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無慈悲な悪魔 後編

120    無慈悲な悪魔 後編


「私を目の前にして動ける生物は珍しいわね。悪魔は悪魔でもサキュバスの類なのに、あなたたちはなぜ普通に立っていられるの?」


「え?サキュバスだったんですか?」


思わず声が裏返ってしまった俺はまじまじとした目でアスモデウスを見る。……サキュバスというと何となくもう少しエロそうな恰好をしていたイメージだけど、目の前にいるアスモデウスというサキュバスはエロいどころか服の露出が少なすぎる。それに、よく見るとこのアスモデウスさんは貧乳だ。


……下手したらコアトルちゃんより貧乳なんじゃね?


「あなた人間のくせにムカつくわね。別に悪魔の魅力は胸だけじゃないのよ?」


「おっと失礼。心の中を読まれていましたか」


どうやら胸の大きさを気にしていたらしいアスモデウスさんが俺の心のうちを読み、的確なタイミングで声をかけてきた。俺の隣に居るノワールとアスモデウスさんの隣にいるゼウスが口元に手を当てながら必死で笑いを堪えているのがとても気になるが、今は笑っている場合ではない。


「フハハハハ!!我と戦うのはどちらだ?神か?それとも悪魔か?どちらでもいいが、我が負けることはありえない!!最強の我に勝てる者などこの世には存在しないのだ!!」


両手を広げて急に高笑いを上げたノワール。アスモデウスさんの矛先が俺の方に向き始めた瞬間にノワールが高笑いを上げたため、アスモデウスさんとゼウスの視線と矛先が今の高笑いの効果でノワールの集中する。ノワールに矛先が向いたということは俺に対する警戒が少し和らいだということなので、俺はその一瞬を逃すことなくスキル【肉体保護解除リミット・オフ】を発動させ、拳に【魔力撃】と【硬化】を付与付与エンチャントさせてから【掌底】を油断しまくりの神―――ゼウスの方に放つ。


―――ほんの一瞬が命取りである戦いに隙を見せたゼウス、先に先手を取ったのは俺の方だった。


ドコッ!!



がら空きになっている顔面に直撃した音が響く。下手したら即死は免れない一撃を放ったはずなのだが、ゼウスは人差し指一本で俺の渾身の一撃を止めていた。……顔は今でもノワールの方を見ていて、攻撃を仕掛けてもこちらを見もしないゼウス。


やっとこちらを見たと思ったら少し驚いたような表情をしながら口を動かした。


「おお!?なんじゃ、お前さんだったのかい。デカいハエが止まったのかと思ったのじゃが……今のはお前さんの攻撃だったんじゃな」


「なんだと……っ!!」


俺を挑発して動揺させようとしているのは直ぐに分かった。しかし、ゼウスが俺の攻撃を指一本で止めるという芸当をどうやってやったのかが分からない。ステータスの差があるのは分かるけど、【肉体保護解除リミット・オフ】を発動させて身体能力を飛躍させた全力の攻撃だけでなく【魔力撃】と【硬化】を付与エンチャントしてから【掌底】を打ち込んだというのに指一本で防げるはずがない。


俺の攻撃が当たる瞬間にスキルを発動させてスキルを無効化したのか……それともその前からスキルを無効化したのか、はたまた体術を使ったのか。可能性を上げれば無数に出来てしまうが、限られてくるのはスキルを使ったか体術を使ったかのどちらかだろう。可能性がとちらかに絞られたところで俺はあえてゼウスの挑発に乗る。


「次の攻撃を受けてみろ!」


今度は少し距離を取ってからゆっくりと手を翳し、無数の【魔弾】を放つ。ゼウスはそんな【魔弾】一つ一つを丁寧に片手で弾いて行く。最後の【魔弾】と重なって見えないように移動していた俺はゼウスが【魔弾】を弾いた瞬間に現れることになる。


「!?」


「うおぉぉぉぉ!!!」


ゼウスが動揺した顔を見逃さなかった俺は最初に打ち込んだのと全く同じの一撃をゼウスの腹に打ち込む。……さっきは指一本で止めていた俺の攻撃だったのに、今度はその威力に従うように遥か遠くに吹っ飛んでいった。見えなくなっていったゼウスを追いかける前に一度ノワールの方を向いた俺は


「絶対に死ぬなよ」


恥ずかしさを隠しながらそう言い、スキル【音速走】を発動させて吹っ飛んでいったゼウスを必死に追いかける。少しはゆっくりしたい気持ちもあった俺だけど、休憩の時間を与える分ゼウスの強さが増すという考えが頭の中をよぎってしまうので俺も自分自身を止めることは出来なかった。焦る分スピードが上がっていき、ゼウスとの距離がどんどん縮まって行った。


「ん?うおお!!?」


【音速走】を発動させながら空を飛んでいると目の前から【天滅】によく似た光属性のスキルが放たれてきた。あと一瞬気が付くのが遅かったら喰らっていたかもしれないけど、何とか回避した俺は急いで剣を抜いて周囲を警戒した。


「……居ない?じゃあ、どっから撃った?」


スキル【探知ロケーション】を発動するも、ゼウスが近くにゼウスが居るような反応はなかった。ゼウスは今の攻撃を回避することも回避しないことも視野に入れながら作戦を立てていると読み、直ぐに次の攻撃が来ると思ったのだが一向に次の攻撃はこなかった。


「もうちょい広げてみるか」


探知ロケーション】の範囲が狭いのかと思った俺はさらに範囲を広げる。しかし、いくら範囲を広げてもゼウスを見つけることが出来ないでいた。ノワールとアスモデウスの魔力を感知するギリギリまで範囲を広げても感知できないのだ。


「待てよ……まさか!!?」


あることに気が付いた俺は直ぐに【音速走】を発動させて全力でノワールの元に戻った。今自分が出せるスピードを限界までだし、全力でノワールの元に戻った。その理由(わけ)はゼウスがアスモデウスの所に行って二人で戦っている可能性があるからだ。移動中に放ってきた攻撃もその可能性を見出させないためのフェイクでしかなく、自分から攻撃を仕掛けることで戦う意思があると思わせたんだ。

 見事にその作戦に引っかかってしまった俺は全力でノワールの元に戻ろうとしていた。


―――しかし、その行動も相手の予想済みで直ぐに俺は立ち止まることになってしまった。


「くそっ……。あと少し気づくのが早かったらよかったのか」


「そんなことないわよ?むしろ気が付いただけでも私はあなたを尊重してあげる。まあ、あのアンデッドは今頃ゼウスの力によって召されちゃってると思うけどね」


「慈悲はないのか!!」


「慈悲?そんなのあるわけないじゃない。これは戦争なのよ?そんなものを求めるなら戦争なんてやらないし、そんなものを求める人が人を殺せるわけないじゃない」


言われてみれば筋の通っていることを言われ、俺は黙るしかなかった。そして同時に俺は死を覚悟した。今相手にしているのは悪魔の長…………もとい魔界の王である存在。ゼウスと戦う時はこれほどまでのプレッシャーと気迫を感じることは出来なかったけど、今はビンビン伝わってくる。


「何でノワールはあんなことできたんだよ」


「そう言えば……少し遊んでみたけど、確かに彼は強いわね。最強という名前が伊達ではないことは理解したわ」


ノワールの強さを認めたアスモデウスだったけど、その次に「でも―――」と言って顔に薄い笑みを浮かべながらさらに言葉を続けた。


「この世界の最強が魔界と天界に通用するかどうかは分からないわよ?」

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