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最強の違い

121      最強の違い


「うおぉぉぉぉ!!!」


気合いを出すためか、それとも恐怖を押し潰すためからは分からないけど大きな声を上げながら攻撃を仕掛ける。しかし、俺のパンチや太刀はことごとくアスモデウスに回避・防御されてしまう。

 魔界の王という存在を甘く見ていた自分を150発くらい殴ってやりたい気持ちで一杯だったけど、今はどうやってこのアスモデウスを倒すのかを考えるのに精一杯だった。



「ほらほらどうしたの~?あなたの拳は私に触れさせることすらできないの?」


「くそっ!【魔弾】!!」


一度距離をとって手を翳した俺はそのままアスモデウスに数発の【魔弾】を放つ。ゼウスの時と同じ戦略で行こうかと思ったが、それでは見破られてしまうと思った俺は別の作戦でいくことにした。



「舐めているのかしら?」


「!!?」


威嚇をしたかのように放たれた冷酷な一言…………蛇に睨まれた蛙のように動けなくなってしまった俺はその紫色に光る目に捕らわれてしまった。アスモデウスはギリギリのところまで【魔弾】を近づけたあと、指を鳴らしてスキルを発動させる。すると、俺から【魔弾】の主導権を奪い、俺が放ったはずの【魔弾】がこちらに向かってきた。


―――それだけではなく、アスモデウスは一つ一つの【魔弾】をまとめて一回りの二回りも大きい【魔弾】を作り出した。

 今も蛇に睨まれた蛙状態の俺はそんな攻撃が来ても回避するような余裕はなく、ただ体の回り【魔力分解】を発動させるだけだった。


「私に向かって魔力攻撃をしたことを後悔することね!!」


―――ドゴォォォ!!!


強力な一撃が俺に放たれる。しかし、常時発動している【魔力妨害】とさっき発動させた【魔力分解】のお陰で俺に届く攻撃はほんの少しだった。音のわりにはそこまでのダメージはなく、【自己再生】で直ぐに治ると言いたいところだけど、ノワールに特性を封じられてしまった俺は【自己再生】を発動させることができない。



「…………どうするかな?」


幸い俺に放たれた【魔弾】のお陰で煙が巻き起こり、アスモデウスも俺の姿が見えていない。絶好のチャンスを見逃すような俺ではないため、どう攻撃を仕掛けるか作戦を考える。


「よし!!」


数秒考えて作戦を思い付いた俺は早速実行に移ろうと【ゲート】を発動させた。その【ゲート】に【黒炎竜】を放ち、丁度アスモデウスの真後ろに【ゲート】が現れるように設定する。


―――ドゴォォォ!!!


叫び声は全く聞こえなかったけど、明らかに当たったような音が聞こえたので俺は自分を包み込む煙から脱出し、今度は【黒炎竜】のせいで巻き上げられた黒い煙のなかに突っ込む。見えなくても気配は感じるので、俺は【気配遮断】と【認識阻害】を同時展開しながら一番最初に打ち込んだ攻撃と全く同じ攻撃を放つ。


―――ビキベキ!バキッ!!


「があぁ!?」



明らかに手応えのあった音が俺の耳に入り、アスモデウスが苦痛によって叫ぶ声も聞こえてきた。手にも当たったような感触があり、俺はそのまま攻撃する手を休めることなく連続で攻撃を仕掛けにいった。


「おらぁぁぁぁぁ!!!」


何度も、何度も同じ攻撃を打ち込む俺。アスモデウスが死んだという確信が持てるまで攻撃を打ち込み続けた。最初は聞こえてきた骨が折れる音もいつしか聞こえなくなり、アスモデウスが苦痛を叫ぶ声も聞こえなくなってしまっていた。


「ハア…………ハア…………ハア」


疲れが出てきたのは俺の方で、【肉体保護解除リミット・オフ】の反動で身体中がいたくなっていた。一発攻撃するだけで片腕が軋み、二発攻撃すれば両腕が軋む。いつしか全身が軋むようになり、力を入れるだけで痛みが襲う。死んではないないとしてもかなりのダメージを食らわしてやったはずだが、まだ黒い煙に包まれていて姿が見えないでいた。


