モンスターの強さ比較
12 モンスターの強さ比較
「では、早速説明をしたいと思うのだが、貴様の低知能で理解するのは難しいかもしれん」
(ああ!?舐めんじゃねえ!!一応元人間だこの野郎!)
いつもと同じ通り毒舌口調のノワールは、俺をバカにするときだけ声のトーンが上がるような気がする。単なる自虐体質なのかもしれないが、それはあながち間違っていない。
ノワールはどういうわけか俺にケンカを吹っ掛けてくる。そのお陰で、俺はあっさり浄化されるところだったのだ。
「貴様の元人間はどうでもいい。我が教えるのはモンスターの強さ、危険度の高さであるからな」
(じゃあ早く教えてくれよ。俺をバカにする余裕があるなら、それをもっと有効活用した方がいいって。)
「仕方ない。説明してやろう。まず、最初だが、スキルの【解析】を使えば大抵のモンスターのステータスは見える。そのステータスは数値で表されているはずだ」
(ふんふん。)
「危険度というのは、単純に攻撃力・防御力・魔力の合計数値で決まる」
そこからは大分早く理解できた。
ステータスは数値、危険度は英語で表されるらしい。この世界の性格な言語はわからないが、俺からの目線では英語にしか見えない。
ステータスである攻撃力・防御力・魔力の合計が500以下だと危険度C。
合計が501~1500だとB。
合計が1501~5000だとA。
という風になっているらしい。だが、危険度はあくまで目安であり、危険度は同じでもステータスが異なる場合が多いらしい。
結局はステータスが高くないと何の意味もない。ちなみに、人間で例えると一般的な冒険者の合計が800らしい。
少し熟練ともなると2000だったり3000だったりするが、人間よりもモンスターが強すぎるせいで共存することが多いらしい。
ノワールの危険度はSSS級の危険度と言われるらしく、その危険度の生物はこの世界では10体といないらしい。
SSS級というのは、世界を滅亡………または世界を破壊できるほどの力をもっているらしい。そう考えると、俺がこんなチートヴァンパイアと一緒にいるのは謎である。
(なあ、危険度については分かったけど………結局魔王とかその辺はなにがしたいんだ?)
俺が聞くと、ノワールは深いため息をついてから俺に言った。
別にそこまであきれることはないだろう。
「元魔王候補である我だが、奴等の目的ははっきりしていない。他の種族を滅ぼし、この世界を支配するつもりならば既に実行している可能性もある。だが、実際は何もしていないし、こちらからも何もしない。お互いにリスクを避けているような状態だ」
ため息をつかれたからまた俺をバカにするのかと思えば、何でこういう時にだけは真面目になっちゃうんだよ。
別にふざけろとは言わねえけどさ、普段のお前を見てるから違和感があるというか………何というか。
「ちなみに、貴様の危険度はBである。ステータスの合計数値は980。危険度Bのなかでは中の中あたりであるな」
(Bか。それって一般的にも普通なのか?)
「一般的に言うと、ゴーストのなかでいいのか?それなら貴様のステータスは異常であるぞ」
(ふぇ?異常?そんなに強いの?)
ノワールがいきなりぶっ飛んだことを言ってきた。思わず何かの罠化と思って警戒するが、ノワールの顔に嘘がなかったので恐らく本当のことだろう。
そっか………強かったんだ。この世界に来て食ってばっかりだったけど、ちゃんと強くなってたんだ。
………て言うか、本当に食う以外になにもしてねえな。別にモンスターを実際に倒したわけでもねえし、誰かが(ノワール)が倒したモンスターを食べただけだし。
なぜか分かんないけどステータス上がるし、スキルメチャクチャ習得するし。
特性っていうよく分かんないのも習得しちゃうし。
(一般的なゴーストってどのくらいなんだ?)
「……そもそもゴーストというモンスターは物理攻撃ができないアンデッド族なのだ。だから攻撃力のステータスは0。防御力もそこまで高くないから100でもあれば優秀な個体であるな。それと比べると魔力は少し高い300である。平均数値は300くらいであるな。少し高いと500くらいになるが」
マジですかい。その話を聞いたら、俺は結構強いじゃん。
………まあ、ゴーストの中限定だけどさ。やっぱり転死者だから、多少のサービスとかあったのかな?そう言えば死後の世界であった女神様が祝福がどうとか言ってなかったか?
神に背く存在であるアンデッドモンスターなのに、女神本人に祝福を受ける時点でバグが発生してるのか。チート級のバグかもしれないけど、ステータス自体が高いないから『宝の持ち腐れ』と言わざる終えない。
「さて………モンスターの強さについても教えたから、貴様に教えることは他にはないであろう?ならばさっさと町に向かうのだ」
おっと、いきなり厳しいですねノワールさん。もう少しくらい最強のゴースト気分を味わわせてくれよ。
(ノワールさん空気読もうよ。今自分自信の強さに酔っている最中なんだからさ。)
「そうしたいならそうでも構わんが、貴様の乗り移る予定だった体が腐っても知らんぞ?」
だからもう少しくらいは酔わせて…………って、今何と言いましたかなノワールさん。
「貴様の乗り移る体は人間なのであろう?魂が無い状態の人間なんぞ、死んでいるのと同じだ。妖精や精霊のように死体の状態でも腐らないであれば話は別であるが、人間の体は直ぐに腐る」
(…………ノワールさん。何で今言っちゃうのかな?)
どうやら一番現実を見ていなかったのは自分自身だったようだ。
地球に居た頃、道路でよく車にひかれた猫が死んでいた。しばらくは死んでいるだけだが、時間が経てば経つほど腐っていき、腐敗臭が漂ってしまう。
こんか簡単な問題に、今までなぜ気づかなかったのだ!?
死んでいたら腐る………そんなこと小学生でも分かるようなことなのに!!
(………ヤバイ。やっぱりあの女神様にお願いしてでも乗り移るための体の場所を教えてもらうんだった。)
………俺はこの時、ひどく、かなり、とても悲しんでいた………。