状態になっていた。


「ほう………これが有名な鍾乳石か。最も古い鍾乳石とも言われているようだな」


しかも、普通の観光客よりもこの街を観光しているという事実なので、街の人々は何もできなかった。

 確かにアンデッド族は人間の敵という風に認識されているが、実際に危害を加えているわけではない。のんびり観光しているアンデッド族を見たことのない人々はどうすることもできなかった。



「そこのお兄さん。この街に来たんだったら、是非うちに寄って行ってよ」


「……む?まさかそれは我―――いや、私のことでしょうか?」



そんな中、一人だけノワールに近づいて話かける人がいた。上から下まで灰色のローブのような物を羽織っていて顔すら見えていないが、声だけで判断すると結構年期の入った爺さんだということが分かる。

 

「お兄さんなら既にご存知かもしれませんが、うちの店には美味しい物が沢山ありますよ」


「へえ………そうなんですか?」



観光スポットである鍾乳石の目の前で待ち伏せのように人が来るのを待ち、まるで人が変わったかのように優しく声をかけるこの爺さんはただの『押し売り』だ。

 観光というこの街のことをあまり深く知らない人を標的にして、自分の店の商品を買ってもらうという輩だ。周りにいるこの街の住民はすでに気が付いているが、助けるような人は誰もいなかった。


仮に押し売りされているのが本当の人間なら助けたかもしれないが、指名手配者であるノワールを助けるような人間はこの街には存在しない。



「お兄さんなら………この木の実なんてどうだい?

 とっても甘くて店の一番の人気商品だよ?」


「それは何という木の実なんですか?」



どこからどう見ても怪しい雰囲気漂う爺さんがノワールに見せたのは、まるで宝石のように赤く輝く5センチくらいの小さな木の実だった。

 一見リンゴのようにも見えるが、その輝きはリンゴの比ではない。


「これは『アムダム』という木の実でね。

 これを食べたら()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。とりあえずお代はいらないから、一つどうだい?」



「それではいただきます」



怪しげな爺さんが怪しげな手つきで木の実を取り出し、それを怪しげな言い方で勧めるという最悪な手法を取っていたが、それでもノワールはありがたそうにアムダムを受け取ってそれを食べようとした。

 宝石のように輝く赤い皮を剥くと、今度はダイヤモンドのように輝く白い中身が見えた。


ノワールは大きく口を開け、それを口の中に入れて食べようと―――




「ふっ………。この程度で我を騙したつもりか」



「へ?」



―――グシャ!!

 アムダムの皮を剥いていざ食べようとしていたノワールだったが、口に入れる瞬間にアムダムを軽く潰した。周囲と爺さんの顔にはアムダム汁が大量にぶちまけられていた。


「貴様が我に渡した木の実の真の名は『アヘン』。強い中毒性があり、危険視されている木の実だ。

 販売はもちろん、栽培も世界的に禁止されているはずだが………なぜ貴様は持っているのだ?」



「………」



全てを見通していたノワールはアヘンを自分に渡してきた爺さんに聞いていたが、その爺さんは黙秘を続けていた。ノワールの言っている通り、アヘンの販売と栽培は禁止7されている。

 見た目は美しい木の実に見えるが強い中毒性があり、口にした生物を破壊する。


口にした人間を快感、幻惑、幻聴の世界に引きずり込んで二度と戻れなくする。結局精神が不安定になり、死を迎えさせるという最悪の木の実なのだ。

自然に実ってしまったのは仕方ないが、その場合は被害が出る前に回収→処分するのが好ましい。



「もう一度問うとしよう………。なぜ貴様はアヘンを持っているのだ?」


「も、貰った………」



最後の最後にかすれたような声で言うと、ノワールは霧のように消えてしまった。





※※※





(ちなみにゴンさん。ノワールって何で指名手配なの?)



今度こそ教会に案内してくれるというゴンさんの言葉を信じた俺は、何も言わずにゴンさんについて行っている。俺が既に習得していた加護は【女神の祝福】という加護で、まさかの浄化パージが効かないという加護だった。

 アンデッド族のゴーストとして転生………じゃなくて転死してやってきた最大の利点は『物理攻撃がきかない』だと思っていたのに、ここに来て『浄化パージも効かない』というバグが発生した。出来ることならもっと早く教えて欲しかった。



「何だお前………あれが危険でないと言い切れるのか?」



おっと、結構辛口なコメントですねゴンさん。確かに危険でないとは言い切れないけど………だからと言ってめちゃくちゃ危険ってわけじゃないでしょ?

 すこーーーーしだけ気に障ること言ってくるだけだから………別に指名手配するまでじゃないですよね?



「………確かにそうかもしれない。あれは直接人類に危害を加えているわけでもなく、奴が誕生してからアンデッドの被害が減ってきたのは事実だ」



え、そうなの?俺それは初耳なんですけど、アンデッドの被害って減ってるの?