「おかしいな。こんなに長いもんなのか?」


煙が晴れないことに疑問を抱いた俺だったが、それにきがついた時には既に遅かった。キョロキョロと辺りを見回した瞬間、俺は背中に手を突きつけられた。これがノワールだったら冗談で済むのだが、男の手とは思えないほど華奢で小さな手だった。


「………いつからいた?」


両手をあげて抵抗しないということを伝えた俺。すると俺に突きつけていた手を離し、アスモデウスはいきなりクスクスと笑い出した。


「うふふ。確かにあなたも強いわね。でも、あのアンデッドほどではないわ。今ごろあっちも浄化パージされてると思うけどね」


「力不足なのか」


「そういうことよ。でも思っていたよりは楽しむことができたわ。だから…………胸を張って死ぬことね!!」


一度言葉を切って直ぐに言ったアスモデウス。俺の心臓をえぐり出すために爪をたて、思いきり腕を振る。でも俺は、回避するようなこともなければ防御スキルを発動させることもなかった。


―――ただ痛みの想像だけをして、アスモデウスの思うがままに攻撃を受けた。


――――ザシュ…………。


「がふっ………」


爪を立てた手で、とても細い腕で俺の腹を貫通したアスモデウスの攻撃。しかし、アスモデウスの手には俺の心臓が握られていなかった。出血の量と痛みで意識が朦朧となっていた俺は、最後の力を振り絞って腹に力を入れ、アスモデウスの右腕が抜けないようにした。


「やっと………捕まえた」


力を入れれば痛みが増すのは分かっていたけど、アスモデウスに背中を向けながら勝ち誇った口調で言った。


「あなた………まさかこれを狙って!?力ずくで私の動きを止めるために!」


「そうだ………ぐっ!?ぐわぁぁぁぁ!!」


俺の腹から力ずくで腕を引き抜こうとするアスモデウス。そうすれば自動的に腹をえぐられることになり、俺には想像を絶するほどの痛みが襲い、思わず力を緩めそうになってしまう。しかし、俺がこのアスモデウスを引き留めないと世界が滅んでしまうかもしれないという考えが力を緩めることを許してくれなかった。


「……とりあえずお前はもうおしまいだよ。腹はめちゃくちゃ痛いけど、お前はこれからそれ以上の痛みを知るんだ」


背中を向けたまま俺は右手を後ろに向け、俺は【天滅】を全力で放つ。断末魔の声も上げず、静かに【天滅】に飲み込まれて行った。……気配が完全に消失したことを確認した俺だったけど、まだアスモデウスの腕が腹に刺さっているので腹に入れていた力を抜き、アスモデウスの右腕を抜く。


(や、ヤバい……。血を出しすぎた。)


出血と痛みだけでも意識が朦朧としていたというのに、それに加えて【天滅】を放ったのだ。魔力を尽きただけでなく血も足りていない俺は一瞬で意識を持っていかれ、そのまま重力に従うように地面に墜落していった。




※※※



「ぐっ!!?」


――場所は変わって、ここは次元空間。ルインが創り出した空間とは少し異なり、ここは【ゲート】の先にある空間。スキル【ゲート】というのは空間と空間を繋ぐスキルである。つまり、ノワールとゼウスが居る世界は通称“次元空間”と言われる空間。

 絶対に滅ぶこともなく、消失することもない世界。仮にここにスキルを放ったら威力が衰えることなく永遠にさ迷い続けるのだ。


「どうした?お前さんはその程度で最強を名乗っておったのか?」


「貴様……本当に我を殺すつもりか?」


「当然だろう」


そんな次元空間でノワールとゼウスが戦いを繰り広げていて、状況はゼウスが押しているようだった。ノワールのスキルはゼウスにきくことはなく、それとは真逆にゼウスの攻撃は全て神の力が宿っていてアンデッドのノワールにとっては最悪の攻撃だった。



血が出るような攻撃ではなく、体のいたるところが朽ちていってしまうような感覚に襲われているノワールは珍しく顔に焦りを見せていた。


「もっとわしにみせるのじゃ。この世界の“最強”がどんなものなのか」

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