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何か異世界ファンタジーって感じ

17      何か異世界ファンタジーって感じ




「お前を追いかけ続けて30年………私はこの日を待ち望んでいたぞ」



「フハハハ!!我のことをよく知っている貴様だと言うのに、力の差も理解できないとは傑作だ!所詮は人間でしかない巫女に我を浄化パージできるわけなかろう!」



あ、あいつ今自分から死亡フラグ立てやがった。

 結局蚊帳の外という存在になってしまった俺は、少し胸を高ぶらせながらこの戦いを見届けることにした。


………何というか、これが異世界ファンタジーなのかな?俺が応援してるのは一応ノワールだけど。

これが人間だったらどんなに嬉しいだろうねえ………。今はアンデッドモンスターだからノワールのことを応援してるけど、俺が人間だったからどっちを応援してるんだろうな?



「さあ、どこからでもかかってくるがよい!貴様の攻撃全てを耐えて我が勝利して見せようではないか!」



「遺言はそれだけか!!」




ノワールが巫女を挑発して、早速戦いが始まった。腰に携えていた剣を抜き、それをフェンシングのようにしてノワールに突き刺す。

 ………だが、そんな単調的な攻撃がノワールに当たるはずもなく、嘲笑うかのようにして攻撃を避けた。



「ふむ………以前よりはスピードが上がっているが、我に追い付こうとするならまだまだであるな」


「うるさい!お前は黙って私に斬られていればいいんだ!!」



避けられた瞬間、今度は剣を遠心力で振り回しノワールに攻撃する。だか、これもノワールはイナバウアーのようにして避けてさらに挑発する。



「貴様の攻撃はその程度か?そんな攻撃が我に当たるわけがなかろう」



「私に口出しをするな!!【ボルケーノ】!!」



挑発された瞬間、巫女が剣をノワールに向けながらスキル名のような言葉を口にした。

 その予想通りスキルを使った瞬間、爆発音のような音が鳴り響いてノワールが爆炎に閉じ込められた。


(【解析:さっきのスキル】)


《 スキル【ボルケーノ】です。スキル【火炎】の強化版であり、その威力は比較もできないほどです。爆発音のような音ともに爆炎を出し、対象を炎のなかに閉じ込めます。本人がスキルを解除するまで炎が消えることはないので、脱出が非常に困難です。 》




…………怖っ!!!なにそのスキル。

 いくらノワールでも、そんなスキルをまともに食らっちゃヤバイんじゃね?致命傷とまではいかなそうだけど、それなりのダメージは負っちゃうんじゃ………。




「フハハハ!!これは面白い!まさか上位スキルである【ボルケーノ】を使ってくるとは思わなかった!」




――――そう思った矢先、爆炎のなかからいつもの高笑いが聞こえてきた。どうやらノワールは全くダメージを負っていないらしい。

 小さな村なら余裕で火の海にしちゃうようなスキル食らっても無傷とかどこまでもチートなヴァンパイアさんだな。



………そして、爆炎のなかから微かに人影のようなものが見えた(人じゃないけど)。

 うん………予想はしてたけど、やっぱり無傷みたいだ。



(【解析:ノワールにダメージがない理由】。)



もはや何でもかんでも【解析】のスキルを頼ろうとして使ってみたけど、さすがにこんな単純なことは解析できないか?

 いつのも機械音のような声が頭のなかに流れてこない。変なことを解析しようとして急にバグが発生したのか?


………まあ、ノワールが無傷であることは予想できたからあとで聞けば――――



《 解析終了です。個体名ノワールが無傷の理由は、【加護】の効果です。 》



―――あら、ご丁寧に解析してくれていましたか。

 それはどうもありがとうございます。いきなり加護とか言われても分からんけど、とりあえず納得はした。


(【解析:加護】。)



加護が分からないんじゃ、それを調べればいい。それを調べるためには解析のスキルを利用すればいいだけだ。

 連続のスキル使用に申し訳ない気持ちもあるが、ここはもう少し頑張ってもらおう。いったい誰が調べて俺に伝えているのかわからないけど、とりあえずここは一応お礼を言っておくとしよう。




《 解析が終了いたしました。【加護】とはスキルと同じで成長すると獲得できるものです。スキルと違って獲得できるのは希で、獲得できる生物も限られています。

  個体名ノワールは獲得している加護の効果によって【炎】という属性を無効化しています。 》




………つまり、ノワールに炎の属性は効かないってことか。

 属性を無効化する加護とかヤバすぎるだろ。やっぱり所詮はチートヴァンパイアか。



「フハハハ!!貴様が上位スキルである【ボルケーノ】を使うとは思っていなかったが、我には当然のように通用せん!!貴様ごときなど、我の力を持ってすれば一瞬で塵にしてくれる!」



