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最初で最後の頼み

129      最初で最後の頼み


ルナさんとノワールが無事にリア充化したのだが、俺は素直に喜ぶことが出来なかった。取りあえずリア充は死ねと思うだけで、それ以上に喜べない理由があるのだ。


俺が仕留めたと勘違いをしていた悪魔―――アスモデウスが、マッドの話だとまだ生きているということだ。それに奴は全力で傷を癒しているところで、今はノワールも本調子ではないので狙うなら今しか考えられない。常に辺りを警戒しながらルインたちが待つ草原に降りていくと、ルイン以外の皆が笑顔で手を振りながら歓迎してくれた。


「フハハハハ!!待たせたな!!さあ、我の登場に喜びながらひれ伏せるがい―――げほっ!!げほっ!」


「お前はもう黙っとけ!!とりあえずその体力が回復するまで安静にしてろ!!」


調子に乗って声を出したノワールが再び吐血をした。吸血鬼でただでさえ血に飢えているというのに、吐血で貧血になるのは笑えない。吸血鬼なのに大量出血で死ぬという事件は笑えるかもしれないけど、ただ貧血になるのは笑えない。もしそこで再び血を求めて暴走したらどうするつもりなのだ。


俺がノワールに強く当たるように言うと、ルナさんが優しくノワールを草原に寝かした。


「ヒューズ君大丈夫?」


「大丈夫だ。我はこの程度の痛みや苦しみで根を上げるほど弱くは無い」


「いつまでも強がるな。いつもでさえ押さえていた本能を無理矢理出させたんだ。お前の体はボロボロと言ってもいいだろう。……安心しろ。お前の体力が回復する程度の時間なら耐えて見せる」


イケメンのルインは言う一言一言までもがイケメンだった。出来れば俺が言いたかったセリフだけど、ルインが言った方が説得力があるし何よりイケメンだから良しとしよう。そして、ルインの忠告を受けたノワールはいつもより小さな声で「分かった。貴様の言葉を信じるとしよう」と言いながら目を瞑り、静かに眠りについた。


「ルイン……話がある」


ノワールが完全に眠りについたところで俺はルインを誘い、皆から少し離れた場所に移動して話をすることにした。ルインは俺が何かを問いかけてくるというのが分かっていたかのような表情をし、腕を組みながら俺の話を聞き始めた。


「―――アスモデウスはまだ死んでない」


「どういうことだ?お前は奴を殺したから戻ってきたんじゃないのか?」


「俺もそう思っていた。……いや、()()()()()()()()


顔を下に向け、いつもより低い声のトーンになりながらノワールに言う。マッドに言われてから想像が確信と変わり、アスモデウスがやって来た時に対処できるための作戦を今考えるのだ。


「……俺の力を頼ってくれているところ悪いが、俺や破壊の魔女は力になれない。もちろん狸や竜人も同じだ」


「理由を聞いてもいいか?」


ルインの予想外の言葉に、俺は質問せざるを得なかった。相手のことを冷静に分析し、あらゆる戦術を考えるルインと万物を破壊出来るという破壊の魔女さん。そして俺がこの世界にやって来て出会った二人も力不足だと言うことなのだろうか?


不安そうな目でルインを見ているとルインは思っていたよりも早く俺の問いかけに答えてくれた。


「答えは簡単だ。単純に俺や破壊の魔女も完全に消費している。魔力はもちろん、体力すら残り少ない」


「……マジか。じゃあ、まともに戦えるのって俺だけってことに―――」


―――ドパッ!!


「―――え?」


俺が確認を取るために言葉を言いかけたところで、目の前にいるルインの胸が何者かに打ち抜かれた。何の気配も、魔力も感じられなかったのに俺とルインの包囲網を抜けて攻撃を仕掛けたのだ。


「あら~?当たったのは彼と同じアンデッドかしら。なら胸を貫通させても意味ないわね~」


「!!?。てめえは……っ!!」


もはや振り向かなくても声と口調で分かってしまった。正確に言うと俺とルインに気づかれないまま攻撃を仕掛けた時から気づいたと言っても過言ではない。それでも反射的に振り返ってしまった俺は、空に浮かびながら死神の笑顔を見せるアスモデウスと目が合ってしまう。