 てっきり増え続けて巫女さんがめちゃくちゃ怒ってるんだと思ってた。


「違う。被害が減ったから巫女は奴に激怒しているのだ」



はい?それってどういうこと?

 被害が減ったなら喜ぶところでしょ。仕事が減ってから旅行にでも行ったら?毎日が日曜日みたいで素晴らしいじゃない!!



毎日が日曜日なんて、地球にいたころは何回思ったことか………。



「仕事がなくなっていった巫女は路頭に迷うのだぞ!そんなのんきなことをしていられるか!!」



え?だって他にも巫女がいるんだったらそれに任せちゃえばいいんじゃない?

 この町だけでも結構な数の巫女さんがいるんでしょ?だったら一人くらいさぼっても問題ないでしょ。


「私たち巫女だって金を貰って生活しているのだぞ!仕事をしないと生活できないではないか!!

 それなのに奴は『指名手配していいから自分だけを狙って』何て願いを教会に直接来て言ってきたのだぞ!!」



………そんなイケメンな行動したの?

 外見はイケメンでも、中身が残念的なキャラだと思ってたのに中身も行動もイケメンなんて完璧じゃないですか。何で最強のアンデッドをやってるんだあいつは。


そんなに完璧なら人間でも問題なかっただろ。



「なんだ………お前は知らなかったのか?」


つい心のなかで思ってしまったことだけど、何でそんなに真剣な顔をしてるんですかゴンさん。

 俺ってそんなに変なこと言ったかな?ノワールが人間でも問題ないと思うのは俺だけってことですかい?


「いや、そういうわけじゃない。お前は既に知っているものだと思ってたからな」


いやいや………だから何をだよ。



「あいつ………。お前の言っているノワールは元々は人間だ」


ふぇ?

 ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!



………俺は幽霊になって一番の驚きの声を叫んだ―――








(えっと……できれば説明してもらえると助かるんですけど。)



「説明したいのは山々だが、私もここまでしか分からん。正直な話、奴が本当に元人間なのかも信じがたい話だからな」



そうか。うん、そうだよね!!別にノワールが元人間だったとしても別に何の問題もないよね?

 あいつのことだから「フハハハハハ!!まさかそんなことを信じるとは!!」みたいな感じで馬鹿にしてくるだけだしな。

今度暇な時にでもあいつに聞いてみるとしますか。



「ハルトよ。一体何の話をしていたのだ?」



(ノワール丁度良かった。今ゴンさんから聞いたんだけど、お前って元にんげ―――って!!お前いつからそこにいたんだ!!!)


聞き覚えるある声に思わず体が反応しちゃったけど、こいつは街を観光してるんじゃなかったのか?

 というか、本当にこいつは一体どこから現れたんだよ。



「フハ、フハハハハハ!!いいぞ二人とも!!まるで鳩が豆鉄砲を食ったような顔!!傑作であるな!!!ハルトを教会に連れて行くなどと言って、まんまと馬鹿にされ続けていたゴンよ!!」


「う、うるさい!!お、お前にはか、関係ないだろ!!」



おっとゴンさん。めちゃくちゃ動揺してますね。

 いきなりの登場によりパニック状態の俺たちを差し置いてテンションの高いノワールは、いつもより数段キレを増してゴンさんを馬鹿にしていた。馬鹿にされ続けているゴンさんはめちゃくちゃ顔が赤くなっているが、それは今ツッコまない方がいいだろう



「時にハルトよ。貴様は教会に行くと言っていたのに、なぜこんなところにいるのだ?この街の教会なら反対方向のはずだが」



え?それって本当ですかノワールさん。ゴンさんは「今度はちゃんと案内しよう」とか言ってたけど、まさかのハメられてた?

 

「この先にあるのは教会ではなく『協会』であるな。しかも貴様には全く関係のない『自給自足協会』であるぞ」




………はい?そんな悲しいオチってある? 

 つまり俺は自分の体があるかもしれない『教会』じゃなくて自給自足を協力させられる『協会』に連れて行かれる途中だったってこと?



「つまりはそういうことだな。我が言うからには間違いない」


お前が言うから逆に怪しいような気もするけど、ゴンさんの顔がさっきよりも変な顔になってるから信じるとしよう。人を馬鹿にすることに関しては右に出るものはいないからな。


「ゴンよ。なぜ貴様は真っすぐ案内してやらなかったのだ?貴様はこんな時にふざける奴だとは思わなかったのだが」


「………すみませんでした」



ノワールが少し低いトーンで聞いた瞬間、ゴンさんが繰り出したのは日本人顔負けの土下座をかましていた。

 ………うん。土下座するとは思ってなかったけど、こんな感じになることは予想できた。乱入のようにいきなり現れたノワールだったけど、そのお陰で俺は『協会』ではなく『教会』に辿り着くことができそうです。

読んでいただいてありがとうございました!!

 言うのが遅くなりましたが、何とレビューが書かれました!!!


本当にありがとうございます!!

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