「ぐっ………どこまでも人をバカにして………!」



………あれ。もしかしなくても、この状況で悪い方ってノワールさんだよね。俺が色々解析している間に【ボルケーノ】の爆炎の中から脱出していたノワールが、巫女の女性に挑発していた。

 この光景を第三者が見たら絶対ノワールが悪いよな。………仮に俺だったとしても、絶対ノワール(あいつ)が悪いって思うもん。



「どうした?30年ぶりの再開でありながら、貴様の力は以前よりも弱くなっておるぞ」



「うるさい………。私は弱くなんてない………!私がお前を浄化パージしてやる」



「それならやってみるがいい!!今の貴様では、我を浄化パージしようとしても意味がないであろう!貴様はそれに気がつき、我の暇を潰すために全力を尽くすのだな!」



………おいおいノワールさん。それは言い過ぎじゃないですかね。

 そんな言い方だったら女性は振り向いてくれませんよ?………ほら、元に彼女泣きそうじゃないですか。


ちゃんと持っていた剣をカタカタと震わせ、必死に涙をこらえていることは出会って5分くらいしか経っていない俺にも普通に分かった。

こういうタイプの泣き方は最後の最後で悪あがきして終わるんだよな………。




小学生の頃、よく友達とケンカして泣かされた方がそうだった。

 泣いた瞬間に驚異的な力を発揮し、相手が戸惑っている間には勝負がついている。



「ほらどうした?我は反撃もしないし、避けたりもしないぞ?………それでも浄化パージをしないのは、貴様の薄っぺらいプライドか?」



「うるさい!お前はそれいじょう喋るな!

  う………ううっ………浄化パージ!!」



挑発しながら駆け寄ってくるノワールに対して限界が来てしまったような巫女は、ついに涙を流しながら浄化パージを使った。

 一応初めて見る浄化パージだけど、ノワールを水色の神秘的な光で包んだような感じだ。


黒をイメージさせるノワールとは対照的な神秘的な光は、全ての闇を無くすような輝きを放っていた。


「やっ………殺ったのか?」



おっとフラグ宣言ですね巫女さん。

 ノワールに浄化パージを打ち込んですっかり安心した様子の巫女さんは、自ら死亡フラグ………いや、この場合ぎゃくだから生存フラグを立てていた。


………その生存フラグ通り、神秘的な水色の光が消えてもノワールは普通に立っていた。



「フハハハ!!やはりこんなものか!!30年前戦った時よりも浄化パージの力が落ちておるぞ!!容姿は変わらんでも、力だけは老いたということか!フハハハ!!」



「う、うるさい!うるさいうるさいうるさーい!!」



ノワールの挑発にまるで駄々をこねる子供のように泣き叫んだ巫女は、想像以上に可愛かった。

 30年前ということは実年齢は40後半から50でもおかしくないはずなのに、なぜか可愛く見える。


これが異世界ファンタジーというものなのか?たとえ年をとっていたとしても、実年齢よりは若く童顔に見えてしまうというのは。



「それで貴様にひとつ聞きたいことがある」


「ううっ………私に何のようだ。負かしたあとに聞くなど、空気が読めんのかお前は………」



「聞きたいことなのだが、『人間の脱け殻』を知らぬか?今それを探している最中でな」




おーーーい!!!ずいぶんのストライクな質問だな!!

 そんな『セミの脱け殻』みたいに人間の脱け殻があってたまるか!!………ていうか、そんな簡単に俺が乗り移る予定だった体が見つかってたまるか!!


これが初めての街なんだぞ!!そんな簡単に見つかるほど世界が狭いわけ――――



「一応あるが……それは『女神の息子』と呼ばれていて、教会に保管されている。お前のような指名手配者が手に入れられるものじゃない。いくらお前でも、教会にいる巫女全員………さらに女神の力が宿った数々の武器には成す術はあるまい」



――――え?あるの!!脱け殻あんの!!しかも保管してんの!?

 冷凍食品じゃねえんだぞ!意識がないならお前らお得意の浄化パージで天に還してやれよ!


魂も抜けてる状態じゃ意味ないかもしれないけど、人間をそんな冷凍食品みたいに扱うよりはましだろ。



「ふむ………ちなみに貴様、もし『その体の魂がいる』と言ったら信じるか?」



「それはあそこですっとこちらを見ているゴーストのことか?私はてっきりお前の影武者かと思っていたぞ」




…………え?まさか俺のことずっと気がついてたんですか?

 ………この瞬間、俺はこの世界での死を覚悟した(もう死んでるけど)。

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