「久しぶりね~。確かハルト君だったかしら?あなたに殺されかけたけど、お陰でまた全回復したわよぉ。あなたには少し感謝をしなくちゃね~」


「うるせえぇぇぇぇ!!」


アスモデウスの行動と言動全てに怒りを覚えてしまう俺は作戦全く立てないまま突っ込んでいった。【肉体保護解除リミット・オフ】と【音速走】を発動させ、全力で拳を振る。


―――その刹那、時間が止まった。何を言っているのか分からないかもしれないけど、俺は一瞬で気が付くことが出来た。アスモデウスもピクリとも体を動かさず、吹いていた風も止まった。一体何が起こったのか全く見当もつかなかった俺は、周囲を警戒するだけだった。


「全く……君はハタストムに勝るほど馬鹿なんだね」


「―――マッド!!」


周囲を警戒していると【ゲート】からマッドが出てきて馬鹿にするようなことを言いながら現れた。


「マッド……取りあえずこの状況を説明してくれるか?」


「別に良いけど、時間が無いから簡単に説明させてもらうよ。この状況は僕のSPSスペシャルスキルである【虚数時間イマジナリー・タイム】によって作りだされたんだ」


「【虚数時間イマジナリー・タイム】?」


分かりそうで分からない答えに思わず問いかけてしまったけど、マッドは「時間がない」ということをジェスチャーで伝え、俺に質問をさせないようにした。それを理解した俺は改めてマッドが現れた理由を聞く。


「単刀直入に言うけど……君に僕を殺してほしんだ」


「えっ?」


単刀直入に言ったマッドの言葉が理解出来なかった。しかし、マッドの言葉は冗談には聞こえなかった。その表情も真剣で、その言葉も虚言には感じられなかった。


「マッド……どういうことだ?」


しばらく硬直してしまったけど、ようやく口が動いた俺は震えた声でマッドに問いかけた。するとマッドは俺の問いかけに対して答える前に俺の腕を掴み、それを自分の胸に突き付けながら言った。


「……こういうことだよ。君が僕を殺せば君が大量の経験値を得ることが出来る。それによってレベルが上がり、そしてステータスも上がる。……僕の目的は達成されないけど、このままアスモデウスによって全てを無に還されるよりはましだよ」


「駄目に決まってるだろ。俺がお前を殺してアスモデウスを倒せる確信もないし、何より俺がそれを望んでない」


能弁になって言っているマッドだけど心臓の鼓動がどんどん早くなって、それでいて一回一回の音が大きくなっていった。その鼓動の音を直に感じることが出来る俺の手はどんどん震えていき、マッドに触れている手を離そうとしたけどマッドはそれを許さない。


離そうとする俺の手を掴み、再びすごい眼力で俺を見つめてくる。


「……頼む。僕からの最初で最後の頼み事だよ。こんなことを頼むのは君くらいだし、僕がこんなことを頼むことになるようになったのも君のお陰なんだ」


「マッド……」


その言葉からは何よりも強い決意を感じられた。さらに、今まで早くて大きくなっていた心臓の鼓動が一瞬だけ治まった。


……少し考えた俺だけど、さっきの決意がこもった言葉をもう一度思い出した俺は今まで震えていた手に力を入れる。


「やっと決めてくれたんだね。君に殺されるのなら、別に僕も憂いはないよ」


最後の最後で笑顔を見せたマッド。


殺されるというのに笑顔を見せることに一瞬戸惑ったけど、俺はマッドの胸に手を当てながら【天滅】を放った。

……俺が【天滅】を放った瞬間、マッドが「ありがとう」と囁くように言ったのだ。


《 大量の経験値を獲得しました。 レベルが上がりましたので、ステータスの向上と新たなるスキルの習得を報告致します。 》


――そして、俺の頭には懐かしい機械音のような声が響いた。

読んでいただいてありがとうございます!!

 さて、明日からですが先日ご報告した通り部活動の合宿に行ってしまいます。更新出来たら更新していきたいですけど、無理な可能性があるのでそこは先に謝っておきます。


合宿が終わったらどんどん更新していきたいと思います!!目指せ、夏休み中に完結!!

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